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センスのない政治にそっぽを向きつづける若者たち

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 第48回衆議院選挙(衆院選)の投開票が22日に行われたが、18歳と19歳の投票率(小選挙区)について、一部の投票区を抽出して調査した結果を24日、総務省が発表した。

 それによれば投票率は41.51%と、全体の投票率53.68%を大きく下まわる結果となった。全体の投票率は戦後2番目に低い数字だったが、それを大きく下まわったということは、若者の政治離れが「深刻」な状況にあることを示している。

 文部科学省は、自ら考え、主体的に判断・行動して問題を解決する能力を「生きる力」と定義づけて、それを日本の子どもたちに定着させると豪語している。選挙における投票は、自ら考え、行動して問題解決する、そのものである。

 その投票で若者の無関心が顕著だということは、文科省のいう「生きる力」に欠けている証拠ともいえる。そうした若者にしてきたのは、政府であり文科省である。全体の投票率が低いのも、「生きる力」を軽視してきた文科省の教育行政の結果でしかない。

「生きる力」が重要だといわれながらも、今回の選挙で各政党が前面に掲げた教育政策は「無償化」ばかりだった。「札ビラで顔を叩く」ような政策に固執するのも旧態依然でしかない。

 若者にとって教育の無償化は、はたして魅力なのだろうか。親にしてみれば間違いなく魅力なのだろうが、多くの若者にとっては、そうでもないはずだ。一律ではなく、ほんとうに必要なところにほんとうの意味での無償化を実施したほうが現実的である。それでも一律にこだわるのは、「政治の人気取り」が優先しているからにほかならない。あまりにもセンスがなさすぎる。

 若者たちにとって、無償化が無意味とはいわないが、それ以上に関心を惹くのは「魅力的な教育内容」ではないだろうか。それを選挙で真剣に訴える政党は、残念ながら、なかった。そうした政治の姿勢も、若者の政治離れをひきおこしている要因である。

 若者の投票率の低さを評価するわけではないが、「選挙に行け」と言う前に、教育もふくめて身のある政策論議を展開しないと、関心を惹くことはできない。センスのない政治は、若者の政治離れに拍車をかけることにしかならない。

 

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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