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LCCへの苦情、消費者にも問題

前屋毅フリージャーナリスト

■LCCへの苦情が全体の4割

本格的なLCC(格安航空会社)が成田空港の国内線に就航して7月3日でまる1年が過ぎたが、そのLCCへの苦情も増えている。

独立行政法人「国民生活センター」に寄せられた航空サービスに関する相談件数は2012年度で1477件あったが、うち579件がLCCに関するものだった。輸送人員実績ではLCCは全体の1割前後でしかないにもかかわらず、「苦情」では全体の約4割を占めていることになる。

そうした苦情のうち「接客対応」では、LCC以外では相談全体の34.3%(2009~2013年5月)だが、LCCは44.6%(同)も占めている。苦情の半分近くを接客対応の悪さが占めている、というわけである。

これをもって、「LCCはけしからん」という結論につなげるわけにはいかない。サービスを怠っている、ということにもならないのだ。

■消費者の認識不足にも問題との指摘

本格LCCではないがスカイマークが昨年、「接客は補助的なものと位置づけております」として「サービスは最小限しかやりません」的なサービス方針を乗客に示して物議をかもしたことがある。「けしからん」との反応が多かったのだが、スカイマークにしてみれば、サービスコストを削減して運賃を低く設定しているのだから仕方のないことなのだ。ただし、あまりにストレート過ぎて消費者を軽んじているような印象をあたえてしまったことについては、反省が必要だったとおもう。

LCCは、スカイマーク以上の低運賃を提供している。それを実現するためには、スカイマーク以上にサービスコストを削減しなければならないはずだ。日本航空(JAL)や全日空(ANA)のようなフル・サービスの航空会社にくらべれば、当然ながら「サービスが悪い」となるわけだ。

もちろん、「悪さ」が行き過ぎると問題である。しかしJALやANAにくらべてサービスが悪いと苦情をもちこむのは、消費者側にも行き過ぎがある、といわざるをえない。

LCCに関する苦情が増えていると発表した国民生活センターも、「業界側の準備不足や、消費者への説明不足によると考えられる相談も多い」としながらも、「従来の航空サービスとの違いや、新しいシステムに不慣れな、消費者の理解不足が一員とみられる相談も含まれている」と指摘している。LCC側だけの非を問うことはできない、と判断しているのだ。

だからといって、「苦情は場違い」とLCC側が開き直った姿勢を示せばカドがたつ。低運賃を実現するためにサービスを最小限に抑えているという認識を広める努力をLCC側がさらにすることと、それに耳を傾ける消費者側の姿勢が必要である。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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