大学入試日程は、ほんとうに受験生本位になったのか

(写真:アフロ)

 来年の大学入学共通テストが予定どおり来年1月16、17日に行われることが合意されたのは、6月17日のことだった。文部科学省(文科省)が大学、高校関係者と開いた協議会で方針が決められた。

 その前日(6月16日)に全国高等学校長協会(全高長)が、大学入学共通テスト、国公私立すべての大学の総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)、一般入試について、「実施時期を一体的に1ヶ月程度後ろにずらすことを求める」という要望書を文科省に持参している。ところが、その受け取りを文科省からは拒否されている。

 全高長は、その前日に記者会見を開いて要望書の内容を説明している。それによれば、要望の要点は次の2点だった。

1.新型コロナウイルス感染症拡大防止のために本来の学習の機会を失った受験生が、学習指導要領が定める学習の履修機会を確保して、安心して大学入試に臨めるようにするために大学入試時期を1ヶ月後ろにずらす。

2.新型コロナウイルス感染症による臨時休校などがさらに実施された場合、入試時期などについて柔軟な対応を求める。

 安倍晋三首相による突然の休校要請を受けて全国の学校は休校へと突入し、新型コロナウイルス感染症がなかなか終息しないなか、その期間はズルズルと伸びていった。授業は遅れ、当然ながら学校での受験対策にも遅れが生じた。その遅れを1ヶ月で挽回できるかどうかは判断が難しいところだが、ともかく、少しでも挽回してから子どもたちが入試に臨めるようにしたい、というのが全校長の考えだったとおもわれる。

 それを文科省が拒否したのは、同省が行ったアンケート結果も影響しているようだ。大学入学共通テストの日程について質問したもので、全国の国公私立高校5276校のうち4318校から回答があった。

 それによれば、当初予定どおり実施すべきとの回答が30.0%、当初予定どおり実施として予定どおり実施できなかった場合の予備日の日程も明確にすべきが39.0%だった。つまり、予定どおりの実施を求める意見がほぼ7割を占めていたことになる。

 全高長の要望書は、このアンケート結果と照らし合わせれば、「一部の考えでしかない」といわれても仕方ない。文科省は「すべての高校の意見を反映させてほしい」と受け取りを拒否したらしいが、「多くの高校は予定どおりの実施に賛成している」という意味が込められていたのだろう。

 ただし、3割の高校は、予定どおりの実施に異を唱えているのだ。全高長の要望書は、その3割を代表したものといえる。その「少数意見」は、無視された。そして、当初予定どおりの大学入試実施に向けて事態は動きはじめている。

 入試が1ヶ月後送りされれば、高校としては、それに合わせたスケジュールを新たに組まなくてはならない。来年の受験生である3年生だけでなく、2年生、1年生にも影響してくる。

 大学入学共通テストを実施する大学入試センターにしろ、大学にしろ、スケジュール変更となれば、さまざまな見直しを余儀なくされる。予算的にも人員確保的にも、簡単なことではないだろう。

 そうした影響を極力減らすためには、「当初予定どおりの実施」を選択するに越したことはない。来年の受験生は負担を強いられることになっても、高校や大学入試センター、大学の負担は小さくできる。

 しかし、それで、ほんとうにいいのだろうか。もっと受験生本位で考えてみる姿勢は必要ないのだろうか。