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主な新興国/米国経済ニュース(7月8日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

1-5日のロシアRTS指数、1268.59―反落=BRICs市況

前週(1-5日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)は5日終値が前週比0.5%安の1268.59と、週間ベースで再び下落に転じた。先月全体のRTS指数は4.2%安だったが、7月相場に入っても冴えず、一段安となり、年初来でも19%安と低迷が続いている。

月替わりの最初の取引となった1日は、日銀短観やユーロ圏5月失業率、米6月製造業PMI(購買部景気指数)が強い結果となったのを受けて、世界の主要株式市場が堅調となり、RTS指数も上昇し5営業続伸となった。しかし、その後はポルトガルやエジプトの政治危機の混迷の度合いが強まると相場は下押しされ、さらに、週末に発表された米6月雇用統計が市場の予想と一致したことから、FRB(連邦準備制度理事会)の第3弾の量的金融緩和(QE3)の段階的規模縮小に対する思惑が再び台頭し、RTS指数は軟調となった。

個別銘柄では、国営トラック・バス大手カマズが1日の取引で20年ぶりの復配のニュースで前日比18.1%高となったほか、国営石油大手ロスネフチのイーゴリ・セーチンCEO(最高経営責任者)が中堅石油会社バシネフチの買収協議を否定したことを受けて、両社の銘柄は1日、それぞれ0.7%高と0.9%高となった。長距離電話最大手ロステレコムも2日の取引で政府系ファンド、ロシア直接投資基金(PDIF)による同社の株式取得のニュースで5%高となっている。

今週(8-12日)のロシア市場は、8日から始まる米国の企業の四半期業績発表を踏まえた展開になるもよう。主な経済統計は、9日が中国6月消費者物価指数(CPI)、10日は中国6月貿易収支、米5月卸売在庫、米FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録公表、11日はECB(欧州中央銀行)月報、日銀金融政策決定会合の結果公表、12日は米7月ミシガン大消費者信頼感指数速報値、ユーロ圏5月鉱工業生産指数などが予定されている。

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ムーディーズ、ズベルバンクやVTBなど主要6行の長期優先債務を格下げ

米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは先週末、ロシア連邦貯蓄銀行(ズベルバンク)やロシア2位の金融大手VTB銀行などロシア国内の主要6行の長期優先債務格付けを引き下げた。

ズベルバンクの自国通貨ルーブル建てと外貨建ての長期優先債務は「A3」から「Baa1」へ、VTBのルーブル建てと外貨建ての長期優先債務も「Baa1」から「Baa2」へ、ロシア農業銀行のルーブル建てと外貨建ての長期優先債務も「Baa1」から「Baa3」へ、いずれも引き下げられた。

また、VTBノースウェスト銀行の長期劣後債務の格付けは「Baa2」から「Ba1」へ、VTBキャピタルの外貨建ての有担保と無担保の長期優先債務を「Baa1」から「Baa2」へ、VTB24銀行の自国通貨ルーブル建ての有担保と無担保の長期優先債務を「Baa1」から「Baa2」へ、いずれも引き下げられた。

引き下げの理由について、ムーディーズは、ロシア政府が金融システムの危機時に、これらの銀行に対し必要な資本金や流動性を緊急的に支援できるかどうかの能力を評価した結果だとしている。具体的には財政赤字や年金財政の赤字など危機時に対応する予備基金と国民福祉基金の残高が2008年以降急速に減少してきており、2008年の対GDP(国内総生産)比16.1%から今年半ば時点では同8.5%にまで低下しているとしている。

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中国アルミ生産大手宏橋集団、インドネシアにアルミナ精錬所建設へ

中国アルミ生産大手チャイナ・ホンチャオ・グループ(宏橋集団)は先週、インドネシア鉱山会社ハリタ・ジャヤラヤと合弁会社を設立し、西カリマンタン州クタパン地区にアルミナ精錬所を建設する計画を明らかにした。投資額は10億ドル(約1010億円)。

これはハリタ・ジャヤラヤのリム・グナワン・ハリヤントCEO(最高経営責任者)がスレマン・ヒダヤット工業相との会談後、記者団に明らかにしたもの。合弁会社はウェル・ハーベスト・ウィニング・アルミナ・リファイナリーで、宏橋集団が70%出資し、残り30%をハリタ・ジャヤラヤが出資する。

アルミナ精錬所は今月17日から建設に着手し、第1期工事は2015年半ばに完成し、操業を開始する予定。生産能力は第1期が年間100万トンだが、第2期完成後は2倍の200万トンに引き上げられる。200万トンのアルミナ生産には原料のボーキサイトは年間で約600万トンが必要になる。

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ファミリーマート、ベトナム・ホーチミンに新たに3店舗開設へ―合弁解消後

コンビニ大手ファミリーマート<8028.T>は、ベトナムの同業大手フータイ・グループとの合弁解消後、同国から撤退するのではないかとの憶測を否定した上で、新たに3店舗のコンビニを開設する方向で準備を進めている。地元紙サイゴン・タイムズ(電子版)が4日に伝えた。

現在、ファミリーマートはホーチミン市にあるマンションビル「スカイガーデン」内に直営店1店舗を運営している。合弁解消は採算が悪化したためと見られているが、ファミリーマートでは今月から来月にかけてホーチミン市内の3カ所に新店舗をオープンさせることで、ベトナムからの撤退観測を打ち消したい考え。

