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フリマアプリで本物の化粧水を定価より安く販売 それでも警察に摘発されたワケ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:當舎慎悟/アフロ)

 エステ店などで取り扱われている本物の化粧水をフリマアプリを介して定価より数百円安く販売した女性が警察に書類送検された。なぜか――。

「化粧品」の販売規制は?

 病院で処方されて余った薬などの「医薬品」の場合、知事の販売業許可を得ずにフリマアプリなどで勝手に販売したら、それだけで薬機法違反に問われる。最高刑は懲役3年、罰金だと300万円以下だ。

 しかし、化粧水のような「化粧品」の場合、国内で製造された市販の正規品であれば、こうした規制がない。フリマアプリでの販売が薬機法違反として処罰の対象となるのは、次のようなケースだ。

(1) 海外で購入して日本に持ち込んだり、個人輸入した「海外製」の化粧品を販売(最高刑は懲役3年、罰金だと300万円以下)

(2) 手作りコスメや大瓶から小瓶に小分けしたものなど、製造販売業の許可を得ずに自ら製造した化粧品を販売(最高刑は懲役3年、罰金だと300万円以下)

(3) 出品説明欄などにその化粧品には認められていない効果を記載して販売(最高刑は懲役2年、罰金だと200万円以下)

(4) 製造番号やロット番号など法令で表示が義務付けられている記載をしなかったり、削除して販売(最高刑は懲役2年、罰金だと200万円以下)

 これらはフリマアプリの運営会社が定めている利用規約やガイドラインでも出品禁止品として挙げられているが、それでも出品者があとをたたない。

製造番号は重要

 このうち、(4)の製造番号の記載が法令で義務付けられているのは、その化粧品によって何らかの健康被害が生じた場合、いつどこで製造、出荷、販売されたものなのか、製造番号から追跡できるからだ。

 逆に言うと、この製造番号を意図的に削除して販売するのは、入手ルートを割り出せないようにするためだ。万引きなどの盗品や過剰在庫の転売品、店員による横流しなどの事情が挙げられる。廃棄対象の古い化粧品の場合には、いつ製造されたものか特定できないようにする狙いもある。

 今回の事件も(4)のケースだった。兵庫県に住むアルバイトの女性は、昨年7~8月、化粧水が入っているスプレー缶の底に印字された製造番号を削除して出品し、計2本を定価より数百円安い計約1万7千円で販売した。

 この出品を発見した化粧品会社の社員が警察に相談し、薬機法違反による摘発に至った。8月20日に書類送検された女性は、「他にも同じようなやり方で販売している人がおり、製造番号を消せば値下げしていても不自然ではないし、売れると思った」などと供述し、容疑を認めているという。警察は入手ルートの解明を進めているところだ。

 このように、フリマアプリでの安易な小遣い稼ぎが警察沙汰に発展することもあり得るので、法令による規制を踏まえた運営会社の利用規約やガイドラインには注意を要する。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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