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女子W杯まで7ヶ月。新戦力を加えたなでしこジャパンが古豪・ノルウェーに挑む(監督・選手コメント)

松原渓スポーツジャーナリスト
鳥取県内で合宿を行ったなでしこジャパン(写真:Kei Matsubara)

 11月11日にノルウェー女子代表との親善試合を行うなでしこジャパンが、6日から鳥取県内で合宿を行っている。

 来年6月にフランスで開催される女子W杯に向けてチーム作りが本格化する中、高倉麻子監督は今回の親善試合に総勢28名のメンバーを選出。4月のアジアカップと8月のアジア競技大会でアジア2冠を制した国内組に加え、海外組はキャプテンのDF熊谷紗希、MF宇津木瑠美、MF川澄奈穂美、MF猶本光らが選ばれ、20歳以下のメンバーからは、今年候補合宿に参加したMF長野風花とFW宮澤ひなたに加え、DF南萌華とFW遠藤純が初選出された。

 ノルウェーは、1995年の女子W杯と2000年のオリンピックで優勝経験を持つ古豪だ。W杯の欧州予選では8大会連続8回目のW杯出場を決めており、今回は若手中心のチームで来日。

 マーティン・ショーグレン監督は「今まで(日本との試合では)引いてカウンターを狙うことが多かったが、もう少し攻撃的にいきたいと考えている」と、チャレンジしながら勝利を目指す狙いを明かした。昨年3月のアルガルベカップでは、日本がFW横山久美の2ゴールで勝利している。

ノルウェー女子代表(写真:Kei Matsubara)
ノルウェー女子代表(写真:Kei Matsubara)

 ノルウェーに対し、日本はアジア王者の意地を見せることができるか。新戦力の活躍も含め、見どころの多い一戦となる。試合は、鳥取市営サッカー場バードスタジアムで11月11日(日)14:00キックオフ。テレビ朝日系列にて全国生中継される。

 前日(10日)に行われた高倉監督の公式会見と、試合前の選手コメント(一部割愛)を掲載する。

監督・選手コメント

高倉麻子監督(公式会見)

ーー今年はアジアの大きな大会を2つ戦いましたが、世界との戦いに向けて、ノルウェー戦でどのような収穫を得たいと考えていますか?

チームが立ち上がってから約2年半経ちましたが、今年4月のW杯予選を一つのターゲットとしてチームを作る中で、うまくいかないことの連続で、選手ももがいていたと思います。その中で今年、アジアカップを獲れて、その後のアジア大会も、メンバーが少し変わった中で結果を出せたことはチームにとって非常に自信になりました。反面、内容を見るともの足りないところも多く、「このままではまだ世界とは戦えない」という危機感を全員が持てたことが大きな収穫でしたし、アジア(特有)の難しさがある中で優勝できたことを自信に繋げよう、と話しました。また、世界で戦っていく中での(W杯の)戦い方は(アジアとは)違うところもあるので、そういう中で強度と精度を上げていくこと、皆が一つになって戦っていくことを積み上げている段階です。合宿の中で変化を見ながら調整して、どの選手がどういう形で変化を加えるのか、チームが変化していくのか楽しみにしていますし、未知数で無限大の可能性が広がっていると思います。

ーーW杯、オリンピックに向けて、世界と戦うために必要な要素はどのようなポイントですか?

(世界で戦う上で日本には)フィジカル的な要素でマイナスがあると捉えてトレーニングしてきましたが、キーになるのは予測のスピードとプレーの正確性だと思います。ゲームの中で何が起きていて、自分のポジションに何を求められているかを判断して、予測のスピードを上げていくことがキーになってくると思います。

ーー今回、U-20で世界一を取ったメンバーが4人入っていますが、どのぐらいチームに馴染んでいますか?また、試合で彼女たちにはどんなことを期待したいですか。

今回新しく選んだ4人は不思議なぐらい馴染んでいます。前からいたような雰囲気で、チームに違和感なく入っています。日本が進むべき道について、U-20の池田監督やその下の世代の指導者ともよく話をするので、(年代別代表から)違和感なく上(なでしこジャパン)に上がってこられる状態になっていますし、今後もスタイルは大きく変わらず、選手が育つ道筋はうまくついていると思います。精度と強度を上げていければ、これからも若い選手はたくさん出てくると思いますし、(U−20の4人も)もう少し馴染んでくれば十分に戦力になっていくことが見えるので。明日はどんな流れになるのか分からないのでなんとも言えませんが、きっといいプレー、希望を持てるプレーをしてくれると思います。思い切って、楽しんでプレーしてもらいたいです。

FW 田中美南(8日)

ーー合宿の手応えはいかがですか?

