休業要請を無視するパチンコ店などの非公表はむしろ違法 対策の「次の一手」は?

(写真:ロイター/アフロ)

 緊急事態宣言の下でなおも営業中のパチンコ店などについて、具体的な店名の公表が検討されている。大阪府はすでにその準備に入っており、近く公表を行うという。

今は「協力の要請」段階

 こうした報道を見聞きし、知事らが店名を公表するか否か、自由に決められると勘違いしている人も多いだろう。

 しかし、新型インフルエンザ等対策特別措置法は、「知事は…要請又は…指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない」と規定している。

 すなわち、正規の休業要請や指示を行った場合、店名などを公表するのは知事の義務であり、むしろ公表しなければ違法だ。

 では、なぜ現段階で店名などが明らかにされていないのか。これは、今のところ地域内のパチンコ店全体に対する「協力の要請」という一段弱い措置にとどまっているからだ。

 このやり方だと、いわば「業界」が相手であり、個々の店名を公表することはできない。

 ただ、緊急事態宣言後、協力に応じず、なおも営業を続ける一部のパチンコ店なども目立った。

 そこで、手続を一歩前に進め、そうした緩い手が通用しない個々のパチンコ店などを拾い上げ、一つ一つの店舗に対して店名の公表を要する正規の休業要請を出し、それでもダメなら指示まで出そうとしているわけだ。

罰則による強制力なし

 ところが、特措法には、こうした要請や指示に従わなかった場合の罰則規定がない。営業許可を取り消すといったペナルティを課すこともできない。

 むしろ特措法は、国や自治体による権力の濫用を防ぐため、わざわざ「国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は…必要最小限のものでなければならない」とまで規定しているほどだ。

 営業を続けるパチンコ店などには市民からクレームが入り、社会からも厳しく批判されるだろうが、現実には大小さまざまな店舗があるわけで、従業員や家族の生活がかかっているから簡単には休業できないと開き直られたらそれまでだ。

 そればかりか、営業中の店名やその所在地などが広く公表されれば、むしろそこにパチンコ客、特に依存者が集中する可能性も考えられる。

「次の一手」は?

 重要なのは、正規の休業要請や指示に従ったからといって、特措法には「アメとムチ」でいうアメ、すなわち金銭的な補償に関する規定がないという点だ。補償は別の制度によって手当てしなければならないし、国や自治体の予算に縛られるから上限もある。

 例えば、大阪府が4月27日から申請の受付を開始する休業要請支援金は、中小企業で100万円、個人事業主だと50万円だ。お隣の京都府だと、それぞれ20万円と10万円にとどまる。

 国民に対する外出自粛の要請ですらも、諸外国のような罰則による歯止めがない。たとえ聞く耳を持たないパチンコ店などに対して個々に休業要請や指示をしたとしても、もはや今の特措法ではそれ以上に打つ手がないから、手詰まりになってしまうかもしれない。

 感染拡大の第二波、第三波を防ぐため、政府が緊急事態宣言の期間を延長することも想定される。このまま自粛頼みで個々の自覚に委ね続けるべきなのか、それとも罰則を含めた強制的な措置がとれる新たな立法措置を迅速に行うべきなのか、国民的な議論が必要な時期に来ている。(了)

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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