気象庁が11月25日に発表した3ヶ月予報によると、この冬は全国的に気温が平年並み、もしくは平年を下回る寒い冬になる、との予想になっている。当然のことながら、日本海側の降雪量も、平年を上回る可能性が高い予想になっている。その根拠として、説明されているのが、インドネシア付近など西太平洋熱帯域の海面水温が平年よりも高いことだ。

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西太平洋熱帯域の海面水温が高いと、対流活動が活発になり、上昇気流が強化される。その上昇気流に後押しされるように、上空では北向きの気流が強まり、中国大陸上空で偏西風を北に押し上げると同時に、日本付近では偏西風が南下し、日本付近に寒気が流れ込みやすい状態になる。昨冬の厳しい寒さの原因に関しても、同様の説明がなされている。

一方、12月10日に発表されたエルニーニョ監視速報によると、現在、エルニーニョもラニーニャも発生していない平常の状態が続いていて、春にかけても平常の状態が続く可能性が高い、との見込みになっている。どちらも発表しているのは気象庁の地球環境・海洋部だ。それが、同じ海域に関して、長期予報では海面水温が平年を上回るとしている一方で、エルニーニョ監視速報では平常の状態と言っている。もしも、実は海面水温が高くなかった、ということになれば、寒冬予想は根拠を失い、次回の予報が大幅に修正されることにもなりかねない。そこで、この矛盾と思われる点について、気象庁に問い合わせてみた。

単刀直入に資料間の矛盾と思われる点について質問してみたところ、担当の方の答えは極めて明快。長期予報の根拠は「平年値」との比較。片やエルニーニョ監視速報に示された海面水温は「基準値」との比較である。「平年値」と「基準値」は違うものである、とのこと。

そもそも、現在使われている平年値というのは1981年から2010年までの30年間の平年値だ。これが、イコール基準値だと思っていたのが私の間違いで、基準値というのは、前年までの30年間の月ごとの平均値に、西太平洋赤道域の場合は、その30年間のトレンド、つまり上昇傾向や下降傾向なども考慮して定められているそうだ。30年という期間は同じでも、統計の対象となっている年がずれているし、トレンドも考慮されているとなれば、当然数値は違ってくる。月によっても違うが、冬季は0.4℃ほど、基準値の方が平年値よりも高くなるという。

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試しに、エルニーニョ監視速報に載っている西太平洋熱帯域の水温偏差のグラフに、その平年値のラインを引いてみると、確かにこれまでも、そしてこの先も、海面水温は平年を上回る状態が続きそうだ。

根拠に矛盾があるのでは、との疑問も解消した。やはりこの冬も厳しい寒さになる可能性が高いと思っておいた方がいいだろう。エルニーニョ監視速報の基準値の定義は、小さい字ではあるが、よく見ると資料の中にちゃんと書いてあった。12月も半ば、例年でも本格的な寒波がやってくる時期だ。予報資料も、厳冬への備えも、見落としや見逃しがないように気をつけたい。