文科省の専門家会議からも、全国学力テスト(全国学力・学習状況調査等)を全員参加の「悉皆方式」で行うことを疑問視する声があがっていることに注目すべきである。

 8月31日、全国学力テストのCBT(コンピュータ使用型調査)化に関して、ワーキンググループが小規模から試行する方向性をまとめたのを受けて、専門家会議が開かれた。その会議で以下の意見が委員からあったことを『教育新聞』(8月31日電子版)が伝えている。

「すでに自治体で学力を測る調査を行っている。国は全国的な状況把握のための抽出調査として、自治体との役割分担をしてはどうか」

 全国学力テストは小学校6年生と中学3年生を対象に行われており、その成績順位をめぐり無用な競争を煽っているとの批判が以前からある。成績の悪いことに怒った自治体の首長が成績低位の学校の校長名を公表すると公言したり、成績を校長の報酬に反映させると言いだす首長まであらわれた。成績、つまり全国学力テストでの順位を上げさせるための「脅し」である。

 こうした学校へのプレッシャーは大なり小なり全国的にあることで、そのために正規の授業時間を犠牲にして過去問題をやらせたりのテスト対策は、もはや全国の学校で「常識」になっていたりもする。ただでさえ足りない授業時間を奪われることにくわえて、点数を上げなくてはならない教員、そして子どもたちにのしかかるプレッシャーは相当なものである。

 そういう過度な競争を招いているのは、全国学力テストが「悉皆方式」で行われているからだ。全員参加だからこそ「条件は同じ」とみなされて比較の対象となりやすい。これが全員参加ではなく、参加する学校を絞る「抽出方式」ならば、「条件は同じ」といえないので比較の材料にはなりにくい。

「悉皆方式」から「抽出方式」にすれば、現在のような過度な競争を防ぐことにはなる。全国学力テストを行うこと自体に問題がないでもないが、少なくとも「競争のための競争」を招いている現状だけは多少とも是正されるはずだ。

 もちろん「悉皆方式」への疑問が、先の専門家会議の全員から述べられたわけではない。「現場の教師の指導改善に果たす大きな役割はぜひ維持してほしい」との意見もあったという。

 しかし指導改善に役立てるなら、全国学力テストでなくても、自治体ごとの学力テストでもじゅうぶんだし、もっといえば各学校で学力の把握は可能なはずである。わざわざ全国的な学力テストで、しかも悉皆方式でやる意味はない。

 全国学力テストのCBT化ばかりに話題が振れそうな気配だが、それも検討している専門家会議で、「悉皆方式」への疑問が示されていることに、もっと注視すべきである。