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高齢者介護施設は新型コロナウイルス感染ハイリスク者の集団生活の場。面会の一時的中止も検討すべきでは?

宮下公美子介護福祉ライター/社会福祉士+公認心理師+臨床心理士
面会する家族が介護施設にウイルスを持ち込むリスクはあなどれない(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

都内の介護施設職員が新型肺炎に感染

2月22日、東京都内の介護施設で勤務する60代の男性職員が新型コロナウイルスに感染したことがわかりました。感染の経緯は不明。症状が出てからの経緯は下記の通りです。

都によると、男性は12日に熱やせきが出て医療機関を受診。13日は出勤し、14日は自宅で過ごした。15日から家族とインドネシアに旅行し、帰国した19日、肺炎と分かって入院した。男性は保健所の聞き取りに、「常にマスクをしていた」と答えたという。

出典:サンスポ・ドットコム

現在、入院中で重症とのこと。1日も早い回復を祈りたいと思います。この男性は介護職ではないそうですが、それでも勤務している施設で感染者が出ないかがとても気になります。

というのも、高齢者や心臓疾患などのある人は重症化リスクが高いことが、データで明らかになっているからです。

中国で新型コロナウイルスへの感染が確認されたおよそ4万4500人の詳しいデータが公表され、全体の致死率は2.3%でしたが80代以上では14.8%などと高齢者が高いほか、心臓など循環器に持病がある人は10.5%と高いことが分かりました。

出典:NHK NEWS WEB

介護施設では、80歳以上の人、心臓疾患のある人など、ハイリスクの高齢者が多数、集団生活を送っています。もし施設内にウイルスが持ち込まれるようなことがあれば、感染が広がり、重症化する人が複数出る恐れがあります。

高齢者、心臓疾患など、重症化リスクが高い人がいる家庭もそうですが、何よりも、ウイルスを持ち込まないための対策が必要です。

▲高齢者は新型コロナウイルス感染による重症化リスクが高いので、家族や職員がウイルスを持ち込まないことが大切(フリー画像)
▲高齢者は新型コロナウイルス感染による重症化リスクが高いので、家族や職員がウイルスを持ち込まないことが大切(フリー画像)

危機感の薄い介護施設等はまだまだ多い

厚生労働省は1月29日から2月18日までに、都道府県と市町村の介護保険担当課に向けて、社会福祉施設での新型コロナウイルス対応についての通知を、6通発出しています。感染経路を断つことが重要であること。新型コロナウイルスについての正しい認識を持つこと。従来から通知してある「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」などを参考に感染症対策を行うこと。こうしたことを、管轄下の高齢者施設等に周知するよう通達しています。

そして、都道府県等に対し、2月18日の通知では、新型コロナウイルスの流行状況に応じた一時休止や、感染の恐れがある利用者はサービス利用を避けることなどを、社会福祉施設等に要請することを求めています。

しかし、果たしてこうした通知はどれだけ、高齢者施設等に周知されているのでしょうか。

筆者は後見人業務等で、定期的に訪れる介護施設等が複数あります。しかしそうした施設等のうち、新型コロナウイルス対策を打ち出した施設は、2月22日現在、1カ所だけです。他の施設等は面会が厳しく制限されることもなく、アルコール消毒やマスク着用が厳しく求められるわけでもありません。このままで大丈夫なのか、とこちらの方が心配になります。

一方、新型コロナウイルスの感染対策を文書で通知してきた施設は、面会の制限と、面会時の感染症対策を詳細に規定しています。

「37.5度以上の発熱やだるさ、息苦しさがある方」など、面会を制限する対象者を明示。また、面会者には、手指のアルコール消毒、マスク着用、施設受付での体温計での検温と面会票への体温の記入を義務づけています。丁寧な感染症対策と思います。

国内では、すでに二次感染、三次感染と思われるケースが次々と現れ、このウイルスは拡散しつつあります。また、集団感染が起こったクルーズ船の乗客には、下船時に陰性だったにもかかわらず、その後、陽性だと判明した乗客も出ています。

このウイルスは、現時点では、感染しているかどうかの見極めが非常に難しい状況です。

となると、面会者の体温を測定をしても、新型コロナウイルス感染者による面会を防ぐのは難しいかもしれません。

▲厚生労働省が都道府県、市町村に発出した新型コロナウイルス関連の通知は、介護施設に伝わっているのか(筆者撮影)
▲厚生労働省が都道府県、市町村に発出した新型コロナウイルス関連の通知は、介護施設に伝わっているのか(筆者撮影)

かつては一時的に家族等の面会を全面禁止とした施設も

以前、インフルエンザが大流行した年、ある施設では一時的に、家族等の面会者が2階以上にある生活スペースに立ち入ることを全面的に禁止。入居者の衣類の受け渡しなども、施設1階で職員が家族から受け取るという対応をしていたことがありました。

入居者や家族にとってはストレスのたまる対応ですが、入居者を守るために病原体を絶対に持ち込むまいという強い意志を感じました。こうした対応がよいかどうかについては、意見が分かれるかもしれません。しかし、ウイルスを施設内に入れないようにするには、有効な対策だと思います。

すでに新型コロナウイルスは流行期に入ったとも言われています。地域によって感染状況は異なるため、過剰反応は避けるべきですし、どのような対応がベストか一概には言えません。介護施設には地域の感染状況をよく見極めた上で、家族等の一時的な面会の中止なども含めて、新型コロナウイルスを排除するための有効な対策を講じ、徹底して実践してほしいと思います。

▲体温チェックでは、新型コロナウイルス感染者を見極められないなら、どのようにして高齢者をウイルスから守るかを考える必要がある(フリー画像)
▲体温チェックでは、新型コロナウイルス感染者を見極められないなら、どのようにして高齢者をウイルスから守るかを考える必要がある(フリー画像)

家庭で玄関より中にウイルスを持ち込まないために

また、高齢者や心臓疾患を持つ人など、感染リスクの高い人がいる家庭では、是非、外出時、家族はマスクを着用してください。マスクは、病原体の吸い込み防止効果に注目が集まりがちですが、むしろ、病原体を触ったかもしれない手で無意識のうちに口を触り、感染するのを防ぐことにつながります。

そして、玄関にふた付きのゴミ箱とアルコール消毒液を置く。帰宅時には、玄関でマスクをはずしてゴミ箱に捨て、手指を消毒してから部屋に入る……。

こうした方法をとって、玄関より中にウイルスを持ち込まないよう、心がけてほしいと思います。手にウイルスをつけたまま、ドアノブなど家の中のあちこちをさわってから洗面所で手を洗っても意味はない、と指摘している医師もいます。

一人ひとりが感染症対策への意識を高めることで、新型コロナウイルスのこれ以上の拡散を何とかして食い止めたいものです。

介護福祉ライター/社会福祉士+公認心理師+臨床心理士

高齢者介護を中心に、認知症ケア、介護現場でのハラスメント、地域づくり等について取材する介護福祉ライター。できるだけ現場に近づき、現場目線からの情報発信をすることがモットー。取材や講演、研修講師としての活動をしつつ、社会福祉士として認知症がある高齢者の成年後見人、公認心理師・臨床心理士として神経内科クリニックの心理士も務める。著書として、『介護職員を利用者・家族によるハラスメントから守る本』(日本法令)、『多職種連携から統合へ向かう地域包括ケア』(メディカ出版)、分担執筆として『医療・介護・福祉の地域ネットワークづくり事例集』(素朴社)など。

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