河井克行元法相らから選挙の買収金を受け取った議員ら100人に対する検察の不起訴処分について、検察審査会は19人を「不起訴相当」、46人を「不起訴不当」、35人を強制起訴もあり得る「起訴相当」とした。

議決の内訳

 検察審査会による議決の内訳は次のとおりだ。(1)はこの議決で刑事手続が終わりとなるが、(2)(3)は検察が再捜査を行い、改めて刑事処分を決めなければならない。

(1) 不起訴相当・19人:受領額が10万円未満の者や10万円以上でも受領直後に返金した者ら

(2) 不起訴不当・46人:受領額が10万円以上だが辞職した者ら

(3) 起訴相当・35人:辞職していても受領額が300万円、200万円、150万円といった高額な者や、10万円以上を受領しながら辞職しなかった者ら 

 検察審査会は、その議決の中で、「買収側を処罰して、受領側を全く処罰しない結論は、重大な違法行為を見失わせる恐れがある」「公職にある者は責任をとりわけ厳しく追及されるべきだ」と断じている。素朴な市民感覚を反映した至極当然の判断にほかならない。

 というのも、過去の同種事案では受領した側も起訴されて有罪となり、買収金を没収・追徴され、公民権も停止されているからだ。法は誰に対しても公平に適用されてこそ信頼を得る。渡した側だけでなく、もらった側の罪をもきちんと問わなければ、選挙違反を厳しく規制する意味がない。

 とはいえ、この議決は検察としても「織り込み済み」の話だ。検察が公職選挙法違反に問われた菅原一秀前経産相を「起訴猶予」にしたものの、検察審査会で「起訴相当」議決が下り、一転して略式起訴に及んだのも記憶に新しい。その際も検察審査会は、検察の姿勢を痛烈に批判したうえで、議員はクリーンであってほしいという国民の切なる願いにも十分配慮すべきだと指摘していた。

今後の捜査の焦点

 では、今後の捜査はどうなるか。すでに十分すぎるほど捜査を尽くし、有罪判決を得られるだけの証拠も収集しているので、再び議員らの取調べを行うといった程度で、むしろ彼らの刑事処分をどうすべきか、法務・検察において大所高所から行う検討が中心となるだろう。

 ここでは、他界した1人を除き、検察が議員らを不起訴にした理由が菅原氏と同じく「起訴猶予」だった点が重要となる。起訴するに足る証拠が乏しい「嫌疑不十分」ではなく、容疑は認められるものの受動的だったといった事情を考慮して不起訴にしたわけだ。検察ですら起訴すれば有罪になると考えている。

 そうすると、検察は再捜査後、(3)の「起訴相当」の議員らについて、罰金刑を求めて簡裁に略式起訴するのではないか。一方、(2)の「不起訴不当」の議員らについては、本来なら(3)と一括して起訴すべきではあるが、買収金プラスアルファを贖罪寄付するなど有利な情状の積み増しがあれば、再び「起訴猶予」にする可能性もある。

 (2)は再度の不起訴で刑事手続が終結する。これに対し、(3)は検察が不起訴にすると、再び検察審査会でその当否が審査されることになる。もし2度めの「起訴相当」議決が下れば、裁判所の指定する弁護士が検察官役となり、強制起訴に至る。

 しかし、この事件ではこうした展開は考えにくい。検察は自らに有利な証言を得るために議員らと「ヤミ」で司法取引をしたとも言われており、「起訴相当」の議員らまで不起訴にすれば、ますますそれが事実だったという印象を与えることになるからだ。政治銘柄の事件だけに、検察の手を離れてそのコントロールが及ばなくなることも避けたいはずだ。

没収・追徴が可能に

 河井元法相の有罪判決では、買収総額が約2870万円なのに、追徴額は一部議員らから河井元法相に返金された130万円分だけだった。それ以外はいまも受け取って使った議員らに不法な利益が帰属したままとなっている。これを剥奪するには、彼らを起訴し、有罪判決を得るしかない。

 重要なのは、再捜査の期限は原則として3ヶ月であるものの、買収事件は2019年3月から8月にかけて行われており、「3年間」という買収罪の時効が迫っているという点だ。3月下旬以降、順次時効を迎えてしまう。

 検察審査会が2度めの審査を行うための時間的な余裕をも残しておかなければならないことから、検察は1ヶ月程度で迅速に再捜査を遂げ、刑事処分を決する必要がある。(了)