W杯女王アメリカ相手に2-2ドローのなでしこジャパン。粘り強い戦いで得た自信と課題

シービリーブスカップ初戦でアメリカに引き分けた日本(写真:ロイター/アフロ)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【2度追いついてのドロー】

 アメリカで開催中のシービリーブスカップに参戦しているなでしこジャパンは現地時間2月27日、開幕戦で世界ランク1位のアメリカと対戦し、MF中島依美とFW籾木結花のゴールで2-2で引き分けた。

 2度のリードを許しながら粘り強く追いつき、開催国で前回W杯女王のアメリカから勝ち点「1」を得たことは自信になる。

 W杯本番まで残り3ヶ月と迫った中で、アメリカはチームの仕上げ段階に入っているようだった。

 前線には過去の日本戦でもおなじみのFWメーガン・ラピノー、FWトビン・ヒース、FWアレックス・モーガンら、W杯のタイトルホルダーが並んだ。

 一方、高倉麻子監督はGKに山根恵里奈、最終ラインにDF熊谷紗希、DF鮫島彩、DF有吉佐織、DF清水梨紗と経験のある5人を起用。その上で、2トップの一角にはFW小林里歌子、ボランチにMF松原有沙と、ともに国際Aマッチ出場経験のない2人を抜擢。同じく、昨年のオーストラリア戦で後半20分の出場にとどまっていたMF杉田妃和を松原とのダブルボランチで起用した。

 

 これまでにも立ち上がりのアメリカの猛攻には苦しめられてきた日本だが、その時間帯をなんとか耐えた矢先の23分、日本の左サイドをヒースに突破され、クロスをラピノーに押し込まれて0-1。

 アメリカは4-3-3(アメリカ)と4-4-2(日本)のミスマッチで生じた、日本のダブルボランチの背後のスペースを積極的に狙い、ゴールに繋げた。経験に裏打ちされたしたたかさだった。

 だが、それ以上の失点をせずに持ち堪えられたのは、早い段階で修正したからだ。

「選手の修正力が高く、後半は守備が安定しました」(高倉監督)

 即席に近い連係の中で、試合中に生じる穴を11人で共有し修正する力はチームが成長している部分だ。一方、アメリカのような強豪国にW杯で勝つためにはさらに早い時間での修正が求められる。

 個の対応でピンチを食い止めた場面もあった。

 この試合では最終ラインの熊谷と鮫島が対人の強さを見せた。2人がセンターバックを組むのは昨年11月のノルウェー戦以来2度目だが、熊谷の球際の強さと、鮫島のスピードを生かしたカバーリングが、モーガンとヒースの脅威を小さくしていた。

 また、右サイドでは清水がラピノーの多彩な駆け引きに粘り強く対応。スピードと運動量で上回り、時間とともにラピノーの脅威を薄れさせていった。

【強みを示した後半】

 後半、アメリカの運動量が落ち、日本がボールを持つ時間帯が長くなると、2列目の中島、MF長谷川唯、ボランチの杉田の3人が持ち前のテクニックとアイデアを発揮。トップから2列目に下りてゲームメイクに関わるFW横山久美のキープ力も生かし、少ないタッチで相手を剥がすプレーが増えた。

「落ちた(ディンフェスラインと中盤の間で受けようとする日本の)選手に対して、相手のディフェンスラインがあまりガツンと来なかったので、そこで前を向けるとリズムが生まれて一気に状況が変わりそうな印象がありました」(長谷川)

 長谷川は後半、アメリカの守備に綻びが出始めたのを感じていた。そして67分、長谷川がペナルティエリア左手前から上げたクロスを、右サイドの中島がダイレクトでゴール前の横山に折り返す。これはブロックされたが、こぼれ球を中島が自ら左足で叩き込み同点。

