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新型コロナは育児中の女性の働き方を変えるチャンス、転職エージェント比較調査トップの社長に訊いた

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)で、労働市場にも大きな変化の波が押し寄せている。育児をしながら働く母親(ワーキングママ=ワーママ)にとっても、かなり厳しい状況だが、チャンスでもある。

■新型コロナで転職相談は急増

 ワーママの転職支援を行う「QOOLキャリア」を運営している株式会社QOOLキャリアは、今年2月に調査会社「ゼネラルリサーチ」が20代〜30代の女性を対象に実施したアンケート調査において、「年収500万円以上ワーママが選ぶ転職エージェント」「転職エージェント紹介案件満足度」「女性が選ぶキャリア相談満足度」の3部門で第1位を獲得している。同社の酒井陽大社長に、新型コロナ禍でのワーママたちの働き方の変化について訊いてみた。

「昨年4月7日に東京をはじめ7都府県に最初の緊急事態宣言が発出され、4月16日には対象が全国に拡大しました。当社への相談件数が急増したのは、5月から6月にかけてでした。すぐに転職したいという相談よりも、会社の業績が悪化しそうなので転職を考えておきたいといった内容が大半でした。しかし今年にはいってからは、3月末には契約が終了するとか、リストラが本格化しているとかで、転職を急ぎたいとの相談に変わってきました」

 とはいえ、簡単に転職先が見つかるわけでもない。女性が働くといえば飲食やアパレルなどサービス業が多くを占めているのが現状だが、そこは新型コロナに直撃されている場でもある。同じ職種で転職しようにも、転職先が無いのが現状なのだ。

「サービス業でも、たとえば介護は新型コロナ前から現在も人手不足の職種です。キャリアを問わない分野も多いので、転職しようとおもえば転職しやすいといえます。問題は、本人が介護の仕事を希望するかどうか、ですね」

 問題は、ワーママの転職である。新型コロナ前でも育児のために時短勤務が多く、働くには不利だった。QOOLキャリアではスキルをもったワーママの転職を支援しているが、そのスキルもないとなると、転職はかなり厳しくなっているのが現状でもある。

■リモートワークで夫も育児参加を増やせる

「しかし考え方によっては、転職先を探しやすい環境になりつつあるとも言えるんです」と、酒井さん。その理由を、次のように続ける。

「新型コロナでリモートワーク、つまり在宅勤務が広まってきています。夫がリモートワークなら、子どもの保育園への送り迎えなどをやってもらいやすくなります。私自身も月に100人くらいの転職希望のワーママと面談していますが、そもそも夫に送り迎えをしてもらう発想がない人が多い。そこを変えていけば、転職の可能性もひろがるはずです」

 ワーママにすれば、出社して働ける時間を長くできることになる。ワーママが働く場合の最大のネックが時短勤務だったが、そこを少しでも改善することで、有利な条件での転職も可能になるわけだ。

 新型コロナの収束後にリモートワークを継続するかどうか迷っている企業も少なくないのも事実である。しかし、「働く側にメリットのあるリモートワークを完全に止めることは、企業としてもできない気がします」と、酒井さんは言う。

 リモートワークがまったくない働き方だと、求人での応募者が減ることが考えられる。さらには、働き方について前向きに取り組まない企業として、イメージを悪くすることにもなる。それは、企業として望ましいことではない。

 つまり企業としては、リモートワークを無視できない状況になっているのだ。夫との育児分担もしやすくなるし、リモートワークを組み入れれば育児をしながらのスキルアップもしやすくなる。

 新型コロナをきっかけに自分だけでなく夫もふくめた働き方と生活を見直すことで、チャンスになるかもしれない。それを活かすことができれば、ワーママの働き方は大きく変わっていくかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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