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3時のヒロイン・福田麻貴が「知性派イジられ女性芸人」として重宝される理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

4月4日、フジテレビの昼の帯番組『ポップUP!』が始まった。坂上忍が長年MCを務めてきた『バイキングMORE』の後番組ということで、業界内の注目度は高かったのだが、現時点では視聴率は低迷している。

そんな『ポップUP!』で火曜日のコメンテーターの1人に名を連ねているのが、3時のヒロインの福田麻貴である。福田は過去に『グッとラック!』や『めざまし8』でもコメンテーターを務めたことがあり、その経験を買われたのだろう。

情報番組のコメンテーターには豊富な知識と世間の空気を読む絶妙なバランス感覚が求められるため、キャリアのある芸人でもその役割を苦手にしている人も多い。そんな中で、福田がテレビに出始めてほんの数年でコメンテーターを任されているのは異例のことだ。

『THE W』優勝で脚光を浴びる

福田、かなで、ゆめっちの3人から成る女性トリオ「3時のヒロイン」は、2019年に『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝して大ブレークを果たした。2020年の上半期には最も出演番組本数(増加数)の多かったブレーク新人タレントとなった。

福田はネタ作りとツッコミを担当しており、トリオの司令塔と言える存在だ。彼女は吉本興業のお笑いアイドルユニット「つぼみ(現・つぼみ大革命)」の一員として芸能活動をスタートさせて、その後に芸人へと転身した。異業種から芸人になる人はよくいるが、アイドルからというのは珍しい。

何度かのコンビ解散を経て、2017年に福田が後輩の2人を誘って3時のヒロインを結成した。見た目が派手でキャラが立っているかなでとゆめっちの素材を生かした巧みなネタ作りによって、『THE W』で栄冠をつかんだ。

番組によってキャラクターを使い分ける

ポップな外見の女性トリオとしてCM、テレビなどに出演する一方、福田は個人としても精力的に活動している。テレビでは前述の情報番組だけでなく、コント番組、トーク番組、ドラマなど、幅広いジャンルの番組に呼ばれている。

コントではボケ役、ツッコミ役、脇役のどれでもこなせるし、トーク番組ではイジり役もイジられ役もできる。演技力もあるので役者として『危険なビーナス』にも出演した。

テレビの世界では、1つの突出したキャラクターを持っている芸人の方が目立ちやすい傾向にあるが、福田はマルチな才能を持っていて、番組や企画によって器用にその顔を使い分けている。

関西大学卒業で頭の回転が速く、インテリキャラに見られることもあるが、実家が雀荘を経営しているという彼女は「私は雀荘の娘ですから」などと言って、親しみやすさを出している。

「容姿ネタ」封印宣言でも話題に

2021年にはツイッターで「この数週間で容姿ネタに関してじっくり考える機会が何度かあって、私達は容姿に言及するネタを捨てることにしました!」と書いたことも話題になった。その頃、ちょうど世間では「容姿イジリは笑えない」といった意見が強くなっていて、芸人が容姿に関するネタをやることの是非が話題になっていた。そんな中で、福田がはっきりと容姿ネタとの決別を宣言したことで、本人の想像を超えた大反響を起こした。

福田という芸人の強みは、何でもこなせる器用さと賢さである。頭脳派の芸人でありながら、イジられる隙も持ち合わせているので、嫌味が全くない。テレビ朝日の『トゲアリトゲナシトゲトゲ』では、Aマッソの加納とラランドのサーヤに挟まれて、イジられ役として輝いている。

マルチな才能を持つ福田は、アイドルから転身したという特殊な経歴を生かして、今後も活躍の幅を広げて、新しい時代の女性芸人の象徴のような存在になっていくだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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