育児休暇中にテレワークを導入する自民党の案は、情勢に優しいのか?酷なのか?

■育児休業給付金制度を誰のために改めるのか

 自民党は、かなり女性票を意識しているようだ。しかし、一歩間違えば、批判の対象とされかねない危うさをはらんでいる。

 インターネットとパソコンが普及した現在、これらを利用してオフィス以外、自宅でも仕事するスタイルが「テレワーク」だ。いわゆるホワイトカラーの仕事は、パソコンを使う比率がかなり上がっている。パソコン抜きには仕事するのが難しい、といっても過言ではないような状況だ。

 そうしたなかで、数年前から注目されているのがテレワークだ。パソコンを使って自宅で仕事ができるなら、通勤時間を節約できるし、満員電車で体力を消耗することもない。効率的な仕事の仕方、というわけだ。

 自民党は安倍晋三政権のいわゆる「成長路線」に、育児休暇(育休)中の女性にテレワークを普及させることで育休中の収入確保やスムーズな職場復帰をはかる案を盛り込みたい考えだという。一見、仕事と育児を両立させたい女性に対する支援のようにおもえる。

 現在の制度では、開始前の2年間に一定の条件を満たしていれば育休をとることができる。さらに雇用保険に加入していれば、育休前の50%の額を育児休業給付金として受け取ることができる。

 ただし、この育児休業給付金を受け取るためには月に20日以上休むことが条件になっている。それも、1日1時間でも仕事すれば1日の就業とみなされてしまう。育児休業給付金をもらうためには、仕事をしてはいけないのだ。

 そこで自民党は、育児休業給付金がもらえる条件を「就業10日以下」から「月80時間以内」と変えようとしているらしい。1日8時間労働とすれば10日だから同じようだが、これがテレワークによる在宅勤務となると違ってくる。1日4時間の在宅勤務なら週に仕事ができるのは5日間ということになるのだ。

 育児でキャリアを中断することなく、企業も有能な人材に仕事を継続させられるというわけだ。だが、そうそう簡単にはいかないだろう。

■女性をこき使う策なのか

 国土交通省の「平成24年度テレワーク人口実態調査」は、在宅型テレワーカー率は「前年比で6.7ポイント増の14.2%となっている」としている。この表現だけだと、テレワークで働くテレワーカーが増えつつある印象だ。

 しかし在宅テレワーカーの同省の定義は、「自宅(自宅兼事務所を除く)でICT(情報通信技術)を利用できる環境において仕事を少しでも行っている(週1分以上)人」となっている。朝から夕方まで自宅で仕事する在宅勤務のイメージとは大きく違う。

 つまり、国交省は「利用が増えている」といいたいのだろうが、実際には思ったほど普及していない。導入している企業は増えてはいるが、利用者は予想以上に伸びていないのが実態なのだ。

 理由はいろいろあるが、テレワークに詳しい人物は「管理したがる管理職の存在」を第一にあげた。自分の部下が仕事しているかどうか自分の目で確認しなくては安心できない。パソコンの前に座っている部下の姿を見ていなければ安心できないタイプの管理職が多いというのだ。部下も同じで、出社して上司の近くにいるだけで仕事したような気になっている。

 これでは在宅勤務ができるわけがない。実際に月に何度か在宅テレワークしている人に訊くと、「サボってるんじゃないかと上司に思われていないか気になる」といって笑った。だから、必要以上にメールを送ったりする。たいへんな気苦労だ。だから月のほとんどを在宅という人はきわめて希で、多くても月に1回か2回という人が多い。

 そういう状況が現実あるなかで産休期間中にテレワークによる在宅が導入されれば、気苦労ばかりが増えるだろう。育児でたいへんななかで、仕事でもいっそうの気苦労を強いられるというのでは、かなわない。

 自民党の視点が悪いとはいわない。しかし考慮の浅い策に終われば、「女性をこき使うだけの策じゃないか」と批判をあびかねない。票を獲得するどころか逃がすことになっては自民党の意図するところではないはずだ。自民党には踏み込んだ議論のうえに案をかためてもらいたい。