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野菜を先に食べる?それとも三角食べ?健康的なおすすめの食べ順とは

松崎恵理一般社団法人日本栄養検定協会代表理事、博士(栄養学)・料理家
(写真:イメージマート)

健康的な食事と言えば、まずは「何を食べるか?」を考えると思いますが、食事の食べ順を気にされている方も多いと思います。

そこで今回は「健康的な食べ方」という観点で、どのような食べ順がよいのかとその理由についてみてみたいと思います。

■和食の食べ順とは

毎日の食事は、ごはん、おかず、汁物などをすべて揃えて食べ始める場合が多いと思います。目の前に並べられた料理をごはん→おかず→汁物、などのように順番に食べることを三角食べと言います。この食べ方は料理が冷めきらないうちに食べ進めることができますし、食事の最初から終わりまで満遍なく食べることができるというメリットがあります。

また、会席料理のように先付け(前菜)、たんぱく質などの摂取としての刺身や焼き物、最後にごはんものや果物を順番に食べるという食べ方もあります。

最近では、健康的な食べ方としてダイエットを目的としたり、血糖値の急激な上昇を避けるために、野菜を最初に食べる、という方法などもよく聞く方法です。

写真:アフロ

■食べたものは、食べた順番に胃から腸に移動する?

食べたものの多くは、胃に2~3時間溜まって消化され、腸に移動していきます。食品によってその時間は異なり、野菜や果物で30分~2時間位、ごはんなどは2~3時間、肉や魚などは3~4時間、脂質が多いものは5ni時間以上胃に滞留するとされています。

つまり、食事にかける時間が30分程度だった場合、食事が終わった段階では、食べたものは、ほぼすべて胃の中にある状態と考えられます。

食べたごはんや野菜、肉などが胃の中で胃液とともに混ぜられている状態であり、そこから数時間かけて徐々に腸に移動していきます。

健康を気にして野菜から先に食べても胃の中で全部混じってしまうわけで、野菜を先に食べても、ごはんを先に食べても、あまり変わらないように見えます。

写真:日本栄養検定協会
写真:日本栄養検定協会

■実は、肉や魚を先に食べた方がよい理由

私たちのからだの中では、食べ物を摂取すると消化管ホルモン(インクレチン)が分泌されることでインスリンなどの分泌が促進されます。

特に、たんぱく質や脂質を炭水化物より先に摂取すると、この消化管ホルモンの分泌が盛んになることが報告されています。消化管ホルモンの分泌がしっかりされることで、インスリンの分泌が促進されるわけです。また、この消化管ホルモンは、胃の中にあるものを腸に排出するのを遅らせる働きもあります。

これらの働きによって、食後の血糖値の上昇を抑制することが報告されています※。

このため、食後の血糖値の急上昇が気になる方は、炭水化物よりも先にたんぱく質や脂質を食べることがおすすめの食べ方ということになります。

※ Kuwata H, et al: Meal sequence and glucose excursion, gastric emptying and incretin secretion in type 2 diabetes: a randomised, controlled crossover, exploratory trial. Diabetologia. 2016

写真:アフロ

■なぜ、野菜を先に食べると良いとされているのか?

血糖値の急上昇が気になる方はごはんよりも先に肉や魚を食べればよいわけで、野菜を最初に食べる必要はなかったのか?と思われるかもしれませんが、そうではありません。

野菜を先に食べると、食物繊維の働きによって肉や魚に含まれる脂質の吸収を抑制したり、ごはんなどに含まれる糖質の吸収を阻害して穏やかにしてくれます。

実際に野菜を先に食べることで食後の血糖値の上昇が抑えられるというデータも報告されています※。

※ Imai S, et al: Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes. J Clin Biochem Nutr 54.2014

写真:アフロ

■一番おすすめの食べ順は?

このように見てくると、食後の血糖値の上昇が気になる方におすすめの食べ方は、野菜→肉や魚→ごはん、という順番になります。つまり、意外にも会席料理などで出されている食べる順番がおすすめの食べ方ということになります。

とは言え、毎日の食事を会席料理風に食べるのは無理があります。

そこでおすすめしたいのは、具沢山の汁物を最初に食べることです。野菜やきのこ、海藻などその時に合わせて、たっぷりの具材が入った汁物を最初に食べることで食事のはじめに食物繊維と水分をとることができます。

最初に汁物をとることで、食べ過ぎを防ぐこともできます。

野菜→肉や魚→ごはん、という食べ順を守ることで食後の血糖値のコントロールはしやすくなりますが、減量に結び付くとは限りません。全体として食べ過ぎてしまうと肥満につながってしまうからです。

体重のコントロールをしたい方は、食べ順を工夫することで食べ過ぎを防ぎつつ、腹八分を実践することがおすすめの方法と言えるでしょう。

写真:イメージマート

一般社団法人日本栄養検定協会代表理事、博士(栄養学)・料理家

一般社団法人日本栄養検定協会代表理事、博士(栄養学)、料理家。専門は栄養疫学。栄養学の基本をだれでも学べる栄養検定を実施・運営。美味しく、健康的なレシピ作りも行う。日本栄養・食糧学会会員。慶應義塾大学卒業。オートファジーコンソーシアムアカデミア会員、栄養士養成校にて「統計学」の非常勤講師。LE CORDON BLEU(代官山校)料理を首席で卒業しグランディプロム取得。Paris Ecole Ritz Escoffier 短期クラス修了。毎週月曜日気軽に読める無料メルマガ配信中!https://system.faymermail.com/forms/7515

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