被災地の取材カメラは1台でいい?アベプラ小松靖アナが本音で語る「災害とメディア報道」

北海道地震現地生中継の小松靖アナ(Abema Primeより)

「被災地に取材のカメラがたくさんあるのはどうなんだ。1台でいいのではないかとすら思う」と語ったのは、ネット番組・AbemaPrimeで司会を務めてきたテレビ朝日の小松靖アナウンサー。北海道地震(北海道胆振東部地震)の現地リポートで、小松アナは既存のマスメディアには難しい「メディアとしての自己批判」をしながら、ネット動画放送の限界すらも本音で語った。

北海道地震の現地生放送で本音を語る小松靖アナウンサー

Abema Prime(アベマプライム、通称アベプラ)は、ネット動画サービス・AbemaTVで平日21時から毎日2時間の生放送をしている旗艦報道番組。9月6日に起きた北海道地震(北海道胆振東部地震)ではAbemaPrimeは当日に現地から生放送をし、さらに翌7日にはMCの小松靖アナウンサーが現地に入った。

北海道地震翌日に現地で取材する小松アナ(AbemaPrime)
北海道地震翌日に現地で取材する小松アナ(AbemaPrime)

小松アナはAbema Primeの司会を、2016年4月のスタートから務めてきたテレビ朝日のアナウンサーだ。本音を語る司会者として定評がある小松アナだが、北海道地震での現地生放送でもかなり思い切った発言をしている(筆者はこの番組のスタジオ側で話を聞いていた。出演者という立場ではあるが、できるだけ客観的に小松アナの発言を受け止めて書いているつもりではある)。

○録画URL:札幌出身・小松靖アナが被災した故郷を緊急取材! (18/09/07):AbemaPrime

停電とスマホの電波がない状況ではネット動画放送は無力

地震翌日の9月7日、札幌出身である小松アナは一日現地取材をした上で、21時からの生放送に中継出演をした。まだ北海道の半分以上で停電が続いている状態での札幌街頭リポートで、小松アナは自分たちネット動画放送が無力であることを語る。

札幌街頭からの生中継(AbemaPrime 小松アナ)
札幌街頭からの生中継(AbemaPrime 小松アナ)

「停電ではテレビを見れません。スマホは電池があっても電波がない状態。さらにスマホは電池を節約したいので、せいぜい見られるのはテキスト情報でしょう。自分の手元の電力が一番大事なんですね。」

「AbemaTVは過去の災害報道もいち早く行い、皆さんに徐々に浸透してきたと思ってました。しかし停電という究極の状態では、最後にアクセスするコンテンツになる。」

「電気と電波がなければ動画を見ることができません。自分たち(AbemaTVなどのネット動画生放送)の否定になりますが、これが現実だと実感しました。最短距離で被災地に負担をかけることなく(メディアが)できることは何なのか、それを本気で考える機会をいただいた気がします。」

メディア報道が現地で迷惑をかけないのか?現地報道の意味は?

電気も電波もない状況では、ネット動画は無力だった。その状態で現地取材をすること自体にも小松アナは疑問を自分に投げかける。

すすきので生中継をする小松靖アナウンサー(AbemaPrime)
すすきので生中継をする小松靖アナウンサー(AbemaPrime)

「現地の方に取材していると『取材お疲れ様。頑張って下さい、余震がありますから気をけて』と心配してくださる。大変な思いをされているご自身のことより、私たち取材陣のことを気にかけてくださるのです。」

「そういう言葉をかけさせてしまっていることに、非常に複雑な思いをいだきました。」

「報道が(被災地で)何ができるなんていうものは、もう廃れた概念であると思っています。」

「(被災地には)色んなところに取材のカメラが沢山いる。これって1台でいいんじゃないのかと思ったり。NHKだけとか、ここはテレビ朝日だけとか。(取材メディアが)邪魔になっているのだったら、私たちが飛行機の席を使ってこちらに来ること自体どうなんだと正直思った。」

地震・停電・地すべりが起きた現状、電気や物資がなくて困っている状況をきちんとレポートしながらも、小松アナは自分たちネットメディアの役割と災害での現地報道のあり方も問い直している。

小松アナはアベプラを卒業。地上波のワイドスクランブルへ

災害時はネット動画放送はどうすればいいのか、災害時のメディア現地取材はどこまで許されるのか、この2つの問題は結論は出ていない。しかしメディアの自己批判や災害報道への疑問は、メディアはあまり扱わないタブーでもあった。

小松アナはこのタブーに挑戦し、停電・携帯電話サービス停止でのネット動画メディア、災害現地報道のあり方まで生放送で語っている。もしかしたらメディア内部では嫌われる行為なのかもしれないが、視聴者と被災者の目線に立った発言であることは大きく評価されていいと思う。

災害現地報道への疑問も問いかける小松アナ(AbemaPrime)
災害現地報道への疑問も問いかける小松アナ(AbemaPrime)

この記事だけ見ると、小松アナはタブーにいどむ挑戦的な司会者のように聞こえるかもしれない。しかし小松アナ本人は丁寧にゆっくり喋りかける人で、ケンカ腰では戦わない穏やかな人だ。自分の目線でわかることだけをストレートに語ることで、アベプラやBS朝日の「日曜スクープ」で高い評価を得ている。Twitterで検索するとわかるが、これほど視聴者に愛されているアナウンサーはいないと言ってもいいだろう。

小松アナの姿勢については、アベプラの出演者でもジャーナリストの堀潤さんもまとめられている。

○AbemaTimes:「仕切るだけの人」から「自分の言葉で自分の心情を語る人」に…元"局アナ"堀潤が見たテレ朝・小松靖アナ

小松靖アナウンサーは、9月いっぱいでAbemaPrimeを卒業し、テレビ朝日の昼番組・ワイドスクランブルに移る。ネットだろうがテレビだろうが関係なく、個人の目線かつ本音で話をする司会者として活躍を続けてほしい。