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令和の喜劇女優を目指す辻凪子が「活弁付き新作無声映画」を完成。夢の実現に向けクラファン中!

水上賢治映画ライター
「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」より

 これまで数々の映画やテレビドラマなどに出演し、役者として確実に着実に存在感を増している辻凪子。

 目指すは「令和の喜劇女優」「世界一のコメディエンヌ」と公言し、学生時代から映画監督としても活動する彼女が、いま大いなるチャレンジに踏み出している。

 それは2年越しで完成させた、辻凪子監督・主演、大森くみこ弁士による活弁付きの新作無声映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」の全国巡業公演。

 なぜ、いま無声映画なのか?あまりなじみのない活弁なのか?

 この映画を自ら各地を訪れ「全国津々浦々まで届けたい」という願いを叶えるべく、クラウドファンディングを現在絶賛実施中の彼女に訊く。(全三回)

衝撃だった「活弁」との出会い

 まず周防正行監督の「カツベン!」(2019年)もあったのでご存知の方もいると思うが、説明すると、活弁とは、いまからおよそ100年前、映画がまだ音のついていない無声映画で「活動写真」と呼ばれていたころ、日本では、無声映画に弁士による語り、生演奏というスタイルで映画が上映されていた。

 つまり、映画=活動写真で、そこに弁士がつく上映を「活弁」と呼び、庶民の娯楽として親しまれていた。

 しかし1930年代に入ると音のついた「トーキー映画」が登場。

 世界で大人気となると、活弁は瞬く間に過去のものとなっていってしまった。

 過去のモノになりつつある中で、なぜ、いま「活弁」なのか?

 まず「活弁」との出会いを辻監督はこう明かす。

「わたしも大学に入るまで活弁のことはほとんど知りませんでしたし、見たこともありませんでした。

 活弁をみたのはほんとうに偶然のことで。

 大学の1年生のとき、あるワークショップを受けていたんですけど、そこがスタジオと映画館を併設している施設だったんです。

 大阪にあるプラネットプラスワンという場所なんですけど。

 その映画館で上映があるということで、今回の『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』の弁士でもある大森くみこさんがいらっしゃっていた。

 そして、ワークショップのスタジオにもみえて、『よかったら見に来てください』と受講生に声をかけられていた。

 それで、わたしはいってみようと思ったんです。

 で、いってみたら、もうびっくり!『これまでに見たことない娯楽だ』と深く感動しました。

 日本に昔からある文化ではあると思うんですけど、わたしにとってはまったく新しい娯楽に思えました。

 あえて近い体験を挙げるとすると、子どものときにディズニーランドに行ったときの感覚というか。

 ものすごく興奮もしましたし、ものすごく感動もしたんです。

 小さな映画館なんですけど、普通に映画を見るより、自分がその映画の世界の中へ入ってしまったような感覚になりました。

 ジョルジュ・メリエスの作品だったんですけど、現実をすっかり忘れて、すごい異世界へと自分が行ったみたいな感覚になったんです。

 ほんとうに驚きました『こんな映画体験があるんだ』と。

 同時に映画史としても昔から今につながれてきたことですけど、それまで知らなかったわたしの目にはとても『斬新』に映り、まったくの新しい表現に感じられました。

 これが活弁初体験だったのですが、わたしにとっては忘れられない時間になりました」

「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」より
「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」より

活弁は、いままで知らなかった映画に数多く触れる機会にも

 それから活弁に興味をもつようになったという。

「活弁をきっかけに、バスター・キートンやジョルジュ・メリエス映画にも出合いました。

 活弁は、いままで知らなかった映画に数多く触れる機会にもなって、ますます映画のことも好きになりました」

活弁映画を作ることになったきっかけは?

 こうした中、「活弁が付く」ことを前提にした無声映画作りを始めるきっかけが訪れる。

「きっかけをくださったのは、プロデューサーの岡本建志さんです。

 京都造形大学(現・京都芸術大学)の先輩に当たるんですけど、岡本さんがまず活弁映画を作りたいと思っていらっしゃった。

 岡本さんは自身が手掛けられている『祇園天幕映画祭』を通じて、大森くみこさんとつながりがありました。

 そして、わたしが大学の2回生のときから、演者をしながら自身で監督もして映画を作っていること、活弁が好きということをご存知だったようで、大森さんとわたしとで『活弁映画を作りたい』と思ってくれたようです。

 それで、声をかけてくださって、大森さんにも引き合わせてくださり、企画をスタートさせることになりました」

全国くまなく巡って『活弁』を届けたい!

 こうして、辻凪子監督&大森くみこ弁士による活弁付き新作無声映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」の企画が始動。映画を制作するためのクラウドファンディングを行うと、2,693,707円の支援を受け、実際の制作へ。

 2年をかけてこの度、映画がついに完成!

 現在、その「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」を活弁付きで全国各地に届けるため、再びクラウドファンディングを実施中だ。

「今回完成した映画『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』は、活弁付きと活弁吹込版という2パターンでの上映になります。

 ただ、活弁ありきの無声映画として作っているので、活弁士が生で語る活弁付きの上映で多くの方に楽しんでほしい。

 まだ『活弁』をみたことのない、未体験の人がたくさんいると思うので、ほんとうに全国くまなく巡って『活弁』を届けたい。

 そのためには資金が必要で(苦笑)。クラウドファンディングで支援を呼びかけることにしました。

 まずはホームページをみていただいて興味をもっていただけたらと思います」

(※第二回に続く)

「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」ポスタービジュアル
「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」ポスタービジュアル

「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」

監督・脚本・主演:辻凪子

活動写真弁士:大森くみこ

出演:間寛平、塚地武雅、石田剛太、酒井善史、角田貴志

公式サイト https://www.iamjam-movie.com/

写真はすべて(C)2020 活弁映画『I AM JAM』製作プロジェクト

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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