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ハグを口実に女性の身体を触る外国人の「ハグおじさん」逮捕 その罪と罰は?

前田恒彦元特捜部主任検事
(提供:Mono_tadanoe/イメージマート)

 日本語が話せるのに理解できないふりをし、英語で道を尋ねて別れ際にハグを求め、応じた女性の腰や胸を触ったとされる外国人の男が京都で逮捕された。目撃した女子高生らから「ハグおじさん」と呼ばれていたという。

容疑は迷惑防止条例違反

 3ヶ月前の事件だが、警察は防犯カメラの映像などから男を特定した。昨年夏以降、京都や滋賀で同様の被害申告が複数あり、関連を捜査中だという。

 男の容疑は京都府の迷惑防止条例違反だ。路上のような公共の場所における「卑わいな行為」が禁止されている。

 盗撮と並んでその代表格と言えるのが、他人を著しく羞恥させ、不安や嫌悪を覚えさせるような方法で、みだりにその身体の一部に触ること、すなわち「痴漢」だ。

 着衣などの上からでもアウトなので、ハグを口実にして女性の腰や胸に触ることもこれに当たる。最高刑は懲役6ヶ月、罰金だと50万円以下だ。常習なら懲役1年以下、罰金100万円以下まで加重される。

強制わいせつ罪に問われることも

 ただ、路上での痴漢の場合、単なる迷惑行為ではなく、刑法の強制わいせつ罪に問われることもある。背後からひとり歩きの女性に近づき、胸や陰部を執拗に触って逃げるとか、無理やりキスをするといった事件がその典型だ。

 刑罰は懲役6ヶ月以上10年以下で、罰金刑がないから、条例違反よりも重い。今回も、男の動機や女性を触った態様などを踏まえ、強制わいせつ罪が成立しないか、改めて検討されることになる。

 ただ、この事件では女性がハグには応じているという特殊性がある。だからといって腰や胸を触られることまで同意しているわけではないが、検察が男に罰金を支払わせて前科を付けようと考えれば、このまま条例違反で略式起訴されるのではないか。

 今回はハグだったが、大阪では来日10年超で日本語がペラペラなのに片言の日本語で女子中学生らに道案内を頼み、ひと気のない公園や神社に誘い込んで性的暴行に及んだ別の外国人の男が強制性交等致傷罪で逮捕・起訴されている。

 この男は「英語交じりの片言で話すと親切にしてくれるので、困った外国人のふりをした」と供述しているという。親切心につけこむ外国人も現にいるので、注意を要する。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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