バーコードを貼り替えてセルフレジ決済 なぜ詐欺ではなく窃盗で逮捕された?
兵庫県のスーパーで焼き鳥などの値札のバーコードシールを別の安い商品のものと貼り替えるなどし、セルフレジで1036円の支払いを75円で済ませた男が逮捕された。詐欺罪ではなく、窃盗罪だった。なぜか――。
店員がいるレジなら?
この63歳の男は、これまでもこのスーパーで同様の貼り替えに及んでいたため、店側からマークされており、警察にも相談が行われていた。犯行日である2月9日も、来店に気づいた店の通報で警察官が駆けつけ、男の犯行を現認し、現行犯逮捕した。
この事件のポイントは、男が発覚を免れるため、あえてセルフレジを使っていた点だ。もし男が店員のいる通常のレジで会計を済ませていたら、バーコードを貼り替えた事実を隠して店員をだまし、正規の支払いを免れたことになるから、詐欺罪が成立する。
男のやり方が露骨すぎるので、さすがに店員も男の犯行を見破ったことだろうが、それでも詐欺未遂罪にはなる。
セルフレジだと?
これに対し、店員のいないセルフレジの場合、客が自ら機械を操作し、会計を行う仕組みだから、「人をだます」という要素がない。
刑法には、コンピュータシステムに虚偽の情報を与えて誤ったデータを作らせ、財産上の利益を得たといった従来型の詐欺罪では対応できないケースを処罰するため、電子計算機使用詐欺罪という犯罪がある。
卵1パックに半額シールを貼り替えてセルフレジを通過し、代金を半額にさせた83歳の女性がその罪名で逮捕された例もある。
窃盗罪を適用
しかし、セルフレジを悪用した事件の場合、実務では窃盗罪で逮捕、立件されるケースがほとんどだ。代金の支払いではなく、手に入れた商品そのものに着目し、店側が占有する商品を盗ったと評価するからだ。
しかも、一部の商品しかスキャンせずにセルフレジを通過する手口の併用も多い。現に男も、値引き後の総額の1割以下しか支払っていない模様であり、そのパターンではないかと思われる。
そうなると、支払ったふりをして全く支払いをせず、セルフレジを通過する万引き事件と同視できる。男も窃盗罪で逮捕されており、容疑を認めているところだ。
詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪だと懲役刑しかないので、事実に間違いがなければ正式起訴して懲役刑を求めるか、起訴猶予にするしか選択肢がない。
しかし、窃盗罪には罰金刑もあるから、こうした事案に対し、略式起訴して罰金を支払わせるといった処分も可能となる。
店側は見ている
新型コロナウイルスの感染防止策として、セルフレジを整備し、客に積極的な利用を呼びかけるスーパーもあらわれている。
今回の事案から分かることは、値札のバーコードを貼り替えるといった不審な行動をとる客のことを店側がきちんとチェックしており、警察とも連携をとっているという点だ。
今回のように、被害額が1000円程度の事件でも逮捕されることがある。
バレていないだろうと高をくくり、安易に商品のバーコードを貼り替え、値段をごまかすようなことは絶対にやめておくべきだ。(了)