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ノート(77) “完落ち”の瞬間と「二本のレール」

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~回顧編(2)

勾留27日目(続)

強制捜査に向けて

 登場人物のネームバリューや詐欺の道具として使われた楽曲の著名度からすると派手ではあったが、事件そのものはよくある不動産の二重譲渡と同じく、金目あてに音楽著作権を複数の人物に転売したにすぎず、実にシンプルなものだった。

 主犯と目された音楽プロデューサーを“完落ち”させれば勝負あった、ということになるので、その人物像を徹底的に知る努力をした。例えば、彼に関連する書籍や雑誌、ネット記事など手に入るものは読み尽くし、作詞や作曲、プロデュースした代表的な曲も全て聞いた。

 当時の特捜部でエース級だった複数の検事の応援を得て共同捜査態勢を組み、離婚時の慰謝料や子どもの養育費問題で彼と揉めていた歌手の前妻を含め、多数の関係者の取調べを水面下で進め、彼に関する情報を徹底的に集めた。

 併せて、財務状況や資金の流れ、音楽著作権などに関する客観的な資料の入手、解析も行った。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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