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主な新興国/米国経済ニュース(11日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

シティ、不適切なMBS販売で司法当局に7100億円支払い和解か

米金融大手シティグループ<C>は世界的な金融危機当時に、不適切なMBS(不動産担保証券)を販売した疑いで米司法当局の調査を受けていた問題で、来週中にも70億ドル(約7100億円)の和解金を米司法省や複数の州政府当局に支払うことで合意する見通しとなった。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーなどが9日に関係筋の話として伝えた。

この70億ドルの和解金の内訳は、40億ドル(約4060億円)が制裁金で、残りの30億ドル(約3050億円)は住宅取得者の経済的負担を軽減するための住宅ローンの返済条件の改善措置となっている。

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IBM、次世代半導体の研究・開発に3千億円超投資へ

米IT・コンピュターサービス最大手IBM<IBM>は今後5年間にわたり、グラフェン(炭素原子のシート)やカーボンナノチューブなどの新素材を使った次世代型の半導体を開発するため、30億ドル(約3050億円)を投資する計画を明らかにした。IBMが中核事業であるハードウェア事業から撤退するのではないかという投資家の懸念を払しょくする形となった。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が9日に伝えた。

同社のスティーブ・ミルズ副社長(ソフトウェア・システム担当)は、「半導体の研究開発はIBMにとって重要な投資分野だ」と述べている。IBMは将来、より先端的な半導体の開発に関わることによって、膨大なデータ処理や高度な安全性などコンピューターに関連したより次元の高い問題の解決を可能になる、としており、一部のアナリストも付加価値の高い問題解決に取り組むことが半導体産業にとって今後、利益が期待できる分野になると見ている。

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GM、「サーブ・コンバーチブル」の不具合で約3万台をリコールへ

米自動車最大手ゼネラル・モーターズ<GM>は、かつて傘下企業だったスウェーデン自動車大手サーブが製造した2004-2011年型「サーブ・コンバーチブル」のシートベルトに不具合が見つかったとして、2万8789台をリコール(無償回収・修理)することを明らかにした。米経済専門テレビ局フォックス・ビジネス(電子版)が9日に伝えた。

不具合は運転席のシートベルトの巻取り装置(リトラクター)で、この装置が壊れるとシートベルトが緩み、機能を発揮できなくなり、衝突事故の際に負傷するリスクが高まる、としている。GMでは車の所有者に対し、無料でシートベルトを交換する。GMは2010年にサーブを蘭高級車メーカーのスパイカー・カーズに売却している。

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ロシア1-6月期資本流出額、対ロシア制裁で前年比2倍の7.6兆円に

ロシア中央銀行が9日に発表した1-6月期の資金流出額は746億ドル(約7.6兆円)の流出超となったことを明らかにした。

これは前年同期の337億ドル(約3.4兆円)の2.2倍で、2013年全体の627億ドル(約6.4兆円)を大幅に上回った。ウクライナ危機に絡んだ米国とEU(欧州連合)による対ロシア経済制裁によって、投資家が一斉にルーブル資産を売却したためと見られている。

また、四半期ベースでは、1-3月期の488億ドル(約5兆円)の流出超に続いて、4-6月期も258億ドル(約2.6兆円)の流出超となっている。中銀では今年全体の流出額は850億-900億ドル(約8.6兆-9.1兆円)になると予想しているが、その一方で、世界銀行とIMF(国際通貨基金)はロシアの今年の資金流出額は1000億ドル(約10.2兆円)を超える可能性がある、と悲観的に見ている。

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ベトナム携帯電話販売大手テジョイディドン、14日に新規上場へ

ベトナム携帯電話販売大手テジョイディドン(MWI Corp)が14日にホーチミン証券取引所に正式に新規上場する見通しとなった。地元オンラインメディアのインテルアジアが10日に伝えた。

同社の銘柄コードは「MWG」となり、1株当たりの公開価格は6万8000ドン(約330円)となる予定。6272万株が上場されるため、時価発行総額は4兆2640億ドン(約205億円)となる。テジョイディドンの携帯電話国内販売シェアは現在、25%だが、1年半から2年後には35-40%に引き上げる計画。今年の売上高は前年比37%増の13兆ドン(約620億円)、税引き後利益は同68%増の4350億ドン(約20億円)を予想している。

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インドネシア中銀、政策金利を据え置き―市場の予想通り

インドネシア中央銀行(BI)は10日の理事会で、政策金利である翌日物BI金利を現行の7.5%のまま据え置いた。市場の予想通りだった。据え置きは2013年12月から8会合連続。また、過剰流動性を吸収するために翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.75%、翌日物貸出ファシリティー金利も7.5%に据え置いた。

中銀は理事会後に発表した声明文で、今回の金利据え置き決定について、「中銀の金融政策は、インフレ率を2014年の物価目標4.5%プラスマイナス1%ポイントと2015年の物価目標4%プラスマイナス1%ポイントにまで低下させ、経常赤字も健全で持続可能な水準に削減するという、金融引き締めの姿勢と一致するものだ」とし、前回と同じ文言を使っている。

また、これより先、同中銀のアグス・マルトワルドヨ総裁は6月24日に、記者団に対し、今後の金融政策の見通しについて、「今年末まで金融引き締め政策を継続する」と述べ、政策金利である翌日物BI金利を現行の7.5%のまま据え置くとの考えを示していた。

インフレの見通しについては、中銀は、「6月のインフレ率は前月比0.43%上昇、前年比6.7%上昇と、十分に抑制されている。今後は、7月のイスラム歴のラマダン(断食月)やエルニーニョ現象で物価上昇が起こる可能性があるが、政府と協力して、2014年のインフレ率は物価目標4.5%プラスマイナス1%と、2015年の物価目標4%プラスマイナス1%ポイントの達成を目指す」と指摘している。

また、景気見通しについては、「国内経済のリバランス(外需から内需、公需から民需への是正)が進む中、間違いなくマクロ経済の安定が維持されていく」としている。

自国通貨ルピア安の進行については、中銀は声明文で、「6月のルピア相場は平均で1ドル=1万1892ルピアとなり、5月平均に比べ3.03%下落(ドル高・ルピア安)し、ルピア安が加速した」とした上で、前回の声明文で削除された「今後も引き続き、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に見合った為替相場の安定を維持していく」という文言を復活させた。

次回の金融政策決定会合は8月14日に開催される予定。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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