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ダニやホコリは鼻炎の大敵 年末の大掃除で気をつけるポイントを医師が解説

前田陽平耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医
大掃除の季節。注意するべきポイントは?(写真:アフロ)

年末が近づいてきて、これから大掃除をされる方も多いと思います。

外来でアレルギー性鼻炎の患者さんから「大掃除のときに気を付けることはありますか?」と聞かれることがあります。

アレルギー性鼻炎による症状を抑えるために、年末の大掃除はもちろん、普段の掃除で気をつけておくべきポイントを医師の目線から解説します。

いまや国民の半数近くが罹患 アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎は非常に増えている

アレルギー性鼻炎という病気の名前は皆さんご存知だと思います。アレルギー性鼻炎は非常に増加していて、今や国民の半分近くが罹患していると考えられています。アレルギー性鼻炎は鼻水・鼻づまり・くしゃみという三主徴といわれる症状が中心です。また、勉強や仕事、家事に支障をきたすばかりではなく、外出や人付き合いを避けるようになってしまったり、睡眠障害や疲労・イライラ感などを引き起こしたりします。命に関わることはないものの、生活の質を大きく損なう病気です。

アレルギー性鼻炎は増加している。掃除をきっかけに症状が強く出る方も。
アレルギー性鼻炎は増加している。掃除をきっかけに症状が強く出る方も。

アレルギー性鼻炎は、ホコリに含まれるダニやスギ花粉などの「抗原(アレルギーを起こす物質)」が鼻に入ることで症状を引き起こすので、自分の周りの環境で「抗原」が鼻に入らないようにしておくことが大事です。

ホコリ(ハウスダスト)はアレルギーを起こしますが、その中でもアレルギー性鼻炎の抗原として特に重要なのがダニ、特にチリダニなのです。

アレルギー性鼻炎の有病率自体は次の図のようになっています。10代以上では高い有病率となっています。このグラフでわかることとして「子供のころはアレルギー性鼻炎なんてなかったのに大人になってから出てきた」ということは珍しくない、ということですね。

鼻アレルギー診療ガイドラインより筆者作成
鼻アレルギー診療ガイドラインより筆者作成

アレルギー性鼻炎ははどのように起こるのか?

アレルギー性鼻炎はどのように起こるのか?ということを考えてみましょう。アレルギー性鼻炎という病気は「過剰な免疫反応」であるということができます。たとえばダニのアレルギーであればダニを吸入し、ダニを体が「敵」だと認識します(医学的には「感作される」といいます)。その後でダニを吸入すると様々な作用が起こってくしゃみ、鼻水などで排出させようとするとともに、粘膜を腫脹させてさらなる侵入を防ごうとする、これが鼻づまりというわけですね。もちろんどんな人でも起こりうる病気です。

室内のダニを除くために 掃除で気を付けること

アレルギー性鼻炎を引き起こす抗原となるハウスダストやダニは定期的に掃除をしていても、なかなかきれいに無くなるということはできません。しかし、どこをどのように、どれくらいの頻度で掃除すればいいのかあまり分かっていない方も多いのではないでしょうか?

一日のうちで睡眠の時間の割合というのはとても大きい。布団におけるダニ対策は非常に重要になる。
一日のうちで睡眠の時間の割合というのはとても大きい。布団におけるダニ対策は非常に重要になる。

普段の掃除、また今年の大掃除では室内のダニの除去のために、以下の7点に注意してみてください。(鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年版より)

①掃除機がけは吸引部をゆっくりと動かし、1畳あたり30秒以上の時間をかけ、週に2回以上行う

②布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめる

③ベッドのマット、布団、枕にダニを通さないカバーをかける

④布団は週に2度以上干す。困難な時は室内干しや布団の乾燥機で、布団の湿気を減らす。週に1回以上、掃除機をかける

⑤部屋の湿度を45%以下、室温を20〜25に保つよう努力する

⑥フローリングなどのホコリの立ちやすい場所は、拭き掃除のあとに掃除機をかける

⑦シーツ、布団カバーは週に1回以上洗濯する

すべて守ることはかなり難しいと思いますが、たとえば、まめにゆっくりと掃除するということは比較的わかりやすい大事なポイントだと思います。また、普段からシーツや布団カバーを洗濯することが大事ですね。ベッドやふとん・枕においてダニを通さないカバーをかけることも有効ではないかと考えられています。

順番に見ていきましょう。①の1畳あたり30秒以上というのは実際にやってみるとわかりますがかなりゆっくりです。特に大掃除に関係してくるのは④と⑥といったところでしょうか。⑤でも書いてありますが、ダニは高い湿度や布を好みますから、布団を乾燥させておくというのは大事なポイントです。大掃除の時に限らずしばしば干しておくことをお勧めします。⑥も意外と知らない方が多いですが、ホコリの立ちやすい場所はモップや雑巾で拭き掃除をしてから掃除機をかけるようにしましょう。

では、ハウスダストを掃除するにはいつがいいか?ということですが、基本的には朝がよいとされています。人が起きだして活動すると舞い上がるからですね。大掃除では普段はなかなかこまめに掃除できない場所もきれいにするように意識するとよいかもしれませんね。

画像制作:Yahoo!JAPAN  鼻アレルギー診療ガイドライン2020の内容を元に作成
画像制作:Yahoo!JAPAN  鼻アレルギー診療ガイドライン2020の内容を元に作成

掃除の際の適切な格好は?

アレルギー性鼻炎の方はマスクをしっかりされることをお勧めします。また、眼の症状もあるという方ならゴーグルも良い対策です。服装についてはあまり気にしすぎなくてよいと思いますが、強いて言えば表面がつるつるした服の方がそこに抗原が付着することをあまり気にしなくてよいと思います。大掃除後の服は、アレルギー性鼻炎の対策という意味ではすぐに洗濯するほうがよいでしょうね。

マスクはもちろん、眼の症状が出る人の場合はゴーグルも有効
マスクはもちろん、眼の症状が出る人の場合はゴーグルも有効

アレルギー性鼻炎の治療においては「抗原の回避」ということが非常に重要であるとされています。この記事で抗原の回避について少し知識を増やしていただければ幸いです。

掃除のときに症状がひどくなる人は事前の受診も検討を

大掃除のたびにくしゃみや鼻水、目の充血などで困る方はダニ・ハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎の可能性があります。今年の大掃除には間に合わないかもしれませんが、アレルギー検査の適応となる場合もありますし、なにより大掃除の前から加療することで症状が軽くなる場合もありますから、お近くの耳鼻咽喉科でご相談して頂ければと思います。

症状がいつも出る方は耳鼻咽喉科医院の受診も検討を
症状がいつも出る方は耳鼻咽喉科医院の受診も検討を

耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医

2005年大阪大学医学部医学科卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教を経て現在JCHO大阪病院耳鼻咽喉科部長。雑誌取材・メディア出演多数。臨床・研究の専門領域は鼻副鼻腔疾患・アレルギー疾患・経鼻内視鏡手術など。一般耳鼻咽喉科についても幅広く診療している。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くTwitter(フォロワー4万人)などで発信している。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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