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コパ・アメリカ地元優勝ねらうチリは問題児集団?

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
ビダルのマスクをかぶりスタジアムへ向かうチリ・サポーター

DFハラの挑発行為が問題に

南米チリで開催されているコパ・アメリカ2015で、ホスト国チリが決勝トーナメント1回戦でウルグアイを1-0で下し準決勝進出を決めた。この試合のボール支配率はチリ80%、ウルグアイ20%と圧倒的な差が出た。開催国というアドバンテージを考慮しても、ここまでのベストチームにチリを推すメディアは多い。だが試合翌日、マウリシオ・イスラ(QPR)が挙げた決勝点の8分前に起こった場面が問題となっている。

それはルイス・スアレスが不在のウルグアイのエース・ストライラー、エディソン・カバーニが退場を食らったシーン。前半、副審への執拗なクレームにより警告を受けたカバーニは、この日2枚目のイエローカードを出されピッチを去った。再生映像でカバーニはチリのディフェンダー、ゴンサロ・ハラ(マインツ05)の頬に軽く手を触れたように見えた。2,3秒後ハラは派手に横転した。

カバーニが平手打ちを食らわせたというより、その前の小競り合いでハラが反則を誘発する言動を取ったと理解する見方が主流。確かにハラの指がカバーニの肛門に触れていた。試合を管轄したCONMEBOL(南米サッカー連盟)はハラへの処分――大会の残り試合出場停止――を通達する動きを見せている。同時にマインツも彼の解雇を検討中。

地元メディアによると、ハラの行為が問題視されるのは、2013年のブラジルW杯予選のチリvsウルグアイ戦で、チリ人がスアレスに対して同様な行動をとったことも影響しているという。その時ハラはスアレスの股間を触ったとされる。

フェアプレー精神に欠ける演技?陽気なラテンアメリカの中では質実剛健的な国柄、イメージを感じさせるチリだけに、意外で残念な気がしてならない。もしチリが首尾よく優勝しても汚点を残すことになるだろう。

飲酒事故を起こしたビダル

今大会、最初にチリで醜聞を集めたのはミッドフィルダー、アルトゥーロ・ビダル(ユベントス)の飲酒運転事故、逮捕事件だった。事故の翌日、夫人同伴で涙を流して謝罪会見を開き、チリ大統領ミシェル・バチェレ女史から「大事に至らず何よりです」と励ましのメッセージを受けたビダルだが、ユベントス加入後もアルコール摂取や規律に関するスキャンダルが報道され、プレーにも悪影響を及ぼしていると危惧された。

一部でビダルは「来季レアル・マドリーに移籍か?」とも伝えられたが、今回の騒乱でプライベートライフが明るみになり、トレードは霧散霧消。事故の代償はあまりにも大きかった。それでもチリ代表ホルへ・サンパオリ監督からチーム残留を許可されたビダルは相変わらずピッチで活躍。監督の決断が間違っていなかったことを証明している。レアルは無理だが、プレミアリーグのアーセナル、マンチェスター・ユナイテッドからオファーが舞い込んでいる。何とも強運の持ち主だ。

それにしてもビダルの私生活は派手だ。モデル級の美貌の妻マリア・テレサ・マトゥスとの夫婦生活はデビッド&ビクトリア・ベッカムと比較される。今回事故で大破したのは赤のフェラーリ。マリアとの挙式にはバチェレ大統領も出席して話題となった。眩しすぎるスポットライトを浴びるだけに自制しろと言うのが無理なのかもしれない。

バルディビアの醜聞ヒストリー

チリ代表にはビダルやハラを凌駕するようなスキャンダルの帝王がいる。エース、アレックス・サンチェス(アーセナル)やビダルらとともに攻撃のアンサンブルを奏でる司令塔ホルへ・バルディビア(パルメイラス)だ。

夫人のダニエラ・アランギスはモデル兼女優でビダル夫人同様のセレブリティー。カップルがセレブだからといってスキャンダラスとはもちろん言えないのだが、彼らの周辺にはゴシップネタが絶えない。どれもこれもがバルディビアの“人柄”というべきか。

19歳で名門コロコロとプロ契約を結んだバルディビアは、規律の問題からウニベルシダ・コンセプシアオンへレンタル移籍された。21歳でチリ代表にデビューし、07年コパ・アメリカ(ベネズエラ)に出場。他の5人のメンバーと決勝トーナメント進出を祝おうと祝杯を上げていたが、ホテルの2人のウェイトレスとセックススキャンダルを起こしたと地元テレビに報じられ、チリ連盟から20試合の出場停止処分を食らった。(その後処分は10試合に軽減)

UAEのアル・アインFCで2年間プレー後、10年夏パルメイラスに復帰したが、当時のフェリペ・スコラーリ監督の采配にピッチで不満を表し、謝罪を命じられた。同じくパルメイラスではクラブから「オフの過ごし方に注意するように」という通達にサインを拒否。あからさまに不満をぶつけ、チームのフロントから批判された。

同年の南アフリカW杯に出場。南米予選からマルセロ・ビエルサ監督の期待に応え、ポジションを獲得したバルディビアだが、翌年代表監督がクラウディオ・ボルギに交代すると、またもやスキャンダルネタを提供する。合宿期間中に彼の息子の洗礼式にビダルをはじめ、ジャン・ボーセジュール、ハラ、カルロス・カルモナが参加。報道によると彼ら5人は監督の許可を得て外出したのだが、パーティーが長引いたため、戻りが45分間遅れてしまった。しかもアルコールに酔った状態だったため、ボルギ監督は「プロアスリートにはあるまじき行動。何を飲んだか知らないが、追い出すしかなかった」とコメント。謹慎処分が科された。それ以前にもバルディビアはボーセジュールと夜遊びし、この時は処分を免れた経緯があった。また同じ11年のブラジル・カップのサント・アンドレ戦ではピッチで放尿した無道もある。

バチが当たったのか12年には妻と2人の子供といっしょに強盗に誘拐される事件に遭遇する。それでも2時間ほどで釈放されたのは、悪運が強い彼らしいというべきか。それと前後するがブラジルの雑誌に妻以外の女性とキスする姿が載ったことも。まるでスキャンダルを売り物にしているような印象さえしてしまう。

ピッチ内では抜群のスキルで魅了する司令塔バルディビア
ピッチ内では抜群のスキルで魅了する司令塔バルディビア

チリのプジョール

彼らだけを取り上げてチリをトラブルメーカー集団を決めつけるのは語弊があるだろう。だがビエルサ監督時代から続く全力投球を貫く精勤サッカーを見ていると、そのギャップに驚かされる。南北に細長いチリという国は選手の性格も一筋縄では捕らえられないのか。まあ、ウルグアイにもスアレスのような選手もいれば、攻守に実に献身的なクリスチャン“セボーヤ”(タマネギ)ロドリゲスのような忠実な男もいるからわからない。

チリ代表で真のファイターといえば、ビタルと同じセリエAでプレーするDFガリー・メデル(インテル)をおいていないだろう。身長170センチそこそこながら、コーナーキックなどで果敢にヘッドでゴールをねらう。私は彼を“チリのプジョール”と呼んでいる。話は飛ぶが今、バルセロナにもっとも求められるタイプの選手ではないだろうか。もしチリが優勝したら、悪童たちよりもメデルが陰のMVPに君臨すると思っている。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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