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ブラジル政府、主要5都市に治安部隊派遣へ―市民抗議デモの暴動に備え

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ブラジルのバス料金の値上げ反対に端を発した市民抗議デモは19日までに国内主要5都市に拡大したため、政府は同日、暴動に備えリオデジャネイロ州の州都リオデジャネイロやミナスジェライス州の州都ベロ・オリゾンテ、バイーア州の州都サルバドール、セアラー州の州都フォルタレザ、首都ブラジリアの5都市に治安部隊を派遣する方針を明らかにした。英BBC放送(電子版)が伝えた。

この政府発表は18日にサンパウロ州の州都サンパウロで一部の市民が暴徒化し商店や銀行を襲ったため、警官隊とデモ隊が衝突したあとを受けて行われた。司法省は治安部隊の派遣期間は地元自治体の要望次第だとしている。市民デモは今月2日にサンパウロでバス料金が値上げされたことに反対して起きたが、その後、汚職がひどい州や健康・教育の公共サービスが劣悪な州、さらには生活水準が低い州などの10都市以上に広がりを見せてきている。

また、現在、ブラジルの主要都市では2014年のFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップブラジル大会のプレ大会としてFIFAコンフェデレーションズカップ2013が開かれているが、デモ参加者の多くは、ワールドカップブラジル大会と2016年のリオデジャネイロ夏季五輪の関連施設の建設に巨額の税金を投入していることへの強い不満を表明している。

一方、国営通信アジェンシア・ブラジル(電子版)によると、政府はバス料金の値上げに対処するため、値上げを決めた地方自治体への経済支援を一両日中にも発表すると見られている。

また、オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)によると、地元テレビ局が実施した最新のエコノミスト調査では、今回の市民デモのブラジル経済への悪影響について、これまでのところでは外国人投資家のブラジル経済に対する評価にはそれほど大きな影響を与えていないようだ。

英コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスの新興市場担当エコノミスト、ニール・シェアリング氏は、今回の市民デモがもたらす経済への潜在的な影響について判断するには時期尚早と指摘。また、ブラジルの市民デモは、現在、トルコや中東アラブ諸国で起きているような、投資家の懸念を引き起こし観光やビジネス活動を脅かしている社会暴動と同列には見られないとしている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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