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女性芸人界の新星・ヨネダ2000がネクストブレーク候補として業界内で注目されている理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

昨年末のお笑い業界でにわかに脚光を浴びた女性コンビがいた。小柄の清水亜真音と大柄の愛の2人から成るヨネダ2000である。見た目はほのぼのした雰囲気を漂わせているが、その鋭い笑いのセンスはあなどれないものがある。

彼女たちは、昨年12月に『女芸人No.1決定戦 THE W』で決勝進出を果たした。また、同じ時期に漫才日本一を決める『M-1グランプリ』でも、決勝の一歩手前の準決勝まで勝ち進んでいた。2つの大会で上位に食い込んだことでお笑いファンに強烈な印象を残した。

ファイナリスト発表記者会見の司会をするために『M-1』の準決勝を観戦していた麒麟の川島明は、あまりの面白さからヨネダ2000が決勝進出するに違いないと思っていたという。

彼女たちにとって初めてのテレビ出演となる『THE W』の決勝で見せたのは、清水が友達の力士に謝りに行くという珍妙な設定の漫才だった。ストイックな力士を演じる愛は、清水の話に耳を傾けることなく「どすこい、どすこい」とひたすら練習を続ける。そんな中で清水は複数の役柄を演じながら話を展開させていく。

愛が一定のリズムで突っ張りの動きと「どすこい、どすこい」の掛け声を続けるのがベース音のような役割を果たし、その上で主旋律としてのネタが奏でられる。芸歴4年目とは思えないほど発想力と構成力に秀でた見事な漫才だった。

彼女たちはお笑いコンビとしては珍しい「再結成組」である。もともと2人は芸人養成所で出会って「ギンヤンマ」というコンビを結成していた。その後、男性芸人を加えてトリオとして活動していた。だが、そのトリオが解散することになり、一度は2人も離れ離れになった。その後、意気投合して再びコンビを結成することになり、コンビ名も「ヨネダ2000」に改めた。

清水が主にネタ作りを担当しており、相方に「こんなネタはどうかな」とアイデアを伝えて、反応が良かったらそのネタを仕上げていく。ネタ作りでは清水が主役だが、舞台に臨むときには愛の方が物怖じせずに堂々としている。一方の清水は緊張しやすいタイプで、その点では愛に頼っている。お互いがお互いの弱点を補い合っている理想的な関係だ。

今年の年末には『M-1』の決勝の晴れ舞台で彼女たちの勇姿が見られるかもしれない。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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