ただ、今後、ファミリーマートが単独で店舗運営にあたるのか、あるいは別の提携先を模索するのかは依然不透明となっている。ファミリーマートは2010年に合弁会社を設立し、今年5月末に合弁を解消するまでの3年間で、ホーチミン市内に42店舗を運営していたが、最近、フータイがファミリーマートから合弁会社の持ち株を買い取り、独自のブランド「B’sマート」を立ち上げている。

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米スプリント、ソフトバンクによる買収で米連邦通信委の承認得る―上旬に買収完了

米携帯電話サービス3位のスプリント・ネクステルは5日、ソフトバンク<9984.T>による同社の買収合意について、米連邦通信委員会(FCC)から全会一致で承認されたことを明らかにした。

これでスプリント買収に必要なすべての監督官庁の承認を得たことになる。ソフトバンクによる約216億ドル(約2.2兆円)のスプリントの買収は今月上旬にも完了する見通し。ソフトバンクはスプリントの株式約78%を取得し完全子会社とする。ソフトバンクによると、216億ドルのうち、大半の201億ドルは為替予約済みの1ドル=82.2円で支払うため、実際の支払い総額は約1.8兆円になるとしている。

スプリントのダン・ヘッセCEO(最高経営責任者)は5日の発表文で、「ソフトバンクのスプリントへの投資によって、(ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tモビリティの)2社によって独占されている米国の携帯電話市場にスプリントが新の競争相手として立ち向かうことを可能にする」と述べている。

また、スプリントは同日、米携帯電話向けブロードバンドサービス大手クリアワイヤの完全買収案件についてもFCCから全会一致で承認されたことも明らかにした。クリアワイヤは8日に株主総会を開きスプリントによる完全買収について投票する予定で、買収は7月上旬にも完了する見込みとなっている。スプリントはすでにクリアワイヤの株式50%を取得しており、今回は残りの50%の取得による完全買収を目指し、米衛星放送大手ディッシュネットワークと買収競争を繰り広げていた。

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米太陽光パネル大手ホク、破産法の適用を申請

米ナスダック店頭市場に上場している米太陽光パネル大手ホク・コーポレーション(本社・ハワイ州ホノルル)は、アイダホ州ポカテッロの破産裁判所に破産法第7条の適用を申請し、事実上倒産した。負債総額は5億0700万ドル(約510億円)。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが5日に伝えた。

同社はアイダホ州に7億ドル(約710億円)を投じて太陽電池用多結晶シリコンの生産工場を建設中だったが、世界的な多結晶シリコンの供給過剰から値崩れし採算が悪化したため、工場建設は頓挫することになった。破産裁判所は今後、管財人を指名し、同社の資産売却先を探すことになる。

新工場は完成すれば年間4000トンの多結晶シリコンを生産する計画だった。同社は2007年5月から同工場の建設に着手しており、これまでに6億3000万ドル(約640億円)を投じている。当初の計画では2011年半ばから生産を開始する予定だったが設計変更などで建設が遅れ、建設費も当初計画の4億1000万ドル(約410億円)を大幅に上回る見通しとなっていた。

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ブラジル大富豪バチスタ氏、鉱山大手MMXを身売りへ―グループ再建で

ブラジルの大富豪エイキ・バチスタ氏が率いるEBXグループは、グループの経営再建のため、今後2カ月以内に傘下のブラジル鉱山大手MMXの過半数の株式を外部の投資家に売却する見通しだ。オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)が5日に伝えた。

これは関係筋が米経済通信社ダウ・ジョーンズに明らかにしたもので、それによると、取引先金融機関がEBXグループの経営再建を目指してMMXの身売りで資金をねん出しようとしており、すでにスイス鉱山大手グレンコア・エクストラータやオランダの石油販売大手トラフィギュラ、さらにはブラジル鉄鋼大手CSNなどと協議を進めているという。MMXの身売りが完了すれば、バチスタ氏はMMXの経営から手を引くことになるとしている。

また、EBXグループの再建計画が完了すれば、バチスタ氏の資産はわずか10億ドル(約1010億円)に縮小すると見られている。同氏の資産は昨年の345億ドル(約3.5兆円)がピークだったが、EBXグループ傘下の石油・ガス生産会社OGXペトロレオの原油生産・開発中止の発表で株価が3日現在で0.39レアルと、過去最高値から93%も下落したことなどで29億ドル(2930億円)にまで減少している。

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パナソニック、スロベニアのゴレーネと資本提携―白物家電事業拡大で

家電大手パナソニック<6752.T>は先週末、欧州やロシア・中東欧の新興国のアプライアンス(白物家電)市場に本格参入するため、スロベニアの同業大手ゴレーネと資本・業務提携をすることで合意したことを明らかにした。

合意では、パナソニックはゴレーネの第3者割当増資を通じて株式12.73%(232万株)を1000万ユーロ(約13億円)で取得する。また、ゴレーネはパナソニックブランドの欧州向け冷蔵庫を生産し、パナソニックに供給するほか、両社は欧州市場向けの洗濯機を共同開発する。さらに、ゴレーネの販売ルートを活用してビルトインキッチン商品の相互供給を行う。両社は他の商品分野や購買や物流などの業務についても今後検討するとしている。

パナソニックは、発表文で、「ゴレーネと提携することにより、欧州域内の生産拠点確保と商品開発力の強化、2012年に市場参入したビルトインキッチン商品の販売網の構築や商品陣容の拡充などを進め、事業のさらなる発展を目指す」と述べている。

ゴレーネは複数ブランドの冷蔵庫や洗濯機、調理機器などのアプライアンス機器を製造しており、世界90カ国に自社製品の95%を輸出している。従業員数は1万1000人で昨年の売り上げは12億8000万ユーロ(約1670億円)。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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