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大学1、2年から就活で大学の存在意義もなくなる

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

「売り手市場だというのに、学生の頭は就職のことでいっぱいだ」と、ある大学の教授は嘆いた。就職する学生の数より企業の採用する数のほうが多いのだから、学生は「選んでやる」という立場のはずである。しかし、「選んでもらう」ことに頭がいっぱいで、まったく授業に身が入っていない、というのだ。

 そんな矢先、『読売新聞』(11月28日付、電子版)が「大学1、2年生に企業が食指」というタイトルの記事を掲載していた。「大学1、2年生向けにインターンシップ(就業体験)を開くなど、企業が低学年の学生に接触する動きを見せている」、というのだ。そして記事は、「就活のさらなる早期化・長期化を懸念する声もある」と指摘している。

 大学・大学院の新卒者採用については、日本経済団体連合会(経団連)がガイドラインを定めている。2018年度入社予定者の採用選考については、広報活動(説明会)の解禁を2017年3月1日以降とし、選考開始日を2017年6月1日以降としている。

 実は、これも揺れている。2016年度入社予定者について、それまで説明会解禁は2014年12月1日だったのだが、これを2015年3月1日とした。選考開始日も、2015年4月1日から2015年8月1日へと後ろ倒しにしている。

 就職活動の早期化で学生の本分である学業に影響がでることを懸念する、というのが後ろ倒しにする経団連の理由だった。もちろん表向きのことで、就活期間を短くすることで企業側の負担を軽くする狙いがあったはずだ。経団連の会員は、いわゆる一流企業が多いので、期間を短くしたほうが多くの学生を集めやすいとの計算があったのかもしれない。

 しかし、反発が大きかった。ブランド力の弱い企業では、短い期間のために説明会がブランド力の強い企業と重なってしまえば学生がそちらに流れてしまい、不利になるからだ。

 そこで、選考開始日を少しだけ戻して6月にしたのだ。4月だったものが8月になり、そして6月になったというわけである。売り手市場といわれるなかでの、企業の人材獲得合戦の表れでしかない。

 企業が採用に必死になるのは、売り手市場という状況だけではない。人材不足が深刻な企業とはいえ、「不要な人材」はいらない。「必要な人材」だけが欲しい。企業の要求は、はっきりしてきている。

 不要か必要かを見極めるためには、やはり時間が必要である。だから、いったんは後ろ倒ししたガイドラインも再び前倒ししたともいえる。企業が「必要な人材」しか採らないとなると、これは狭き門となる。授業はそっちのけで就活のことしか考えられなくなる。

 経団連がいった「学生の本分は学業」などは、企業も学生もとっくに忘れてしまっている。

 そして話を戻せば、大学1、2年生向けのインターンシップを企業が開き始めたという。採用活動の一環であることは、念を押すまでもない。企業の採用活動の対象が1、2年生にまで早まったということで、学生側でも「狭き門」をくぐるためにインターンシップに参加する動きが加速するはずである。

 大学に入学したら即就活、というわけだ。学生の本分は学業などとは、冗談でしかなくなる。大学の存在意義も薄くなる。就活の激化で、大学そのものが不要となりかねない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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