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自民党敗北より深刻なのは民進党敗北ではないでしょうか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

追い込まれているのは、自民党より民進党である。自業自得とはいえ、この状況が意味するところは重い。

7月2日に投開票が行われた東京都議会議員選挙(都議選)は、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が49議席を獲得するという「勝ち過ぎ」で終わった。小池知事派は都議会で第1党になると同時に、選挙協力を結んだ公明党などと合わせれば79議席と過半数の64議席を大きく上まわった。対して自民党は、改選前の57議席から23議席へと大きく減らし、まさに惨敗となった。

この結果を受けて民進党は他の野党と組み、「安倍政権への不信が高まっている」と攻勢を強める構えのようだ。まるで自ら自民党を追い詰めたような言い様だが、自民党以上に深刻なのが民進党ではないのだろうか。

今回の都議選で民進党は、離党も相次いだことから選挙前に7議席に激減していたにもかかわらず、選挙後の獲得議席数はわずかに5でしかなかった。23人もの立候補者を擁立したにもかかわらず、この結果である。

これに野田佳彦幹事長は、「自民と都民ファーストの会の間で埋没感があった」と記者団に述べた。自分たちに責任はない、とでも言ってるかのようだ。

しかし共産党は、今回の選挙で議席を17から19に伸ばしている。「埋没」なんかしていないのだ。

危機感のなさ、無責任さ、民進党は最大の危機に陥っている。そもそも、国政で「自民党一人勝ち」の状態にしてしまった大きな責任は民主党にある。都民ファーストを生み出した小池知事誕生も、党のメンツにこだわって政局を読めなかった民進党に責任の大半がある。

「埋没した」などと言っていられない状況なのだ。もはや野党として成り立っていないのが民進党の現状だともいえる。ただ「反対」を唱えていれば「万年野党」の座に安堵できている時代は、とうの昔に終わっている。にもかかわらず民進党は、「反対」だけに終始している。その実態を見抜かれたのが、今回の都議選の結果でしかない。

選挙では反自民だった都民ファーストだが、政策面では反自民とは言いがたいところも多い。これから自民党の対抗勢力でいられるかどうかは、微妙なところである。

都議選で、民進党は野党としての役割すら否定された。野党そのものの存在感が認められなかった選挙といっていい。「反対」以外に、民進党は自らの存在意義を国民にアピールしていけるのだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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