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教員採用面接での「倫理観」は管理強化か

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 埼玉県教育委員会は小、中、高校の教員採用試験で、面接試験の評定項目に「倫理観」を追加することを決めたそうだ。規範意識を厳しく審査するためで、8月中旬から始まる2次試験の面接から実施する。

 セクハラなどの不祥事を防止するためらしく、『読売新聞』(2018年7月22日付電子版)によれば、小松弥生教育長は「不祥事根絶は県教委にとって喫緊の課題。全力で根絶に取り組みたい」と語ったそうだ。

 同県では教職員や教育局の職員の懲戒処分(さいたま市教委分を除く)が、2014年度から毎年20件以上で推移しており、16年度は懲戒免職者が過去10年で最多となる20人にのぼるという最悪の状況にある。その改善のための策だというのだが、はたして効果はあるのかどうか疑問である。

 不祥事根絶につながる「倫理観」なるものが、面接だけで見抜けるものだろうか。もしも可能であるとするなら、従来の面接に問題がありすぎた、ということにもなる。

 不祥事を起こす人物であるかどうかは、簡単に見抜けるものではないはずだ。簡単に見抜けるなら、不祥事を事前に防止することも容易にちがいない。そもそも問題のありそうな人物を採用しないだろうから、不祥事の要因の多くは採用後にあるとも考えられる。採用面接で「倫理観」を厳しくチェックしたところで、「不祥事の根絶」につながる可能性は低いのではないだろうか。

 それよりも、「倫理観」といいながら、教委にとって不都合な人物を除くためのチェック強化につながることのほうが危惧される。教委による管理が強化されるだけなら、不祥事の根絶にはつながらないにちがいない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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