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米国セブンイレブンが24時間営業を前面に 新ブランドの狙いとは

南龍太記者
米セブンの新ブランド「24/7 LIFE by 7-Eleven」のロゴ

 昨年に引き続き話題のセブン―イレブンなどの営業時間短縮をめぐり、発祥地・米国のセブンオーナーらも事態を注視している。本部との契約により「クリスマスも休めない」と不満顔のオーナーも少なくない中、米セブンはこのほど「24/7」を冠した新ブランドを打ち出した。「『1週間7日、毎日24時間』顧客のニーズを満たす」といった意味が込められている。

 顧客の要望に応えたいという創業以来の経営理念と、負担減を求める店舗側の意向、どう折り合いをつけていくか、今年も動向が注目される。

元日も営業する米国セブンの店舗(ニューヨーク市)
元日も営業する米国セブンの店舗(ニューヨーク市)

新ブランドは「24/7 LIFE by 7-Eleven」

 米国セブンが昨年末に発表した新ブランド「24/7 LIFE by 7-Eleven」では、スマートフォンのケーブルや充電パッド、スピーカー、ワイヤレスイヤホンといったIT関連機器を取り扱う。他に医薬品なども新ブランドの対象となる。

 ブランドのロゴは、セブンのトレードマークに見られるグリーンとレッド、オレンジを基調とし、当面200種類以上の商品を扱う。発表に際し、シニアディレクターのティム・コーギル氏は、

「私たちは顧客が欲しい物を、欲しい時に毎日24時間(24/7)提供する」

(We provide customers with what they want, when they want it 24/7)

と年中無休、24時間営業の意義を説明していた。

 なお、15年前に始まった「7-Select」(セブンセレクト)という飲料や食品のPB(プライベートブランド)は併存するという。新ブランドの投入は、オーナー側にとっては売り上げアップにつながる可能性がある一方、当然ながら業務は増える。

 ただ、こうした24時間営業を便利に感じている顧客が相当数いるのも事実だ。

(7-Selectの商品例)

日本上陸前に24時間営業に舵

 こうした休みなく営業するスタイルが、セブン―イレブンの店名の由来となった「朝7時から午後11時までの営業時間」にそぐわなくなって久しい。

 米セブンは1946年に登場後、60年代にテキサス・オースティンやネバダ・ラスベガスで24時間の試験営業を始め、順次拡大してきた。その理由として当時、「米国の平均年齢が若くなり、より多くの仕事で深夜から早朝のシフト制が求められる中、顧客の生活スタイルにより良く資するために、24時間営業に変わっていった」としている。

 日本のセブンのウェブサイトによると、東京・豊洲に1号店ができた1974年までに、既に米国では多くのセブンが実質的に24時間営業になっていた。

 セブン―イレブンの店名が有名無実化している現状を踏まえ、「改名すべき」といった皮肉や批判も時折聞こえてくる。

 そうした中、奇しくも当事者の米国セブン側が新たなブランドとして、年中無休24時間営業の旗幟を鮮明にした格好となった。

時短営業の行方

 コンビニの時短営業の議論の発端となった大阪府東大阪市のセブンのニュースは、米ニューヨーク・タイムズなどが報じ、ツイッター上でも話題を集めた。

 本家の米国セブンは、1990年代以降に日本のセブンに買収、完全子会社化された。ただ、オーナー側の利益を追求する全米規模の組織「NCASEF」(The National Coalition of Associations of 7-Eleven Franchisees)の歴史は古く、日本に1号店ができた2年後の1973年に発足、活動を続けてきた。日本のセブンをめぐる諸問題も機関誌で毎号のように取り上げ、日本のオーナー側に理解を示す立場を取っている。

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 米国セブンの前身は1927年、氷の販売を営んでいた。食料品や食器も扱ってくれたら助かるという顧客の要望に応じ、柔軟に品揃えと事業を拡大してきた経緯がある。先述の通り、24時間営業への移行も時代の変化を捉えたもので、セブンの強みの一つはそうした柔軟姿勢とも言える。

 今、時代が求めているものは、果たして「24/7」か「時間短縮」か、あるいはそれ以外か。

 買い物をする側の意識も問われる中、最適解の模索が続く。

(ツイッター以外の写真は筆者撮影)

記者

執筆テーマはAI・ICT、5G-6G(7G & beyond)、移民・外国人、エネルギー。 未来を探究する学問"未来学"(Futures Studies)の国際NGO世界未来学連盟(WFSF)日本支部創設、現在電気通信大学大学院情報理工学研究科で2050年以降の世界について研究。東京外国語大学ペルシア語学科卒、元共同通信記者。 主著『生成AIの常識』(ソシム)、『エネルギー業界大研究』、『電子部品業界大研究』、『AI・5G・IC業界大研究』(産学社)、訳書『Futures Thinking Playbook』。新潟出身。ryuta373rm[at]yahoo.co.jp

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