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A4用紙1枚でまとめる!飲食店の経営計画書

三ツ井創太郎飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表
(筆者作成)

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

これまでのコラムでは、飲食店が生き残る為の戦略を考える上で必須となる「4つの成長戦略」についてお話をさせて頂きました。

経営戦略は、社長一人の会社であれば社長の頭の中にだけあればいいと思いますが、スタッフと一緒に目標達成を目指していくためには、こうした社長の想いや会社の戦略を明文化していく、つまり経営計画書に落とし込んでいく事が重要になります。

しかしこの経営計画書づくりでつまずいてしまう方も多いのではないでしょうか?

なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。

(筆者作成)

居酒屋を7店舗経営するC社長からのご相談「アフターコロナに向けた計画を考えてみたが、なかなか経営計画書に落とし込めない」

居酒屋を7店舗経営されているC社長からは当社ホームページ経由でご相談を頂きました。長引くコロナ禍でお店の休業を余儀なくされる中で、テイクアウト業態へのチャレンジ等、新たな事業モデルへの変革を進められており、経営理念や経営ビジョンの見直しもしっかりとやられておりました。

そこで次は経営計画書を作成し、スタッフやステークホルダー(利害関係者)、つまり銀行や業者さん等に新たな事業モデル等を説明しようと考えました。

「初めての経営計画書を作ってみようと、アマゾン等で経営計画書のつくり方をまとめた本を探してみたのですが、あまりにも沢山の本があり、どれを読んだら良いのか分からず断念してしまいました」

確かにアマゾン等で「経営計画書」と検索すると、なんと3,000冊以上の書籍がヒットします。

(写真:photoAC)
(写真:photoAC)

私はC社長にこうお伝えしました。

「C社長、経営計画書はそんな難しいものではありません、まずはA4サイズ1枚で経営計画書を作りましょう!」

C社長は「A4サイズたった1枚で経営計画書が作れるの?!」と半信半疑でしたが、私はまず経営計画書の概念から説明をさせて頂きました。

経営計画書については様々な考え方があり「こうじゃないといけない!」という正式な型はありませんが、ここでは私がお伝えしている最も簡単な飲食店経営向けの経営計画書の作り方をお話しさせて頂きます。

まず始めに重要な点を述べておくと、経営計画は「自社の経営理念、経営ビジョンと連動していなければ意味が無い」という事です。以前のコラム(飲食店経営理念見直しの実例)で解説した「船の航海」の例えも交えて整理していきます。

(筆者作成)
(筆者作成)

■経営理念(羅針盤)

経営理念とは、経営者もしくは企業が表明する「この組織は何のために存在するのか」といった基本的な考え方を企業の内部・外部に知らせ、企業内部に対してはスタッフ一人一人に対して行動や判断の指針を与えるもの。船の航海に例えると「羅針盤」のようなものです。

ここでいくつか有名飲食企業の実際の経営理念を見ていきましょう。

株式会社ゼンショーホールディングス 「世界から飢餓と貧困を撲滅する」

株式会社すかいらーくホールディングス 「価値ある豊かさの創造」

株式会社吉野家ホールディングス 「すべては人々のために」

株式会社串カツ田中ホールディングス 「どんな時代においても必要とされる会社・組織・人材になる」

このように経営理念は、具体的な経営目標数値等を掲げるというよりは、「あり方」を表明するものです。具体的な経営目標数値に関しては、次に述べる「経営ビジョン」として中期経営計画書等で掲げるのが一般的になります。

■経営ビジョン(目的地)

企業のトップによって表明された、自社の望ましい未来像。経営理念で定義された経営姿勢、存在意識に基づき、具体的に数年後に「こうなっていたい」と考える目標です。船の航海に例えると「目的地」になります。

■経営計画(航路図)

「経営計画」とは、一言で言うと「ビジョンを実現するための具体策」であり、船の航海に例えると、目的地(経営ビジョン)に到達する為の航路図(経営計画)となります。

このように、経営計画は社長が描く「未来のあるべき姿」を見える化させたものです。そして「未来のあるべき姿」を達成する為に最初に考えなくてはいけないのは、社長が考える「未来のあるべき姿」と現状の状態にはどのようなギャップがあるか?という事です。このギャップの事を「経営課題」と言います。

(筆者作成)
(筆者作成)

①経営理念=自社の存在意義やあり方

②経営ビジョン=具体的に数年後に「こうなっていたい」と考える目標

③数値計画=経営ビジョンをより具体化した数値目標

④現状分析=今の自社の状態の分析

⑤経営課題(ギャップ)=経営ビジョンや未来のあるべき姿と現状の差

⑥アクションプラン=経営課題解決に向けた具体的な行動計画

⑦実行計画=アクションプランを推進する為の組織体や会議体など

⑧進捗確認=アクションプランの進捗確認を行う為の方法など

この①~⑥までを明文化したものが経営計画書になります。

なお、経営計画の実行性をより具体的に伝える為に⑦⑧の内容も経営計画書に盛り込む場合もあります。

これを実際にA4サイズ1枚にまとめたのが次の表になります。

A4サイズ1枚でまとめる経営計画書

(筆者作成)
(筆者作成)

A4サイズの簡単な経営計画書にはなりますが、自社の経営計画の概略を作成する上では私はこれくらいで十分だと思います。なお、経営課題や課題解決に向けたアクションプランに関しては、自社の課題を3大経営資源である「人の課題」「物の課題」「金の課題」に切り分けるとより考えやすくなると思います。

詳細な経営計画書を作成したい方は、まずはA4サイズ1枚でまとめてサマリーを作った上で、各項目に関してさらに詳しく記入していくことで、より詳細な経営計画書を作成されることをおすすめします。

ぜひ、皆様もアフターコロナに向けて、一度ご自身の考えや会社の方向性をA4サイズ1枚の経営計画書に落とし込んでみて下さい。きっと展望が開け、皆さん自身のモチベーションも高まると思います。

アフターコロナのV字回復は、社長のモチベーションなくしては達成できないのです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

(筆者作成)

<筆者プロフィール>

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント

代表取締役 三ツ井創太郎

https://www.threewell.co/business

飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表

㈳日本フードビジネス経営協会代表理事。飲食企業で店長、SV、事業統括の経験を経た後、2011年に東証一部上場のコンサル会社である(株)船井総合研究所に入社。飲食コンサルティング部門のリーダーとして数多くの飲食店支援を行う。2016年飲食店特化のコンサルティング会社(株)スリーウェルマネジメントを設立。「飲食店オーナー様に徹底的に親身なサポートを!」を理念に、個人店から大手チェーンまで日本全国の飲食店へ支援を行う傍ら、テレビのコメンテーターや行政、金融機関と一体となった飲食店支援も行う。著書「V字回復を実現する! あたらしい飲食店経営35の繁盛法則 」はアマゾンの外食本ランキングで1位を獲得。

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