GoToの獲得ポイントに税金はかかる?トリキの錬金術や無限くら寿司に課税は…
「トリキの錬金術」や「無限くら寿司」など何かと話題のGo To Eatキャンペーン。京都では食事券の発行が追いつかない状態だという。獲得したポイントなどは所得として確定申告し、納税を要するかーー。
「一時所得」になる
結論から言うと、オンライン予約サイトを通じて付与される1人あたり500円や1000円分のポイントはもちろん、食事券に対する25%分のプレミアムも、個人で獲得して利用した場合、「一時所得」として課税の対象になる。
通常の商取引における値引きではなく、国の政策に基づく支援額であり、臨時・偶発的に獲得した経済的利益にあたると評価されるからだ。
これが一時所得に関する国税庁の見解だ。キャンペーンを推進している農水省も、10月23日に「Q&A」を更新し、その旨の記載を追加した。
同様にGoToトラベルについても、同じく10月23日に観光庁が「Q&A」を更新し、個人の場合には旅行代金の50%分の支援額が一時所得として課税対象になると明記している。
所得の帰属は?
Go To Eatの場合、この一時所得は、オンライン予約サイトのポイントだと代表者として飲食店に予約を入れ、飲食後に人数分のポイントをまとめて獲得した会員にすべて帰属する。
また、食事券のプレミアム分だと、申し込み手続をして実際に購入した者に帰属する。
もっとも、経済的利益はポイントなどの獲得時ではなく、利用して消化した時に具体化するから、国税庁の見解を前提とすると、獲得分ではなく、実際の利用分が一時所得ということになるだろう。
ポイントや食事券の有効期限は最大でも来年3月31日までだが、今年12月31日までに利用した分は2020年の、来年1月1日から3月31日までに利用した分は2021年の一時所得として評価されるというわけだ。
50万円を超えるか否か
とはいえ、税額を算定する際には、ポイントなどを得るために支出した経費や、50万円分の特別控除額を差し引くことができる。
その年に得た懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金など一時所得に分類されるほかの収入と合算し、それぞれ支出した経費分を差し引き、さらに50万円の特別控除額を差し引いた数字が0円かマイナスであれば、課税される一時所得は存在しないから、その分の確定申告や納税は不要だ。
Go To Eatの場合、経費について問題となるのは飲食店での飲食代、特にオンライン予約サイトにおけるポイント利用だろう。
「無限ループ」も可能だが…
すなわち、当初、ディナーの予約・来店だけで1人あたり1000ポイントが付与されるシステムだったことから、「鳥貴族」チェーンに行ってそれに充たない少額で会計を済ませ、差額分を丸儲けする「トリキの錬金術」が横行し、問題視された。
その結果、今ではポイント分以上の飲食がポイント付与の条件になったが、獲得したポイントは次回の会計で丸々使えるし、それでも新たにポイントが付与される。
そうすると、ディナーで1000円分の飲食に現金払いをして1000ポイントを獲得し、次に1000円分の飲食に全額ポイント払いをして1000ポイントを獲得し、さらに1000円分の飲食に全額ポイント払いをして1000ポイントを獲得するといった「無限ループ」も可能となる。
「無添くら寿司」にちなんで「無限くら寿司」と呼ばれているのはそのためだ。
しかし、仮に10人グループで60回にわたってこのパターンを繰り返したとすると、総利用ポイントは59万円分(10×59×1000)になる一方で、実質的な経費は初回の飲食代である1万円分(10×1×1000)にとどまるから、経済的利益は58万円に上ることになる。
たとえ初回の現金払いが1人平均で1000円分以上でも、1000円分の会計で1000ポイントが付与されるシステムである以上、税務署が1人あたりの経費を1000円分までしか認めない可能性もある。
「トリキの錬金術」のように支払いが少額であれば、それだけ差額分も大きくなるというわけだ。
そうすると、50万円の特別控除額を差し引いても、課税すべき所得があるということなる。
申告しなかったらどうなる?
一社からしか給料を得ていない一般のサラリーマンの場合、給与所得や退職所得以外の課税所得が20万円以下であれば所得税の確定申告を要しないが、これを超えていたら確定申告を要するし、その範囲内にとどまっていても住民税の申告は必要だ。しかも、自営業者などにはこうした「20万円ルール」はない。
正当な理由がないのに確定申告を怠ったら最高刑が懲役1年の単純無申告罪で処罰されるし、故意に申告書を提出せずに納税を免れれば最高刑が懲役5年まで加重される。
もちろん、50万円の特別控除額を超過するほどGo To Eatキャンペーンを使い倒すというのは余程のことだから、通常の利用者であれば確定申告や納税など無縁の話だ。
それでも、度が過ぎていたり、ほかに一時所得にあたる多額の収入があった場合には、こうした納税の問題も生じるということを知っておくとよいだろう。(了)