一方、利上げ反対派の急先鋒である、英経済予測機関オックスフォード・エコノミクスの主席エコノミスト、アンドリュー・グッドウィント氏は10月19日付のテレグラフ紙で、「イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の早期利上げは、まだ完全に回復していない英国経済の成長の勢いを削ぎ、金融政策の失敗となる」と警告する。また、同氏は、「BOEはインフレを引き起こしている、世界的な供給サイドの問題に影響を与えることはできない」と指摘し、その上で、「現時点で政策金利を引き上げる正当な理由は何ひとつない」と言い切る。

英国家統計局(ONS)によると、英国経済は4-6月期GDPが前期比5.5%増となり、従来予想の同4.8%増を上回り、思った以上に回復が早まっている。しかし、パンデミック前の2019年10-12月期比では依然3.3%下回っている状況で、回復途上にある。ONSは9月に2020年GDP伸び率を前年比9.7%減(速報値は9.9%減)に上方改定し、その結果、300年ぶりではなく、1921年以来99年ぶりの大幅減少に訂正し、英国は経済回復に向けて順調に進んでいるかに見えたが、現在、一部のエコノミストは、英国はリセッション(景気失速)に戻る恐れがあるとみている。香港の投資調査会社ガベカル・リサーチのアナリストのニック・アンドリュー氏は10月初めの顧客向けリポートで、「英国は新たなリセッションに向かっており、それは近々の問題だ」とした上で、「エネルギー価格が高水準にある中で、インフレと戦うこと(利上げ)で英国経済が2022年に不況に直面する可能性が高い」とした。7-9月期GDPは前期比1.3%増と、市場予想(1.5%増)を下回り、ロックダウン(都市封鎖)中の今年初め以来の低い伸びとなった。2019年10-12月期比でも2.1%減と、依然、マイナス圏だ。

BOEのMPC(金融政策委員会)メンバーであるシルバナ・テンレイロ氏も10月14日付の英紙ウエスタン・メールで、「最近のインフレ上昇はベース効果で高目の数字が出ていることに加え、半導体不足など供給サイドの問題だ」とした上で、「従って、利上げにより、半導体価格やエネルギー価格の大幅上昇など、インフレへの短期的な影響に対処するのは自滅的なことになる。利上げが効果を発揮する前にエネルギー価格の上昇は治まっているだろう」と主張し、利上げには反対の考えだ。

MPCの新メンバーとなったキャサリン・マン委員も最近のインフレ加速は「一時的」な可能性が高いため、利上げを控えるべきだと主張している。また、同委員は、「金融市場は、BOEによる利上げの必要なしに、市場金利がすでに上昇(英国の30年国債利回りは9月平均が1.13%と、1月の0.86%から急上昇)しており、すでに財政状態が内生的に引き締められていることを意味し、BOEは利上げを通じた積極的な金融引き締めを待つことができる」と指摘する。

インフレ加速懸念は英国経済を最終的に「日本化」させるという論調もある。テレグラフ紙のジェレミー・ワーナー経済部次長は10月21日付コラムで、「インフレ加速はエネルギー価格の上昇による一時的にもかかわらず、利上げを実施すれば景気回復を遅らせ、消費者の可処分所得を減らし、デフレを引き起こす。英国は最終的には日本のように、恒久的に低インフレ、低成長、低金利になる」と主張する。デフレ懸念の場合、利下げとは逆に利上げすれば景気は後退し、ますますデフレが進み、日本化するという議論だ。(了)