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なでしこジャパン、日韓戦でグループステージ1位通過決定!次の相手はタイ

松原渓スポーツジャーナリスト
植木理子のゴールで韓国と引き分けた(写真提供:AFC)

 AFC女子アジアカップ第3戦は、3年ぶりの韓国戦となった。

 結果は1-1のドロー。なでしこジャパンはグループ1位でノックアウトステージに進出した。望んだ結果を手に入れたものの……内容は厳しいものだった。

 ピッチ上で日本の選手たちの歓喜の輪ができたのは、試合開始からわずか30秒後のことだ。DF三宅史織が韓国陣内に入れたロングボールに対し、相手DFの反応が遅れた。そのボールをFW植木理子が猛烈な勢いで持ち去り、2タッチで一気にペナルティエリア内に侵入。右足を思い切りよく振り抜き、ゴールを決めた。

 引き分け以上でグループ首位になれる状況で、幸先よくリードした。無理に追加点を奪いに行って失点のリスクを背負う必要はない。ただ、先制点が早かったため、残り時間は十分すぎるほどあった。そこで、日本は韓国の出方を見つつ、隙あらば2点目を狙う姿勢を見せた。

 しかし、韓国は5バックで守りを固めてなかなか攻めてこない。その状況が、試合を難しくした。

 日本がボールを支配するものの、流れは停滞。ボールホルダーに対して後ろの選手たちが追い越す動きが見られなかったのは、カウンターを受けるリスクを考慮した面も大きいだろう。ただ、攻撃に厚みは生まれず、相手陣内で跳ね返されるもどかしい展開が続いた。

拮抗した展開が続いた
拮抗した展開が続いた写真:ロイター/アフロ

 そして、歯車は時間と共に狂っていった。前半は日本の守備が機能していたためピンチはほとんどなかったが、後半は攻勢を強めた韓国が盛り返す。

 センターバックとしてチームを統率するDF熊谷紗希は、「自分たちがボールを持った時にタメを作れず、一人ひとりの(ボールを受けるための)準備が遅かった」と振り返る。

 ボランチのMF長野風花も同じポイントを課題に挙げた。

「前半と違って韓国がプレッシャーをかけてきた中、自分たちの足が止まってしまって、ボールを持った人に対してのサポートで正しいポジションに立てていなかったのが原因だと思います」

 攻守が噛み合わない日本の隙を、韓国は見逃さなかった。

 85分、相手の右コーナーキックの場面。飛び出したGK山下杏也加が味方と接触してクリアできず、日本のゴール前は両軍が押しつ押されつの大混戦に。その中で、最後はFWソ・ジヨンに押し込まれた。失点はいくつかのミスが重なって起きるといわれるが、日本はこのコーナーキックの直前に交代選手が入った際に、セットプレーのマークにズレが生まれていたことを、試合後に複数の選手が明かしている。

 また、失点後のゲーム運びにもリスクが潜んでいた。

 アディショナルタイムを含めて、残り時間は10分弱。最後の数分間はリスクを背負わずにボールを回して時間を進めるのかと思いきや、その意思は徹底されておらず、最後までハラハラした展開が続いた。

 熊谷は、「90分以降は高い位置でボールをキープして欲しいと思っていたし、入ってくる選手やベンチも含め、そこは全員で意図を合わせていかなければいけないと思うシーンでもありました」と吐露した。

 監督や、ピッチを仕切る選手が確認しなかったのだろうか。

 セットプレーも含めて、この試合で見られた課題をノックアウトステージに持ち越さないようにしてほしい。

 30日に行われる準々決勝では、タイと対戦する。世界ランクは日本の13位に対して38位で、力の差はあるだろう。

 ただし、タイを率いるのは元U-20代表コーチの岡本三代監督。池田監督とともに2018年のU-20W杯を制した実力派の女性指導者で、当時の教え子が9人。国内リーグでの指導も豊富で、U-19代表では、MF猶本光らもともにW杯予選を戦った経験も。徹底した日本対策を取って来るだろう。

 この試合に勝てば、来年のW杯出場権を獲得できる。だが、なでしこジャパンの目標は優勝だ。決勝まで進めば、現時点でアジア最強とされるオーストラリアとの対戦は避けて通れないだろう。だからこそ、タイとの試合は結果と同じぐらい、細部にこだわった試合を見せてほしい。

 山下は、「これまでの3チームよりは(守りを固めずに)プレッシャーをかけに来ると思うので、それをどうはがしていくのか、頭を使ってポセッションしないと難しい試合になると思います」と、表情を引き締めた。オーストラリアの手強さを知っているだけに、危機感は人一倍強い。

 また、ここまで全試合に出場しているMF宮澤ひなたは、「ゴール前の崩しや3人目の動きがまだまだ足りないと感じます。コミュニケーションを取りながら合わせて、個人で仕掛けて足を振るところはより意識したいです」と、得点への意欲をみなぎらせていた。

 なでしこはグループステージ3試合からの修正力を発揮し、次のステージへの確かな自信を掴むことができるだろうか。

 タイ戦は日本時間の1月30日、17時キックオフ。

試合後は互いを労った(写真提供:AFC)
試合後は互いを労った(写真提供:AFC)

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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