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前文科相の示した「意気込み」は、どこに行ってしまうのだろうか?

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 第2次岸田再改造内閣が、8月13日午後に正式発足した。やはり文科相は交代となったが、前文科相の「意気込み」の行方が気になる。

|予算獲得に意気込みを表明した前文科相

 発表された第2次岸田再改造内閣の閣僚名簿に永岡桂子氏の名はなく、新しい文科相には盛山正仁氏が就任した。前文科相となった永岡氏は8月29日付で「文部科学大臣メッセージ」(以下、「大臣メッセージ」)を発表し、「これまで以上に力強く教育予算を確保します」と明確に述べている。

「大臣メッセージ」の翌日、文科省は一般会計で総額5兆9216億円となる2024年度予算の概算要求を公表している。今年度に比べて6000億円あまりも増えることになり、2011年度予算以来13年ぶりとなる教職員定数の「純増」まで盛り込んだ、文科省としてはかなり強気の概算要求といえる。

 つまり「大臣メッセージ」は、強気の概算要求を実現するについての文科相の意気込みを示したことになる。しかし、意気込みだけで超えられないのが「財務省の高い壁」である。

 小学校の35人学級の実現や1人1台端末の実現などの予算を勝ちとり、〝文科相としては珍しい実力派大臣〟と文科省内では高く評価されたのが、萩生田光一元文科相(現在、自民党政調会長)だった。その萩生田氏をしても、中学校の35人学級のための予算は財務省に阻まれ、「隣の建物(財務省)の壁は高かった」と言わしめた。それほどに、財務省は手強い相手である。

 しかし永岡氏は、「これまで以上に力強く」と宣言している。文面だけからは、果敢に財務省の壁に挑戦して乗り越えてみせる、といっているように読める。萩生田氏以上の実績を残す意気込みを示しているようにも読める。

|永岡氏の意気込みはパフォーマンスだったのか

 その意気込みについては、「大臣としての任期が長くないとみての最後のパフォーマンスにすぎない」という見方も強くあった。実際、永岡氏の続投はなかった。

 そうなると、永岡氏の意気込みは、どこに行ってしまうのだろうか。「あれは在任中の発言」で済ませてしまうのだろうか。それとも、意気込みを新文科相の盛山氏にしっかり伝え、共有できるのだろうか。

 盛山文科相は、永岡氏の意気込みをどううけとっているのだろうか。永岡氏からのバトンをうけとめ、財務省の高い壁に挑む、永岡氏に負けない盛山氏なりの意気込みを示すのだろうか。ただ永岡氏とちがい、盛山文科相は実際に財務省と対峙しなければならない立場である。

 大風呂敷だけ広げて予算を勝ち取れないのでは、それこそ政治家としての力量を疑われることになりかねない。永岡氏の意気込みは、じつは盛山文科相には迷惑な存在かもしれない。これから始まる予算折衝から目が離せない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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