JA全中廃止案の「撤回」は自民党農林族の無責任さの表れ

自民党の農林関係合同会議は10日、政府の規制改革会議が示した全国農業協同組合中央会(JA全中)の廃止案を撤回したことについて、新聞各紙は「政府案の後退」と報じた。しかし、「撤回」にばかり目を奪われがちだが、全中がもっていた権限が現状のまま維持されるということではない、ことに注意を払うべきだ。

自民党案では、JA全中は廃止しないが「自律的な新たな制度」に移行する、となっている。現在のような農協法を後ろ盾とした中央会制度の見直しは求めているわけで、規制改革会議の案を完全に否定したわけではない。

明言は避けても、「改革」の必要性は認めている。安倍晋三周辺には全中の強い権限を弱めることに固執する声も強く、何らかの変化をJA全中も受け入れざるをえないだろう。

自民党がJA全中擁護にまわったのは、選挙への影響を考えたからにほかならない。8日夜には自民党農林族幹部が都内のホテルで話し合ったが、そこにはJA全中の萬歳章会長も同席していたというのだから、はなから過激な改革を行う気などないことがわかる。

10日の合同会議でも、「JAがわれわれの選挙を支えてくれている」という声が相継いで出たそうだ。日本の農業うんぬんよりも、選挙大事でしかない。

それでも廃止案の完全撤回ではなく、新たな制度への移行の方針を自民党として示したのは、「JA全中に問題あり」という意識が自民党内にも強いからにほかならない。選挙のために表向きはJA全中を擁護しても、裏では見放す可能性も高いということだ。

今後、JA全中が新たな制度に移行するにあたって、その権限を弱める方向に向かうことは間違いない。そうなったとき日本の農業はどうなるのか、その議論をする必要がある。そういう重大な議論を、選挙のことしか考えない自民党農林族に期待できないことだけは確かである。