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「全国学力テスト」は予定どおり実施、「#教師のバトン」の出番になる

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響で一斉休校になった昨年度は実施が見送られた全国学力テスト(全国学力・学習状況調査等)を、今年は予定どおり5月27日に実施すると萩生田光一文科相が述べた。はたして、教員は黙っているのだろうか。

|新型コロナが深刻さを増す状況でも実施すべきなのか

 4月27日の閣議後記者会見で萩生田文科相は、「予定どおり、悉皆(しっかい)でやる」と語った。「悉皆」まで念押ししている。

 今年度の全国学力テストの実施要領を文科省が全国の教育委員会などに通知したのは、昨年の12月23日だった。その直後の今年1月8日には、2回目となる緊急事態宣言が関東1都3県を対象に発出されている。

 文科省も、まさか2回目の緊急事態宣言発出になるとは想定していなかったはずである。だから、全国学力テストの実施日を5月27日としたのだ。昨年の一斉休校の影響を考えて、例年よりも1ヶ月後倒しの予定である。

 2回目の非常事態宣言が解除になるのは3月21日で、これで新型コロナが収束していれば学校現場の混乱も少なくて済んだかもしれない。ところが4月25日には、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象とした第3回目の非常事態宣言の発出される事態となっている。対象とされなかった地域でも新型コロナが収束しているわけではなく、かなり深刻な状況になっている。

 こうした新型コロナ禍のなかでの全国学力テストの実施を確認したわけで、「昨年度とは異なり、全国的な臨時休校措置が取られておらず、感染症対策を徹底しながら学校の教育活動が継続的に行われていることから、予定どおり5月27日に実施したい」と萩生田文科相は語っている。

 第1回目の緊急事態宣言が発出されたのは昨年4月7日のことだったが、それに先立つ2月27日には当時の安倍晋三首相の要請を受けて全国の学校が一斉休校に突入することが決まっている。その緊急事態宣言は全国学力テスト実施予定の4月16日にも解除されず、休校も延長されたままで、そのため実施は見送られた。

 しかし、今年は休校になっていないから全国学力テストは予定どおり実施する、というのが萩生田文科相の理屈である。

 新型コロナの状況は、間違いなく昨年よりも深刻な状況にある。変異株まで登場して感染者数は増え続けているし、子どもたちへの感染も広がっている。昨年は休校にしながら、今年は休校にしないというチグハグな状況なのだ。感染予防対策に学校現場は神経を尖らせている。そうしたなかで、全国学力テストは実施する必要があるのだろうか。

|不毛な競争を強いられる状況も「#教師のバトン」で明らかに

 さらに、前述したように萩生田文科相は「悉皆」を強調している。全国学力テストが都道府県間で成績を競う場になっていることは否定しようがない。文科省が説明しているように全国学力テストの目的が調査なら、全員参加の悉皆である必要はなく、抽出で事足りるのは、いろいろなところから指摘されてきていることだ。

 それでも文科省が悉皆にこだわるのは、競争を意図していると受け取られても仕方のないことだ。その競争のために、テスト対策に振り回されている学校現場は少なくない。

 新型コロナが深刻化するなかで感染予防対策に神経をすり減らし、テスト対策に追われるのは教員である。それに、教員が納得しているはずがない。

 ここで黙ってしまえば、教員は納得していると文科省は受け取りかねない。不合理、不満を、いまこそ教員は言葉にすべきである。

 幸い、文科省が始めたツイッター上の「#教師のバトン」がある。せっかく文科省が用意してくれば教員が発言できる場があるのだから、教員はホンネを語るべきではないだろうか。そこから、新型コロナ対応や全国学力テストの問題が浮き彫りになり、解決への一歩につながっていくはずである。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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