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シルバーウィークの前に、これだけは知っとけ!メール作法(会社員編)

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
ビジネスメール(写真:アフロ)

メール作法といっても、「Subjectには必ず題目を書け、そうでないと…」とか「本文中にかならず所属と名前は書け、アドレス見てもわからん!」、「まず、メールは結論、あるいは要旨から書け! 相手がどんな環境(スマホだとか、パソコン、あるいは出先での…とか)かわからないだろ!」等の新入社員研修のようなメールの書き方(ここ数年、SNSは手慣れているが、メールを書いた事がない学生が増えて)についてではありません。メールの送り先についてです。

メールの送り先について、一番問題となるのは、送り先を間違う事です。アドレス入力を直接行う場合、タイプミス等で間違うことがあり、これに気をつける事は、当然ですが、アドレス帳からクリック(タップ)して利用するときも、注意しなければなりません。アルファベット順や五十音順で並んでいるとき、クリックやタップ先がずれてしまって間違う事があるからです。誤送信の問題はメールが使われ始めたときから、今に至るまで、主要な問題の一つなのです。

最近、特に問題になっているのは不用意な同報通信です。つまり、CC(カーボンコピー)と表されるものです。この記号が書かれているところに相手方のアドレスを記入すると、通常のTOと表されている宛先と同じように相手へ送られます。その際、送り先すべてに、CCの欄に書いたアドレスも、TOの欄に書いた書いたアドレスと同様、送られた人すべてに表示されるのです。問題は、送られて来たメールに返事をする際です。メールを書いて来た本人だけに返信しようとしたとき、注意しなければCCで送られた先にも送られてしまう事が有ります。メールの返信をリプライメールと言いますが、リプライメールの際に、何処に送っているか、特にCCに該当しない送り先が入っていないか、確認すべきです。

問題になっている理由はBCC(ブラインドカーボンコピー)の存在です。これはCCと同じように、BCCに列記されたアドレスにメールを送る事ができます。異なるところは、送った相手には、BCCに書かれたアドレスがすべて消えてなくなり、見えなくなるということです。よく使われるのは、多人数に同報通信する場合で、送られた相手が、他にも送られている相手を認識できない、つまり送られた他人のアドレスがわからないようにするためです。これを間違えて、本来BCCで送らなければならないアドレスをCCで送ってしまう事が有り、アドレスの漏えいにつながるのです。BCCを多用することは避けるべきです。

そして、最後はシルバーウィーク等、長期休暇前に気をつけることがあります。自動返信です。これは長期休暇中に、休暇が明けるまで返信が出来ないことを、メールを送って来た相手へ自動的に返信するシステムです。非常に便利な機能なのですが、一つ注意する必要が有ります。メールを送って来る相手がML(メーリングリスト)のアドレスを使っている場合、その返信先がやはりMLのアドレスになっていると、そのMLに加入しているすべてのアドレスに返信をしてしまうからです。あるいは送信元のアドレスで、それがMLのアドレスになっていて、自動返信システムがむやみに送信元のアドレスに返信する設定になっていると、MLのアドレスに向けて、つまりMLの所属するすべての人にメールを送ってしまうのです。事実、お盆前の長期休暇の際に、私にそのような自動返信メールが送られて来ました。

最近、一度送った後のメールを取り消せるシステムが注目を浴びています。それだけメールを送る際のミスが多く、その結果、致命的な事態を引き起こす事が有り得るからです。しかし、これは単にメールを送る際に、数分間程度送信を留めているだけです。その猶予期間を過ぎれば、取り消す事ができないのです。メールの内容も大事ですが、それを送るときにも細心の注意を払うべきでしょう。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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