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1人1台端末で新たな問題が学校で生まれようとしている

前屋毅フリージャーナリスト
(提供:m.tsukasa/イメージマート)

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響で一気に加速したのが、「GIGAスクール構想」を実現するための「1人1台端末」である。しかし、そこには思いがけない問題が潜んでいるようだ。

■さらに教室を狭くする1人1台端末

「GIGAスクール構想」では当初、1人1台端末は2023年度までに実現される予定だった。それが新型コロナでリモート授業の必要も叫ばれるなかで、早期の実現を目指すことになり、今年度中(来年3月中)に全国の大半の公立小中学校で1人1台端末が実現される見通しとなってきている。

 そうしたなかで学校現場で浮上してきたのが、端末の保管場所の問題である。1人1台が支給されるのを前に、保管場所の確保が教育委員会から学校に指示されているという。

 それも、「どこでもいい」ということではなさそうだ。「保管は教室内と指定されています」と、ある教員が打ち明ける。

 タブレットやパソコンは貴重品であり、保管には安全を期すのが当然である。教室内での保管となるのも頷ける。しかし、それは頭の痛いことである。先ほどの教員が続ける。

「ただでさえ狭すぎるのが、教室の現状です。そこに40人分のパソコンの保管場所を確保するとなると、狭い教室がさらに狭くなってしまうんです」

 新型コロナ予防で「3密(密集、密接、密閉)」を避ける指導が学校では行われている。しかし狭い教室がさらに狭くなることで、3密状況に拍車をかけることになる。どう指導していくのか、教員にしてみれば頭の痛い問題なのだ。

 教室内に保管場所を確保するとなれば、その管理も教員の仕事になってしまう。破損、紛失に気を遣わなくてはならなくなるわけで、教員にしてみれば新たな仕事が増えることになる。

■持ち帰れない端末は役に立つのか

 教室内に保管することになれば、子どもたちが自宅で利用することは不可能になる。それで、1人1台を活かした学習になるのだろうか。

 自宅に端末のある子はそれで学習ができるが、自宅に端末のない子は端末を使った学習ができないことになる。「差」が生まれるわけだ。

 その「差」があるなかで教員は指導しなければならないことになる。教員にとって、かなり頭の痛い事態になるかもしれない。

 そもそも、なぜ、子どもたちが持ち帰ることを前提にしない1人1台端末なのだろうか。持ち帰ればこそリモート授業も可能になるし、自宅に端末がある子とない子の「差」も生じない。狭い教室をさらに狭くして、無理に保管場所を確保する必要もない。

 中途半端な1人1台端末が、さらに教員を悩ますことになるかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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