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主な新興国経済ニュース(5月8日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア国営統一造船のジャクコフ社長、更迭か

ロシア国営造船大手の統一造船(USC)のアンドレイ・ジャクコフ社長が既存の事業進捗の遅れを理由に更迭されたもようだ。ロシアのプライム通信(電子版)などが6日、関係筋の話として伝えた。

同社を監督するドミトリー・ロゴージン副首相(国防担当)が昨年6月にジャクコフ氏を新社長に起用したが、ここ数週間は極東のズベズダ造船所の改修工事が遅れるなど民間や軍関係のプロジェクトが期日までに完了することができていないとして、ロゴージン副首相から批判されていた。現在、ジャクコフ氏は病院で静養中だが、すでに辞任届を提出して役員会で了承され、バレリー・ビンダス副社長が暫定的に社長を兼務しているという情報もある。

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EC、ポーランドの今年の成長率見通しを1.1%増に下方修正

EU(欧州連合)の行政執行機関であるEC(欧州委員会)は3日に発表した春季経済見通しで、ポーランドの今年のGDP(国内総生産)伸び率の見通しを前回1月の冬季見通しの1.2%増から1.1%増に下方修正した。ただ、来年の伸び率については2.2%増のまま据え置いた。ちなみに昨年の伸び率は1.9%増だった。

今年は主要輸出相手国の景気見通しの悪化で国内の民間投資が落ち込み、さらに家計や企業の景況感の悪化で内需は特に上期(1-6月)に弱まるとしている。ただ、年末にかけて、世界の景気回復と資金調達コストの低下によって回復が見られるとしている。また、財政赤字は、今年は対GDP比3.9%(前回予想時3.4%)、来年は同4.1%(同3.3%)になると予想。ちなみに昨年の財政赤字は同3.9%だった。

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ベトナム金融大手ベトコムバンク、預金金利を引き下げ-貸付金利低下狙い

ベトナム金融大手ベトコムバンク(VCB)6日、自国通貨ドン建ての1、2、3カ月物の預金金利をそれぞれ6%、6.5%、6.8%に引き下げたほか、6-9カ月物の預金金利も7%に引き下げた。いずれもベトナム中銀の預金金利の上限を0.5%ポイント下回っている。地元金融情報サイト、ストックスプラスなどが伝えた。

また、同行は、1年超物の預金金利についても1%ポイント引き下げて8%にしている。この結果、同行の12カ月以下の預金金利は他行の大半が7.5%、12カ月超は10%となっているのに対し、最も金利が低くなった。

預金金利の引き下げに伴い、同行は貸付金利も引き続き低下している。短期貸付金利は約10.5%、中長期は約11.6%となっている。同行では流動性や市場の環境に応じて預金金利を引き下げたとしており、預金金利の引き下げは、貸付金利を引き下げ、金融面から企業を支援するためとしている。

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米ムーディーズ、インドネシアの格下げの可能性を指摘-燃料補助金削減遅れで

米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのクリスチャン・デ・グズマン副社長は6日に発表した最新リポートで、インドネシアの燃料補助金の削減が遅れていることから同国の格付けが引き下げられる可能性があることを明らかにした。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)などが伝えた。

同副社長は、「燃料補助金の改革(削減)が執拗に遅れていることはインドネシアに対する格付けが引き下げられる可能性を示す」と述べている。現在、同国のソブリン債格付け(長期)は「Baa3」で格付けに対する見通し(アウトルック)は「安定的」となっている。

これより先、米同業大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が先週、インドネシアのソブリン債の格付けに対する見通し(アウトルック)を「ポジティブ」から「安定的」に引き下げている。引き下げた理由については、政府の構造改革、主として燃料補助金の削減が行き詰まりを見せていることや、民間セクターの外貨建て借り入れの急増、経常赤字が外国からの資金流入で相殺できないほど拡大しているなど外部債務の増大を挙げている。

先月末、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は燃料補助金の削減問題について、議会が補助金削減で燃料価格が上昇して打撃を受ける社会的弱者の救済法案が可決すれば大きく進展する、としている。

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インドンネシア国営石油プルタミナ、年内に5千億円のグローバル債発行へ

インドンネシア国営石油大手プルタミナは、年内に50億ドル(約5000億円)相当のドル建てのグローバル債を発行する計画だ。同社は2011年に中長期債を発行し15億ドル(約1490億円)、2012年も25億ドル(約2500億円)の資金を調達しており、今回で社債発行による資金調達は3年連続となる。この背景にはインドネシアに対する投資意欲が強いため、資金調達コストが低水準にあることがある。ジャカルタ・グローブ(電子版)が6日に伝えた。

今度の社債発行で、引き受け幹事に英金融大手のバークレイズとロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)、米金融大手シティグループ、共同幹事にインドネシア金融最大手マンディリ銀行傘下のマンディリ証券を指名している。また、今回のグローバル債に対する格付けは、S&Pが投資適格級を1段階下回る「BB+」と「axBBB+」、ムーディーズは投資適格級で最も低い「Baa+」を付与している。

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伊自動車大手フィアット、ブラジルに2016年までに7350億円投資へ

イタリア自動車大手フィアットは6日、今年から2016年にかけて、ブラジル国内に150億レアル(約7350億円)を新規に投資する方針を明らかにした。オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)などが6日に伝えた。

これは同社のセルジオ・マルキオーネCEO(最高経営責任者)が同日、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領と会談した際に、正式に表明したもの。同社によると、この投資によって、ブラジル国内で直接雇用7700人と、間接的雇用としてサプライヤー(自動車部品・資材供給業者)を中心に1万2000人の雇用創出が期待されるとしている。

この投資額はフィアットと傘下のトラック・トラクター大手フィアット・インダストリアルやトラック大手イベコ、エンジン生産のフィアット・パワートレーン・テクノロジー(FPT)、農機・建機大手CNHグローバルなどを含んだもので、設備更新や新製品・新技術の開発、生産工程や物流の近代化、能力拡大投資や新工場建設、生産ラインの追加などに使われる。

すでに、フィアットは、ブラジル北東部ペルナンブコ州のゴイアナで、40億レアル(約2000億円)を投じて新工場を建設中で2014年末までに完成する予定。生産能力は年間20万‐25万台。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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