2020年のサッカー・ワールドカップ・カタール大会のアジア最終予選で、日本代表が中国代表を1対0で下した。最終予選で初勝利、1勝1敗で勝ち点3をあげた日本は歓喜したが、2連敗となって勝ち点0の中国は消沈し、国営メディアは「なぜ日本は強いのか」と題する記事まで配信した。

中国とアジア一流との差は想像以上?

 サッカーファンを自称する習近平国家主席の意向もあり、中国のサッカー強国への願望は強い。それだけに、敗戦の失意も大きい。

「中国のサッカーとアジアの一流との差は想像以上に大きい」

 コラムで酷評したのは「北京青年報」。中国共産党の青年組織「共青団」の北京市委員会の機関紙である。

 国際サッカー連盟(FIFA)のランキングで、24位の日本に対し、中国は71位。試合前の記者会見で、中国の李鉄コーチは「日本はアジアで最も良いチーム」と持ち上げ、「決勝のつもりで闘う」と意欲を示したが、残念ながら結果は及ばなかった。

 中国代表でスペインのチームに所属する武磊選手は、カタールで行われた試合の後、多くの日本の選手が自分と同じようにヨーロッパの所属チームに戻ろうとしている様子を空港で目撃した。SNSでこうつぶやいて、謙虚なスポーツマンシップを見せた。

「日本代表のほぼ全員が、ヨーロッパのそれぞれのチームに戻ろうと準備している。本当に感銘を受けた。中国のサッカーとアジアの強いチームとの差は本当に大きい。我々はこの差を直視し、一日一日を無駄にしてはいけない」

日本の強さの秘密は?

 その中で、国営新華社通信の日本駐在の記者が、日々の生活で目にした日本と中国との違いから分析した「何故、日本のサッカーは強いのか?」と題した記事が興味深い。

「日本のサッカーは、なぜ中国より強いのか?東京にしばらくいさえすれば、専門的な見識がなくても、日常生活の中からの日本のサッカーが強い理由が分かる」

 記者は、まず、今年1月のとある日の夕方、すでに薄暗くなった街で1人の少年を見かけた際の驚きを振り返っている。

「外は寒く、路に人はいなかったが、7、8歳の1人の少年が、長袖と半ズボンで、薄い上着にカバンを背負ってやって来た。私は、もう一度振り返ったが、やはり他に人はいなかった」

 記者が自分と少年以外に誰もいないことを確認したのは、迎えの人の姿が見えないことが意外だったためであろう。

 中国では、小学生を両親や祖父母が送り迎えするのが当たり前。付き添って歩くこともあるが、自家用車での送迎も珍しくはない。このため、登下校の時間になると学校前の道路は混雑し、校門の周辺には、大人たちの人だかりが出来る。長く続いた一人っ子政策で、過保護になったといえばそれまでだが、親たちの頭には、誘拐などの犯罪に我が子が巻き込まれないか治安への不安がある。

1人で登下校する小学生に驚き?

「日本の学校は、学生に自分で登下校をするように要求しており、小さな学生が1人で昼間にバスに乗って帰宅するのさえ奇妙ではない」

 記者があえてそう述べるのは、中国では小学生が1人でバスや電車に乗っていれば、奇妙に映るからだ。

 私自身は、中国で登校時間に、小学生が自家用高級車や料金がかかるタクシーから降り立ち、車内に残る大人に手を振る姿を見て驚いた。故に、新華社の記者が、日本の登下校の様子に驚くのもうなずける。

「中国の小学校の周囲の道では、登下校時に車が渋滞するのに見慣れているので、感慨深かった。携帯を取り出して、男の子の後ろ姿の写真を撮った」

 記者が感じたもう1つの違いは、多摩川の河川敷で見た光景だった。

多摩川沿いの多くの運動場 

 記者は川辺によく散歩に行くそうだが、河川敷にサッカー場やラグビー場、野球場などたくさんの運動場が作られていることに気づいたという。都市の中心部からそう遠くない多摩川の河川敷が、東京都内の運動場の不足を補っているのだと考えた。

 四季を問わず週末には多摩川沿いのサッカー場で、元気一杯の子供たちが、サッカーに興じているのを目にする。子供たちの多くが正式なユニフォームを来ているので、一眼見て学校同士の試合だと分かり、中には小学生のチームもあれば、男女の混合チームもあることに気づく。

日中の差は1対0より大きい?

 子供たちの姿に感銘を受ける記者の目が優しい。

「小さい子供は、一般的には保護者と車でやって来る。大きな子供は、それぞれ後部座席に弁当を乗せた自転車でやって来て、試合が終われば弁当の上に座って、他の人の試合を見て、お昼がくれば、川岸に座って弁当を取り出して食べる」

 中国の子供たちは、日本以上に激しい受験競争にさらされている。部活動などの課外活動はあまり盛んではない。

 記者はこう結論づける。

「大都市で小学生が1人で登下校したり、大都市にサッカー場を作ったりできるのは、とてつもなく大変で複雑な社会事業であり、決して短期間にできるものではない。日本のサッカーに追いつくのも、同様に道は遠く、決して0対1の差ではない」