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なでしこジャパン入りへ、24名が積極アピール。「チャレンジキャンプ」の狙いとは?

松原渓スポーツジャーナリスト
国内組から24名が選出され、3日間合宿を行った(写真:keimatsubara)

 12月7日から9日まで、JFA夢フィールド(千葉県千葉市)で、「なでしこチャレンジトレーニングキャンプ」が行われた。 

「なでしこチャレンジ」は、代表入りを目指す実力のある選手たちを発掘・育成・強化するプロジェクトで、なでしこジャパン(A代表)予備軍にあたる。今回は24名が参加。A代表と共通のトレーニング内容をこなし、代表チームのコンセプトの落とし込みも行われた。

なでしこジャパン入りへの登竜門。選手の発掘、育成、強化を担う「チャレンジキャンプ」に挑んだ挑戦者たち

 合宿時に高倉麻子監督と選手たちに話を聞いた。

(※)取材はすべてオンライン会議ツール「Zoom」で行いました。

監督・選手コメント

高倉麻子監督(中央)
高倉麻子監督(中央)

高倉麻子監督

ーー今回のなでしこチャレンジキャンプを終えて、どのような手応えを感じていますか?

なかなか長い時間は取れない中でも、選手たちがなでしこのラージグループであることを伝えました。なでしこがどういうサッカーをやっているかを共有して、日本のサッカーをするための質の向上に何が必要かを伝える中で、みんな前向きに取り組んでくれたと思います。シーズンが終わって皇后杯を戦うタイトな日程の中で送り出してくれたチームに感謝していますし、選手たちは集中してファイトしてくれました。五輪に向かって自分の夢を追いかけて欲しいですが、もちろんそれだけがすべてではないので、サッカー選手として未来に向かって成長していくために必要な何かを、この合宿で感じ取ってくれればいいなと思っています。

ーーリーグ1部と2部から幅広く選手を招集されましたが、選出された基準を具体的に伺えますか。

リーグを幅広く見る中で、いろんな個性を拾いたいと思っています。DFならDF、FWならFWとしての特別な能力や、ちょっと人と違う良さがある選手は、やはり見てみたいと思います。また、(代表で)刺激を与えたり、違う環境でプレーしてきっかけを掴んで大きく伸びていくことがありますから、攻守ともにトータルな能力の伸びしろと、「光ったもの(特徴)を持った選手」という2つの側面から呼びました。

ーー来年の五輪に向けて、秋の2回の合宿と今回のチャレンジで呼ばれたメンバーが、五輪に向けた大枠と考えて良いのでしょうか。

国内外問わず、自分のイメージに入る選手はおおよそ2回のキャンプと今回で呼んでいます。多少ケガ人がいますが、その辺も計算しながら、五輪に向けた(ラージグループの選手の)登録を、年末年始で詰めていく作業をやっていきます。

ーーチャレンジキャンプの目的として、東京五輪に向けて可能性のある選手を探すこともあると思いますが、その後につなぎたいという想いもあるのでしょうか。

私自身の今の役割はなでしこジャパンを勝たせることですし、五輪でのメダル獲得への強い思いはあります。ただ、自分自身が指導者として育成から女子サッカーに関わってきた中で、長い目で見た時に全体的な育成の底上げは絶対に外してはいけないものだと思います。各カテゴリー(年代別代表)の活動から代表に繋げていくかという部分は、私がなでしこの監督になった時に苦労した部分でもあったので、そこを繋いでおけば、なでしこジャパンが形を変える時代が来ても、割とスムーズに世代交代できるのではないかという思いがあります。誰の(どの監督の)サッカー、ということではなく、日本らしいサッカーを共有しながら日本が世界のトップレベルにい続けられるように、世代を超えてレベルアップしていきたいと考えて、この活動を継続しています。

守屋都弥(中央)
守屋都弥(中央)

DF 守屋都弥(INAC神戸レオネッサ)

ーー代表関連の招集はU-20代表以来だと思いますが、今回、どのようなことをテーマとして取り組んだのでしょうか。

自分に求められているものを考えたときに、1対1の強さや、守備だけではなく攻撃にも積極的に行けるところだと思っているので、そこを意識して取り組んでいます。チームでもやっているビルドアップや、前線へのボールの配給を見せていきたいです。

ーーケガから約1年ぶりに復帰して、今季はINACでフル出場でプレーしましたが、シーズンを通して成長した実感を得た部分を教えてください。

INACでは試合の途中で3バックや4バック、5バックとポジション変化をするので、その中で対応力はついたかなと思っています。相手がサイドに来た時の1対1の間合いや寄せが甘いなと思っているので、そこは課題として、高めているところです。

ーーU-20の時はサイドバックもやっていました。代表ではどのようなポイントをアピールしたいですか。

U-20の時はサイドバックとサイドハーフもやらせていただきましたが、センターバックもサイドバックもでき、サイドハーフもできるという気持ちがあります。どこに置かれたとしても100%で準備したいと思っています。

