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飲酒運転の呼気検査を拒否したら犯罪となり、逮捕されることもあるってご存じでしたか?

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

 飲酒運転の呼気検査に関し、兵庫県で次のような興味深い事件があった。

「兵庫県警尼崎北署は27日、道交法違反(呼気検査拒否)の疑いで、尼崎市の無職の男(59)を現行犯逮捕した」

「逮捕後、署員が『(アルコールの有無を)血を抜いて調べるか』と告げたところ、男は『(呼気検査を)やります』と応じ、基準値を超えるアルコールが検出されたという」

出典:神戸新聞

 飲酒運転が厳しく処罰されることなど周知の事実だ。

 では、検問などの機会に警察官が行っている呼気検査を拒否したら、犯罪が成立し、逮捕される場合もありうる、ということをご存じだっただろうか。

 根拠となる道路交通法の規定は、次のとおりだ。

「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」(第65条第1項)

「車両等に乗車し、又は乗車しようとしている者が第65条第1項の規定に違反して車両等を運転するおそれがあると認められるときは、警察官は…その者が身体に保有しているアルコールの程度について調査するため…その者の呼気の検査をすることができる」(第67条第3項)

「第67条第3項の規定による警察官の検査を拒み、又は妨げた者は、3月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」(118条の2)

 「呼気検査拒否罪」などと呼ばれるものだ。

 憲法38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と規定しているが、呼気検査は供述を得ようとするものではなく、この規定に違反しないというのが最高裁の判例だ。

 飲酒運転がバレるのを避けたいがため、あるいは単に警察のやり方が気に入らないということで、「呼気検査など任意なんだから、断固拒否する!」と警察官に強気に出るドライバーもいるかもしれない。

 しかし、そうした場合、実務では、呼気検査拒否罪で現行犯逮捕され、結局のところ今回の事件のように警察官の説得で呼気検査に応じ、あるいは令状に基づいて病院で血液を取られて鑑定され、改めて飲酒運転の事実で検挙されるだけだ。

 たとえ基準値未満のアルコールしか検出されなくても、逮捕されるだけ損だし、呼気検査拒否罪で起訴されることもありうるので、最初から素直に検査に応じておいた方が身のためだ。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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