 59分には、ともに代表戦デビューのDF大賀理紗子とFW池尻茉由が交代でピッチに立った。

 しかし、追加点を狙うアメリカは76分、交代でFWクリステン・プレスを入れると、その直後にプレスが右サイドを突破。最後は“日本キラー”モーガンに決められて再び1点を追う形に。

 日本は80分に籾木が交代で入り、82分には代表戦デビューのFW遠藤純が投入されると、再び流れを引き寄せる。

 アディショナルタイム1分。左サイドで鮫島から池尻、遠藤、長谷川とワンタッチでつなぎ、長谷川のパスを籾木が決めて2-2。前線の4人でアメリカの選手7人を翻弄するという、なんとも痛快なゴールだった。

「自分たちの細かいパスに相手がついていけていないと感じていたし、短いパスが3本繋がって抜け出せた得点シーンは日本の強みだと思います」(籾木)

 籾木もまた冷静に、ベンチからアメリカの急所を探っていた。

 

 結果的に、日本はこの試合で5名がA代表初出場となった。

「この選手はベンチ、という選手はいません。選手がグラウンドに出たら思い切ってプレーできるように、いつも全員がグラウンドに立っているつもり(イメージ)で戦っていきたいと思います」

 高倉監督はそう話し、最後に「本当に勝ちたかったです」と付け加えた。

 このアメリカ戦は、2016年の高倉ジャパン発足から数えて38試合目の試合だったが、ポジションや組み合わせ、システムが同じだった試合は1試合もない。今大会の残り2試合もきっと、予想はあっけなく裏切られるだろう。

【チャレンジの中で得た自信】

 アメリカ戦は多くの新戦力がピッチに立ったが、中でも大きなインパクトを残したのが初先発でフル出場した杉田だ。早い段階で相手の間合いを知り、時間とともにタッチ数やパススピードが変化し、プレーの柔軟性が増していったように見えた。ワンタッチや足裏ターンなど、もともと攻撃の引き出しが多い杉田だが、この試合では全体的にポジショニングを修正した後半、周囲との距離感がよくなったことで、その能力が引き出されていた。

「判断を早くしないと相手が飛び込んでくるので、それが緊張感につながりました。選手同士の距離感が良かったので、逃げ道の選択肢が多く、おかげでワンタッチで剥がせるところもありました」(杉田)

 杉田もまた、A代表に定着している籾木や長谷川、清水と同じように、年代別代表で確かな実績を残してきた。同年代のライバルが多く、ここまで来るのに時間はかかったが、今回はアピールの手応えも得たようだ。昨年8月のアメリカ遠征に初招集された時は追加招集で、アメリカ戦(●2-4)はベンチから見届けていただけに、この試合後の表情は生き生きしていた。

「前回アメリカに来た時よりも、今回はすごくいい経験値を得られました。自分の中で“基準”を持てるようになったので、それを次の試合でも生かしたいと思います」

 試合後に驚いたことは、「アメリカは強くて速かったけれど、想像していた以上にやれると思った」。代表で初出場した選手たちが、そう声を揃えていたことだ。それは、チャレンジを恐れなかったからこそ得られた収穫だろう。

 昨年、ラピノーとの1対1で消極的になってしまったことから、今年はチャレンジすると決めていた清水は互角以上の戦いを見せ、アメリカとの対戦経験で手応えをつかんでいた中島と籾木は初ゴールを決めた。2ゴールに絡んだ長谷川は、アメリカに勝つ方法を具体的に思い描いてきた成果を示した。

「アメリカと対戦する時は、いつも、ボールを回せる感覚があります。カウンターやロングボールに対してスピードでやられなければもっといい試合ができると思っていました。今回は引き分けですけど、今までよりいい結果が出たことが自信になりました」

 

 このアメリカ戦で得た自信と課題が、ブラジル戦、イングランド戦でどう反映されるのか楽しみだ。

 日本は次戦、日本時間3月3日午前4時からブラジル女子代表と対戦する。試合はBSフジで生中継される。