「がんで死ぬ人は、減り続けている」 意外と知らないデータの真実

OECDデータ「Deaths from cancer」より

がんで亡くなる人は、増えている?

「日本では、がんで亡くなる人が増え続けている」という言葉、よく聞きますよね。ときにメディアの記事でも、取り上げられることがあります。

米国で1年間にがんで死ぬ人は、約57・5万人。日本人は約36・5万人だが、人口10万人当たりで換算すると、日本人の死亡数は米国の約1・6倍にもなっている。意外なことだが、日本は先進国であるにもかかわらず、がんが原因で亡くなる人が増え続ける唯一の国。日本が「がん大国」である「本当の理由」はここにある。

出典:「週刊現代」2014年9月13日号より

実際はどうなのでしょうか?調べてみました。

まず、国が公開している「人口動態統計」のデータから、がんによる死亡者数の変化をグラフにしてみます。

人口動態統計による全がん死亡データ(1990年~2014年)
人口動態統計による全がん死亡データ(1990年~2014年)

1990年には年間21万人ほどでしたが、その後増え続け、2014年には36万人を超えています。なるほど、やっぱり日本は「がん大国」。日本のがん対策は、うまくいっていないんじゃないか?と思ってしまいますね。

高齢化の影響は? 年齢で調整してみる

でも、ここでちょっと考えてみました。

がんは、年齢を重ねるごとに増えます。お年寄りになればなるほど、がんになる人は増え、それに伴い亡くなる人も増えていきます。これは、いわば人間の「宿命」とも呼ぶべきもの。とすると、日本は高齢化が進んでいるわけですから、がんで亡くなる人が増えること自体は「自然なこと」です。

でも、もしも日本と同じくらい高齢化が進んでいる国があったとして、がんで亡くなる人が日本より大幅に少なかったとしたら問題ですよね。日本におけるがんの予防対策に問題があったり、治療体制に何らかの欠陥があったりする可能性があるからです。

つまり大事なのは、高齢化による「見かけ上の増加」を調整したうえでデータを見ること。そうすると、本当に問題があるのかどうかが見えてくるはずです。

がんで亡くなる人が、減り続ける日本

そこで、人口における年齢構成の違いを調整したデータで、日本の状況を見てみました。OECD(経済協力開発機構)は、加盟国のがんによる死亡率データ公開しています。それをグラフ化し、日本と社会状況が近いG7(先進7か国)の死亡率を、1990年から2012年まで比較してみます。

全がん死亡率(年齢調整済み・10万人あたり) OECD dataより
全がん死亡率(年齢調整済み・10万人あたり) OECD dataより

日本のデータは、というと・・・一番下の赤線です。あれ?一貫して、主要先進国のなかでもっとも低いことがわかりました。1990年からの変化を見ていくと、95年にいちど上昇しますが、その後は減り続けています。なぜ減っているのかは一概には言えませんが、医療技術の進歩や衛生状態の改善(胃がんの原因となるピロリ菌保有者の減少)などが関わっているのかもしれません。高齢化の影響を除いた場合、「日本ではがんで亡くなる人は減り続けているし、他の先進国と比べて多いわけではない」ことが言えそうです。

種類別にがんを見てみると?

ちなみに、全てのがんを合計するのではなく、肺がんや胃がんなど部位別に見てみるとどうなるでしょうか?これも高齢化など年齢の影響を調整したグラフで見てみます

主要な部位別がん年齢調整死亡率(がん情報サービスHPより)
主要な部位別がん年齢調整死亡率(がん情報サービスHPより)

「胃がん」「肺がん」「肝臓がん」など主要ながんでは、おおむね死亡率が低下してきているようです。では一方で、増えているがんはないのでしょうか?他の場所のがんも見てみます。

主要な部位別がん年齢調整死亡率(がん情報サービスHPより)
主要な部位別がん年齢調整死亡率(がん情報サービスHPより)

赤い線で示されたグラフは、すい臓がんの死亡率です。男性も女性も、増え続けていることがわかります。胃がんや肺がんに比べ頻度は少ないですが、すい臓がんは検査法が進歩した現在でも早期発見が難しく、見つかった時には手遅れというケースが多いといわれています。すい臓がんに対し、もっと良い検査法や治療法の開発が進むことが望まれますし、私たち個人としても、適切な情報を知っておいて損はなさそうです。

がんを正しく「怖がる」ために

同じ死亡数や死亡率というデータでも、「年齢構成」という要素を考慮に入れるかどうかで、その見え方は大きく変わることがわかりました。日本人の2人に1人がなるとも言われる「がん」。適切な対策や対応を考えるためには、私たち自身がデータの「見かた」をちょっとでも知っておくことが望まれるのかもしれません。

※もしご興味がある方は、次の記事もご一読ください。

がんの「早期発見」は、すべきではない!?