ーーなでしこチャレンジはA代表へのセレクションの意味合いもあると思いますが、どのように捉えていますか。

「なでしこで代表とチャレンジは一個のチーム」と監督からも話があったので、そこは自分たちにも可能性があると思っていますし、上に行けるように食らいつきたいと思っています。まずは、「代表でこういうことが自分はできる」という持ち味を発揮できないと上には上がれないと思いますし、そこに、代表でやっていることをプラスアルファでやっていかなければと思っています。東京五輪が1年延期されたことでチャンスがきたと思っているので、自分の持ち味を出して、必ずなでしこジャパンにいきたいなと思っています。

南野亜里沙(左)、児野楓香
南野亜里沙(左)、児野楓香

FW 南野亜里沙(ノジマステラ神奈川相模原)

ーー今回、選出された感想と、どのような点が評価されたと感じていますか。

今季、チームがリーグ戦を8位で終わって、個人としても7得点しか取れていないので、選んでいただいてびっくりしました。チームではサイドやトップ下、FWなどいろいろなポジションでプレーして、今季は裏への飛び出しを意識してきました。世界で戦う上でも、なでしこジャパンもやっているところなので、そこが評価されたのかなと感じています。

ーー3日間の合宿で取り組んだテーマと手応えを教えてください。

なでしこチャレンジに選んでいただいたのは3回目で、前回から2年ぐらいあいてもう一度チャンスをいただき、しっかり自分のプレーを発揮しようと思いました。裏への飛び出しも狙っていましたし、(相手と相手の間の)スポットでボールを受けることを意識して試合に臨みました。

ーーどのようなことが刺激になりましたか?

一つひとつのプレーへのこだわりや、対人での強度を練習から出していかないといけないなと改めて感じました。頭を使うトレーニングが多く、もっと周りを見て頭を使いながら自分のプレーを出すことができたらなと思います。これまでは後ろ向きでボールを受けていたところでしっかりターンするために、前を向く体の向きは、今回の合宿で学びました。

ーー紅白戦は中盤でもプレーしていました。これまでのチャレンジキャンプはFWでプレーすることが多かったですが、ポジションについてはいかがですか。

FWで起用されると思っていたのですが、ボランチでもプレーする機会があったので、しっかりゲームを作ることを意識しながら、チャンスがあれば得点を狙いました。ユーティリティプレーヤーは重宝されると思うので目指したいですし、その上で、FWのポジションでもアピールしたいです。

長野風花(右)
長野風花(右)

MF 長野風花(ちふれASエルフェン埼玉)

ーー3日間の短い合宿でしたが、どのような収穫がありましたか。

久しぶりにチャレンジの合宿に参加して、ゲームをコントロールしながら、積極的に攻撃に絡むことを意識して取り組みました。3日間の合宿を通して、チームでのレベルの差を感じ、守備の強度をもっと上げる必要があると強く感じました。

ーーチームではボランチのポジションでゲームをコントロールすることが多いと思いますが、今回、紅白戦の手応えはいかがでしたか。

(ゲームでは)勢いのある選手が多くて、前に前にという部分も多く、急ぐ必要がない場面もありました。うまくいった部分もありましたが、そこはもっと声をかけてコントロールできたらよかったです。1対1でボールを取り切ることや、全体的なプレースピードを上げることは課題です。

ーーボールポゼッションのトレーニングも多かったと思いますが、以前、代表合宿に参加した時と今回と比べて手応えは感じられましたか。

いろんなポゼッションをする上でのルールとかがある中で、もっと周りを見てシンプルにプレーできれば良かったかなという思いもあります。良いテンポでボールに関わりながら攻撃を組み立てていくのが自分の良さなので、そこはもっと前面に出していきたいですね。

ーー来年の五輪への思いを教えてください。

東京で五輪が1年延期されたことは、私にとって成長する期間と活躍するチャンスが与えられたと思うので、このチャンスを自分がどう掴み取れるかだと思います。毎日の練習でサッカーを楽しみながら日々成長できていると思いますし、レベルを高く保ちながら、さらに成長していけるように頑張りたいと思います。 

浜野まいか
浜野まいか

FW 浜野まいか(セレッソ大阪堺レディース)

ーー今回最年少(16歳)で選出されました。チャレンジキャンプに参加した感想を教えてください。

選ばれたことにびっくりしました。プレーの一つひとつが終わるごとにみんなでしっかりと改善点とかを話し合っている場面は、チームと比べて多いと感じます。(紅白戦では)相手も味方も両方、技術が高くて楽しくプレーできています。

ーー個人的にはどのようなことをテーマに臨んでいますか?

FWとしてゴールを決めたいですが、それだけでなく、ゴールに向かう強いアクションを見せていけたらいいなと思っています。

ーー憧れの選手、目標とする選手はいますか。

男子では(リオネル・)メッシさんです。プレーを楽しんでいて、見る人を魅了する選手だと思います。(なでしこの選手では)岩渕真奈選手のプレーを参考にしています。

ーー将来に向けてはどのようなイメージを描いていますか?

頑張って、東京五輪のメンバーに選ばれたいなと思っています。日本で行われるので、家族が見に来られますし、1年前ぐらいから目指したいと思うようになりました。

※文中の写真はすべて筆者撮影

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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