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地震避難の際に心配される”エコノミークラス症候群”予防のポイントと対策は

市川衛医療の「翻訳家」
イメージ(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

18日午後10時ごろ、新潟県村上市で震度6強の地震がありました。被災された方々に、心よりのお見舞いを申し上げます。

日刊スポーツの報道によれば(※)、既に多くの人が避難所に避難しているとされています。

突然の避難生活で危惧されるリスクのひとつ「エコノミークラス症候群」の情報をまとめました

エコノミークラス症候群とは

長い時間、同じ姿勢で座ったりすると血行が悪くなり、血液が固まって「血栓」ができやすくなります。もし、何かの拍子に血栓が剥がれると、血管を通って肺に達し、大切な血管をふさいでしまうことがあります。

専門的には「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」と呼ばれますが、飛行機のエコノミークラスで長く同じ姿勢で座った人がなるケースがあるので「エコノミークラス症候群」として有名になりました。

避難所や車中の生活では、どうしても同じ姿勢を長い時間とらざるをえない状況が増えます。そのため、大きな災害の際にはこの病気を発症するリスクが高まります。

平成16年の新潟県中越地震では、少なくとも 11 名が発症し、うち 6名がお亡くなりになったとされています。また東日本大震災の直後~1か月程度の間に行われた調査では、避難した方の6.3~15.5%のかたに血栓ができていることが判明しました。特に「車中泊をしている」「足にケガ」「活発に動けない」などの特徴がある方では、13.4~42.1% の人に血栓が見つかっています。

この病気は、中高年(40歳以上)の女性にリスクが高いとされ、また妊娠中や産後すぐの女性は注意が必要とされています。さらに、肥満や脂質異常症(血中のコレステロール値が高い状態)の人もリスクが高いとされています。

血栓ができてしまってからも、お薬の内服などによってはがれる前に治療すれば大事になるのを防げるのですが、被災直後は十分な医療が受けられないケースが多いと思われます。まずは血栓ができるのを「予防」することが何より重要です。

予防のポイントは

下記が、予防対策のポイントとされています。

※こまめに水分をとる

※トイレをがまんしない

※定期的にからだを動かす(歩く、ラジオ体操をするなど)

もちろん被災直後の混乱した時期で、お一人お一人がおかれた状況によって出来ること・出来ないことがあると思います。また、お疲れのところご無理はなさらないようお願いいたします。避難生活が長引いてしまったケースなどで、できる範囲で予防対策をとっていただければ幸いです。

なお、夜間や雨天の際などは、体を動かすことが難しいケースもあります。

下記のサイトでは、椅子に座ったままでできる予防体操が動画で紹介されています。体を動かして血行を高めることは、エコノミークラス症候群の予防にとどまらず健康の維持に良い影響がありますので、可能な方はためしてみてください。

JAL インフライト体操

※引用記事

新潟・粟島に微弱な津波 村上市には避難所15ヵ所(日刊スポーツ 2019年6月19日1時39分)

医療の「翻訳家」

(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。

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