現場の教員からは、「タイムレコーダーを押した後に仕事をすることも珍しくありません」という発言を聞くことが多い。超過勤務(残業)について虚偽の記録が横行している。

| 過少申告がまかりとおっている学校現場

 末松信介文科相は5月17日の閣議後会見で、教員の勤務時間について過少申告が当たり前のように行われているという専門家の指摘に関連して、「勤務時間の正確な把握は、働き方改革を進めていくうえで根本的なことであり、スタートラインである」と述べた。

 教員の過重労働は社会問題化しており、それだけに教育委員会や校長など管理職は教員の超過勤務には神経を尖らせている。タイムレコーダーの学校への導入は最近のことだが、それも超過勤務を管理するためだ。裏を返せば、これまで教員の超過勤務は把握されてこなかったことになる。その記録がないことが、過労死認定を困難にする要因にもなっている。

 だから、文科相が「スタートライン」と位置づけるのは当然であり、むしろ「遅すぎる」と言わざるをえない。教員の働き方改革には貴重な資料となるのはまちがいない。

 ただし、あくまで「正確であれば」のことである。冒頭でもふれたように、タイムレコーダーを押してからも仕事を続けたり、早朝に出勤してもタイムレコーダーを押さずに仕事をしておいて定時になってから押す、などといった虚偽の記録が横行している。タイムレコーダーが導入されていない学校では手書きになるが、そこでも同じことが行われているし、「時間外勤務の時間数が多すぎると管理職に指摘されて訂正させられる」なんて話も聞いた。「正確な把握」とは逆のことが、学校では横行している。

 文科省が公立学校教員の超過勤務について上限を1ヶ月あたり45時間というガイドラインを示したのが2019年1月のことで、それに従って各自治体でも同じように上限を定めている。

 上限を決めたからといって、仕事のそのものが減るわけではない。仕事量が減らなければ、当然ながら超過勤務の時間数も減るわけがない。それでも上限を守っているように取り繕うために、超過勤務の時間数を実際よりも減らして記録することが行われているのだ。

 教員自らが虚偽の記録をしたいわけではない。超過勤務の上限が守られていないとなると、責任を問われるのは教育委員会や校長である。だから必死になるのだが、仕事量そのものを減らす効果的な手立てが講じられていないのが現実だ。だから、「虚偽」を強いることになる。ある小学校教員は次のようにも言う。

「超過勤務が多いと校長室に呼ばれて指導されるので、言うとおりにするしかない。呼ばれて文句を言われるのも嫌だし、校長に説明するのも面倒だし、それに時間を割かれて仕事に支障がでるので、自分で事前に過少に記録するようなことになっています」

| 教員には勇気を、文科相には責任を

 しかし末松文科相は17日の記者会見で、「万が一、校長が虚偽の記録を残させるようなことがあった場合には、信用失墜行為として懲戒処分の対象ともなり得る。これは重要なポイント」と強調している。

 校長が教員に虚偽の記録を強いているなら処分する、と文科相は言っているのだ。それなら教員は、虚偽の記録をしないこと、強いられているなら実態を明らかにするべきだ。その声に文科相がきちんと耳を傾けて、対策を講じるなら、教員の働き方改革は前進していくだろう。

 虚偽の記録になっている実態を教員さえもが隠蔽するなら、教員の働き方改革は前進どころか、後退するばかりだ。教員には、虚偽の記録を拒否し、実態を明らかにする勇気が求められている。そして文科相には、「懲戒処分の対象ともなり得る」とまで言いきった自らの発言にきちんと責任をもってもらわなければならない。