充実した合宿ができていると思います。チームとしてノルウェーとどう戦うかが大事ですが、(個々の)アピールの場でもあると思うので、そこはブレずにやっていきたいと思います。

ーー今年、国内リーグで得点王とMVPを獲得しました。実感は伴ってきましたか?

実感はわかないですね。お祝いのメールをもらえたり、ニュースなどで知ってもらえたことは嬉しいですが、その分もっとやらなければいけない、という気持ちが大きいです。(試合では)ノルウェー相手に自分がやってきたことがどこまで出せるかを試していきたいし、結果にこだわってやっていきたいです。

ーーストライカーとして、長期的なスパンで取り組んで得た手応えはありますか?

今年は(DFとの)駆け引きや、チームの流れの中で相手のポジショニングを見て自分たちがどこに立つか、どこにボールを入れるかということを考えながらプレーしてきた一年でした。いかにいいポジショニングでいいパスを引き出してワンタッチでゴールできるかということを、違うポジションで試合に出ても意識していきたいです。

もちろんW杯を意識しているし、そこで結果を出したいという思いでやっていますけど、自分が今できることを全力で出すことがアピールになると思っています。

MF 遠藤純(8日)

ーートレーニングの中で、自分のプレーは出せるようになりましたか?

最初はすごく緊張してガクガクだったんですが、(先輩が)話しかけてくれたり、自分からも話す中で、リラックスできるようになって、グラウンド上でも少しずつ慣れてきました。

ーー5対2の練習では遜色ないプレーを見せていましたが、どんなことが刺激になっていますか?

みんな個が強くて、上手です。ディフェンスではパスを回されることが多かったのですが、徐々に慣れて、強度とかスピードにもついていけるようになったし、学ぶことが多くてためになります。相手のプレッシャーがあっても絶対に前を向けるところが(年代別とは)違うと思いました。

ーーレフティーが少ない中で、左足の武器を生かせている実感はありますか?

紅白戦で、相手と駆け引きをしながら左足で(ボールを)持って(ピッチの)中を見た時にフリーの選手がいたんですが、精度が足りなくてパスが繋がらない部分があったので、そこはまだまだです。顔が上がるようになって、前を向いたときは自分でも仕掛けるようにしています。

ーー今後、W杯とオリンピックがありますが、自分の中では2つの大会をどのようにイメージしていますか?

こういう場で結果を出せないと、次はないと思います。今、自分の夢の舞台でプレーできていることを誇りに思っていますし、練習で得るものが多いので、それが自分の武器になるようにいろんな人から学んで、プレーで生かしたり、自信にも繋げていきたいと思います。

MF 三浦成美(8日)

ーー今シーズン、所属チームで試合に出る機会が増えたことで変化したことはありますか?

今シーズンは全てが変わりました。アンカーのポジションは初めてで、正直、最初は自然とうまくいけてしまったというか、なんとなくできている感じがあったんですが、リーグ後期から全然うまくいかなくなって。練習中に受け方がわからなくなったり、ボールを受けることが怖くなった時期がありました。でも、試合に出る中でチームを勝たせなければいけないという葛藤があったし、試合に出ているからこそ感じられたことがありました。

ーーその葛藤をどうやって乗り越えたんですか。

ボールを受ける場面の映像を細かく分けて見たら、受ける前のポジショニングや体の向きが、後期は後ろ向きにいきすぎていた部分があったんです。「ボールを受けなきゃ」という気持ちが強くなりすぎて全体を見られていなかったことに気づいて、整理しました。引き出しが増えたことで、それからは失敗しても理由がわかるようになりました。

ーーなでしこジャパンとベレーザはシステムが違いますが、どのように対応していますか?

選手同士がうまくバランスをとりながら常に良いポジショニングを取れていれば変わらずにできますし、声を掛け合てお互いを見られれば、誰がどこのポジションに入ってもできると思います。

ーーノルウェー戦に出たら、どのような結果を残したいですか。

ゴールにつながるアシストやスルーパスで結果を残したいですね。でも、私はいい内容にするためにボールを捌き続けたり、バランスをとり続けることが大事だと思うので、そういうプレーを見せたいです。

DF 市瀬菜々(9日)

ーー久々になでしこジャパンの合宿に参加してどうですか?

楽しいです。アメリカ遠征とアジアカップは強い相手と対戦できる大事な大会でしたが、ケガで行けなかったのでテレビで見て刺激をもらっていたし、今回はその2か月間、自分ができなかった分をアピールしようという意気込みで来ました。ノルウェー戦に出たいし、自分のプレーをして試合に勝ちたいですね。そのためにも、一つひとつの練習を大切にしています。

ーー28人もの選手が招集された中で、チームの雰囲気はどうですか。

新しい選手も馴染んでいる感じがするし、オフの時間も楽しいです。年下の選手がボトル(の準備)をしてくれるので、すごく有難いですね(笑)。技術的にはみんな上手で差を感じさせないので刺激にもなるし、良い競争ができていると思います。

ーーノルウェー戦でアピールしたいことは?

