中国は新型コロナの拡大で首都防衛戦に突入か?

新型肺炎の感染拡大を受け北京では次々と対策が(写真は北京2月6日)(写真:ロイター/アフロ)

 中国発の新型コロナウイルスの感染拡大。首都北京でもこれまで297人が感染確認され、うち1人が死亡している。北京市政府は、感染が多発している地域から戻って来る人を受け入れない方針を決めた。メンツをかけて首都を守ろうとする危機感がにじむ。

 感染拡大に窮する中国は、事実上、首都防衛戦に突入したと言える。

北京は感染地域からの市民を拒否

 北京市は、トップである蔡奇党書記らが参加し、新型コロナウイルスの感染予防に関する部会を開催し、きょうその結果を発表した。その中で「ゲートをしっかりとしめ、断固として感染源を断つ」とした上で、次のような方針を示した。

「感染が多発している地域から北京に戻ろうと計画している人に対し、事前に連絡を取り、暫定的に北京に戻らないよう通知する」

 感染拡大地域に帰省などした人たちを締め出す方針を決めたのである。

「感染多発地域」からすでに北京に戻っている人に対しては「自宅での経過観察の措置を厳格に実施する」とした。

週明けが危険?

 北京市は、医薬品関係など感染予防に必須な業種や、都市インフラに関わる業種など一部を除き、市内で活動する企業に対し、9日の日曜日までは職員を在宅勤務させるなどの対応をするよう求めていた。

 そのため春節の休暇で北京を離れ帰省していた人たちは、ずるずるとそのまま故郷に残るような状態が続いている。今でも北京の街は人がまばらで、その分、これまで人と人との接触は極力抑えられていた。

 しかし、週明けから北京で本格的に出勤が始まれば、感染リスクは高まる。その事態に直面し、ウイルスを運び込みそうな市民を排除する強硬策に出たわけだ。

 なお、感染多発地域とは、どこを指すのか明示していない。解釈次第では、いかようにでも市民の帰京を阻むことができる。

北京では多くの会社がまだ「休業」状態(2020年2月3日北京駅)
北京では多くの会社がまだ「休業」状態(2020年2月3日北京駅)

外国人記者に届いたメール

 昨日、北京に駐在する外国人記者たちに、「ジャーナリストの皆様へ」と英語で書かれたメールが届いた。差し出し人は、外国人記者を管轄する中国外務省の担当部門。

 その内容は「1月23日以降に居住都市を離れた人は14日間の自宅待機」を求めるものだった。取材や旅行で北京を一度離れてしまえば、2週間行動の自由を失うわけだ。

北京では家族での外食も禁止?

 北京はこれに先立つ5日には「会食禁止令」とでも言える「奇策」を繰り出している。グループで食事したり、食事会を主催したりするのを禁じると命じた。飲食業者に対しては「すでに予約を受けている場合には、客と連絡を取り、予約を取り消すか延期させる」よう求めている。

 ここでもグループが何人を指すのかは、明示されていない。

「禁止令」が出された直後、一部メディアが3人以上はグループに当たる、と報じたが、その後、別のメディアは「北京市の規定では3人ならグループに当たらない」と“新”解釈を報じた。

 こうした混乱から「禁止令」が、熟慮を経ず、見切り発車的に発せられた感は否めないが、文字通りに読めば、家族での外食や仕事の後の同僚との一杯も、この「禁止令」に抵触する可能性がある。違反した場合は「迅速に調査し、法に従い厳重に処罰する」と警告までしている。

宴会客はお断り?

「宴会が受けられないから、材料の仕入れもごく少量でやります」

 北京で複数の日本料理店を経営する小林金二さん(63歳)は、「会食禁止令」を受けてこう話す。

 小林さんは、2002年から3年にかけて流行したSARSも経験しているが、飲食業への影響は、当時よりも大きいと感じている。ランチタイムに店を訪ねたが、通常は日本人駐在員や健康志向の中国人客で賑わう大きなフロアは、確かにガランとして、2、3組のみがひっそりと食事をしていた。その上に今回の「禁止令」である。

 小林さんはあきらめ顔でこう嘆く。

「10人くらいで食事をしたいというお客様がいても断るしかない。売り上げには相当影響すると思います」

「禁止令」により、外食の個人消費が大幅に落ち込むのは間違いないが、北京としては経済よりも予防の方が喫緊の課題なのである。

 北京の医師は、同市での新型コロナウイルス肺炎の流行が、すでに拡散の初期段階に入ったとの見解を示している。

 その北京には、最高指導部が集う。全てが上意下達で動く一党支配の国は、どんな強硬手段を使っても首都を守ろうとするだろう。