東京五輪の女子サッカーは、7月30日に各地で準々決勝が行われる。

 E組を3位で勝ち上がったなでしこジャパンは、G組1位のスウェーデンと、準決勝進出をかけて激突する。会場は埼玉スタジアム2002で、試合は19時キックオフとなる。

 茨城カシマスタジアムでは、イギリス(E組1位)がオーストラリア(G組3位)と(18時キックオフ)、横浜国際総合競技場では、オランダ(F組1位)がアメリカ(G組2位)と対戦(20時キックオフ)。宮城スタジアムでは、カナダ(E組2位)が、ブラジル(F組2位)と対戦(17時キックオフ)する。

 スウェーデンは、グループステージではアメリカに3-0、オーストラリアに4-2、ニュージーランドに2-0で勝利。全チームで唯一、3連勝で決勝トーナメント進出を決めた。2015年のカナダW杯と19年のフランスW杯を連覇し、44戦無敗の記録を更新していた世界女王のアメリカを3-0で破ったことは、大きな衝撃を持って受け止められた。現段階で、優勝候補の筆頭だ。

 スウェーデンはFIFAランキングでは不動の上位国で、最新のランキングでは5位(日本は10位)となっている。前回、2016年のリオデジャネイロ五輪では銀メダルを獲得。17年からペテル・ゲルハルドション監督が率いており、19年W杯では3位だった。

 日本は、直近では16年7月に欧州遠征を行った際にスウェーデンのグルトフォーゲン・アレーナで対戦し、0-3で敗れている。現地で見たその試合はよく覚えている。ボール保持率はほぼ互角で、シュート数も同じ(7本)だったが、終盤、一瞬の隙を突かれたところから、17分間で3失点と崩れた。

 今大会でスウェーデンを取材する記者に話を聞いたところ、「17年当時と比べてスウェーデンはさらに攻撃的なチームになっていて、金メダル獲得に自信を持っている。カウンターだけでなく、3バックと4バックを使い分けて戦術的にもレベルアップしている」という。選手たちは欧州各国のトップリーグでプレーして自信をつけているようだ。

 ピッチを広く使ったダイナミックな展開が多く、空中戦に強い。今大会のグループステージで決めた9得点は、クロスとセットプレーからのゴールがほとんどだった。シンプルなロングボールやクロスを放り込んで、スピードと決定力があるFWを生かす戦略は、日本に対しても徹底してくるだろう。

 今大会のスウェーデンの平均身長は171.1cmで、日本は163.6cm。日本もセンターバックの3人は、DF熊谷紗希(173cm)、DF南萌華(172cm)、DF宝田沙織(170cm)と高さのある選手たちがいるが、空中戦で90分間跳ね返し続けるのはきついだろう。熊谷は、「自分たちディフェンス陣が耐えなければいけない時間が多くなるかもしれない」と覚悟しつつ、クロスの出どころを抑えることを強調。相手のキーマンとして、レアル・マドリードでプレーするMFコソヴァレ・アスラニを挙げた。五輪は3大会目となる経験豊富な選手だ。

「自分たちが攻めている時にトップ下の9番(アスラニ)は必ず抑えなければいけないと思っています。リスクマネジメントしながら相手の攻撃の目を潰す。サイドで勝負になった時の中の対応は、ずっとやってきたことなので。そこを確認しながら対応したいと思います」

コソヴァレ・アスラニ
コソヴァレ・アスラニ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 他にも、W杯4大会に出場しており、五輪も4大会目となるMFカロリネ・シガーや、レアルからバイエルン・ミュンヘンに移籍したFWソフィア・ヤコブソンなども経験値が高く、軸となる。

 失点しないことはもちろんだが、勝つためには得点が必要になる。同じ土俵で戦っても勝てないので、日本にとって有利な状況に相手を引き込みたいところ。

 MF長谷川唯は、「試合を見ると、日本とフォーメーションが似ているところもあって、ボールの動かし方や空いてくるところが(これまでとは)変わると思います。試合の中でどこが空いているかを見つけて、それを(臨機応変に)使っていくのが自分の良さでもあるので、そこを見極めていい試合運びをしたいと思います」と、勝利に向かうイメージを語った。

 スウェーデンは、18歳から38歳までと年齢層が幅広く、平均年齢は27.6歳(日本は24.6歳)。国内のスウェーデン1部リーグ(ダームアルスヴェンスカン)所属選手が9名で、他にはスペイン(3人)、イングランド(4人)、ドイツ(3人)、フランス(1人)、イタリア(1人)、アメリカ(1人)と、分散しており、バルセロナやレアル・マドリード、チェルシー、パリ・サンジェルマン、ユベントスなどのビッグクラブ所属の選手を多数擁している。日本の選手でもスウェーデンでプレーしている選手がいる。MF林穂之香が今年から1部のAIKフットボールでプレーしており、FW籾木結花は、アメリカのOLレインから、五輪後に同じく1部のリンシェーピングにレンタル移籍が決まっている。

 AIKフットボールの中盤で存在感を増している林は、大柄な相手とマッチアップした際の心掛けについて、「予測の部分と、コンタクトするときは、遠慮なく思いっきりぶつかって、『絶対にとってやる』という思いで戦っています」と語る。今大会は当初、バックアップメンバーとして選出されていたが、イギリス戦とチリ戦の2試合に先発して存在感を放った。スウェーデン戦で、さらなる活躍が期待されている。

 コンディション面ではスウェーデンに分がある。27日に行われた3試合目のニュージーランド戦は主力を温存していた。アメリカ戦で2得点したFWスティナ・ブラックステニウス、オーストラリア戦で2得点した178cmの長身FWフリドリナ・ロルフォ、ヤコブソンやベテランGKのヘドヴィグ・リンダールらが3試合目ではベンチ入りさえしておらず、フレッシュな状態で日本戦に出てくることが濃厚だ。また、今大会は交代枠が「5」となっており、スウェーデンは3試合とも5枠をすべて使い切った。

 日本は守備の軸となる熊谷とDF清水梨紗が、ここまで3試合にフル出場、攻撃の核であるFW岩渕真奈も、2試合にフル出場している。常にリードを奪いながらゲームを進めてきたスウェーデンに対し、日本は1点を追う展開が多かったため、その意味でも消耗しているだろう。清水は、グループステージ最終戦のチリ戦後に、「中2日で3試合出るのは初めての経験で、コンディションの部分は一番難しく感じるところです」と明かしていた。中2日で、少しでも回復できていることを祈りたい。

 この試合で負ければ日本の戦いは終わる。だが、勝てば準決勝、決勝(あるいは3位決定戦)まで戦うことができる。最大6試合を戦うことを目指してきた日本にとって、ここが正念場だ。

 何が勝敗を分けることになるかわからないが、最終的に、優勝国以外の11チームは敗者となる。だからこそ、敗れるにしても“負け方”は重要だ。日本中のサッカー少女たちが、テレビを食い入るように見つめているだろう。最後まで勝利を諦めず、気持ちのこもった戦いを見せてほしい。

なでしこジャパン
なでしこジャパン写真:ロイター/アフロ