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プロ野球選手の進路に立ちふさがって執拗にサインを求める迷惑行為 その罪と罰

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

 プロ野球選手によるサインなどのファンサービスに関し、千葉ロッテマリーンズが出した声明が話題だ。一部で周囲の迷惑になる過剰な行動をとる者がおり、危険な事象もあったことから、控えてほしいという。

軽犯罪法違反に問われる

 これは、例えば夜半の空港でタクシーに乗ろうとした選手の進路に立ちふさがったり、複数で囲み込んだりし、執拗にサインや写真撮影を求めるといった迷惑行為を念頭に置いたものだろう。

 こうした接触を繰り返され、恐怖を感じた選手までいるという。人間だから、疲れていたり次の予定が迫っていたりすれば、先を急ぐために相手の腕を払いのけたり、胸を押して進路をあけようとしたりしても不思議でない。

 この点、軽犯罪法は、次のような行為に及んだ者を処罰の対象としている。

・他人の進路に立ちふさがったり、その身辺に群がって立ち退こうとしない者

・不安や迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者

 これに違反すれば、拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)か科料(千円以上1万円未満の金銭罰)に処される。

「ストーカー行為」になる場合も

 さらに、ストーカー規制法は、特定の相手に対する好意の感情を充たすといった目的で、次のような行為に及ぶことを規制の対象としている。

・つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがること

・義務のないことを行うように要求すること

 相手の身体の安全などが害されたり、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で繰り返せば、「ストーカー行為」として処罰の対象となる。最高で懲役1年、罰金だと100万円以下と軽犯罪法違反よりも重い。

 このように、選手に対して度が過ぎた迷惑行為に及べば、単なるマナー違反のレベルを超え、罪に問われることもあり得る。選手がこれを排除しようとするのは正当な行為にほかならない。

 中には転売目的で執拗にサインを求める集団もいるようだが、選手個人だけで対処しきれる話ではない。今回の千葉ロッテのように、交通機関や宿泊施設などではサインに応じないといった方針を球団が決めて公表するといった毅然とした対応も重要ではないか。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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