相手FWの足下に強く行けるのが強みです。裏に蹴られた時に対応できるように、常に頭を動かしてプレーしたいと思います。

ーー所属チームの仙台では残留争いを経験しましたが(結果は8位で残留)、その中で得られたことはありますか?

精神的に鍛えられましたね。点を取られた時に(チームが)シュンとなってしまうことがあって、そういうところで今まではあまり声を出してこなかったけど、自分が声を出さなきゃいけないと思ったので。そういう場面の戦い方を学びましたし、代表でも意識するようにしています。

DF 熊谷紗希(10日)

――今回の合宿の感想を教えてください。

自分自身久しぶりの(代表)合宿でしたが、W杯まで7ヶ月でできることは限られているので。ノルウェーという素晴らしいチームを相手に試合できる機会を大事にしようと思っています。

ーー若い選手が4人入りましたが、チームに変化はありましたか。

そうですね。U-20で世界一になったポテンシャルの高い選手たちが合宿に来て、いい意味で刺激を与えてくれているし、いい色を出してくれています。個人的にはもっともっと自分を出して欲しいと思っています。

ーーW杯に向けて、どんなことを意識していますか。

年内最後の活動で、今回ヨーロッパの枠を勝ち取って出場を決めているノルウェーと試合ができることは大きなことですし、7ヶ月後に世界と戦うのに、ここで戦えなかったらW杯は厳しいと思うので。今できることを一生懸命チャレンジしたいと思います。

ーーノルウェー戦で確認したいことを教えてください。

(チームとして)質を上げなければいけないことがたくさんあるし、まずはチャレンジしたい。そこから出た課題はこれから改善できるので、いい意味で課題を出して、うまくいったことは自信にできるように。自分たちのいい試合をして、内容にこだわって勝ちたいと思います。

FW 岩渕真奈 (10日)

ーー明日の試合に向けて、準備はいかがですか。

試合に向けての準備というよりは、個人が、大きい相手、速い相手にどう対応するかという練習が多かったですね。一人ひとりの頑張りが良い結果につながればいいなと思います。

ーー新しい選手とのコンビネーションの手応えはどうですか?

攻撃的なポジションは特徴のある選手が多く、一緒にプレーしていて楽しい選手が入ってきたので、自分が若い時に生かしてもらっていたように、生かしてあげられたらいいなと思っています。

ーー去年の今頃はE-1で勝てなくて苦しい時期もありましたが、今年、アジアで勝って、チームとしての戦い方は定まってきましたか?

「W杯やオリンピックで優勝したい」と口で言うのは簡単です。(アジアカップやアジア大会で)優勝はしましたけど、内容が伴っていたとは思わないし、誰一人満足できていないので。W杯まであと半年しかないですけど、できる試合を大切にして、全員で戦いたいと思います。

DF 南萌華(10日)

ーー今回初めての代表合宿ですが、実際にプレーしてみて、残っていくために何が必要だと感じましたか?

自分の良いところをさらに伸ばしていくことと、この選手が必要だと思われるぐらいにならないと残れないと思いますし、そういう選手になれるように努力しなければいけないなと感じています。声は出せるようになってきたので、センターバックの役割をしっかりこなしながら、U-20で培ったキャプテンシーを発揮していきたいです。

ーー熊谷選手から学ぶことはどんなことですか。

紗希さんは後ろからの声を誰よりも出しているし、その中でビルドアップの巧さや、前線を動かせる声は勉強になります。ビルドアップでも見ているところが多くて、自分にはないものをたくさん持っているので。一つひとつの紗希さんのプレーをしっかり見るようにしています。

ーーU-20のサッカーと比べて、攻撃面ではどんなことが違いますか?また、ノルウェーの印象も教えてください。

なでしこではGKを含めたビルドアップを求められていて、幅を広く使ってうしろから繋ぐことを求められていますし、ビルドアップはさらに精度を高めなければいけないところです。ノルウェーは個の力がありますし、年代別と比べて全体的にレベルが上がったなということは、映像を見るだけでも感じました。

ーー初招集ですが、U-20の4人がすんなり馴染めている理由は何だと思いますか?

合宿の最初の方に高倉監督から「U-20の4人でいるなよ」と冗談で言われました。みんなが先輩のいいところを盗みながらプレーしようという意識があったと思うし、なでしこリーグで対戦している選手やチームメートがいるので馴染みやすいですね。声をかけてもらったり、自分からも積極的に話しかけるようにしています。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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