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NHKが「割増金」求めて未契約世帯を提訴 裁判どうなる? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:YUTAKA/アフロ)

NHKが放送受信契約の締結や受信料と割増金の支払いを求め、東京都内の3軒の未契約世帯を提訴しました。これまでもこうした民事訴訟に及んだ例はありましたが、2022年10月に割増金制度が導入されて以後、これを実行したのは初めてとなります。

この割増金は(1)不正な手段により受信料の支払いを免れたり、(2)NHKを受信できるテレビなどを設置した翌々月末までに正当な理由なく受信契約を申し込まなかったりしたら、受信料に加え、その2倍相当の金額を請求できるというものです。

NHKは個別の事情を総合勘案して割増金の請求に至ったと説明していますが、一方でこの提訴には反発の声も上がっています。受信料を巡る最高裁のスタンスを知っておくと、今後この裁判がどうなるのかが推察できることから、参考となる記事をまとめました。

▼放送法はNHKを受信できるテレビの設置者に受信契約の締結を義務付けたもので、憲法にも違反していない

▼はじめからテレビが設置されている賃貸物件の入居者にも受信契約の締結義務がある

▼自宅にテレビがなく、ワンセグ携帯だけを持っている者にも受信契約の締結義務がある

▼NHKだけが映らないフィルター付きテレビの設置者にも受信契約の締結義務がある

以上のように、ことごとくNHKに軍配を上げてきた最高裁のスタンスからすると、たとえ提訴された3世帯が割増金制度について憲法違反だなどと主張して争ったとしても、テレビの設置が明らかであれば、勝ち目は薄そうな情勢です。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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